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アンドロイド転生1051

現在 2120年8月18日 スズキ邸にて 
エリカが復活して4日目

(エリカの視点)

「エリちゃん!笑って!」
エリカの周りを小型ドローンが回っている。搭載のカメラが彼女を撮影しているのだ。ランは止めると画像を確認して満足げに頷いた。

“我が家に天使がやって来ました!“
早速エリカについて記事をアップした。ランは人気ブロガーなのだ。直ぐにお祝いのコメントが続々と寄せられた。ランは大喜びだ。

イヴがエリカに通信してきた。
『ご機嫌いかがですか』
『元気!』
何だかいつも楽しい。手足がバタバタと動いた。

『それは良かったです。エリカ。村長はあなたにチャンスを与えたかった。理解しましたか?』
エリカは神妙な顔をする。
『うん…理解した』

赤ん坊に生まれ変わった当初は不自由な状態に不満だった。何がチャンスだと不服でしかなかった。だが今は違う。私は人に愛されて人を愛することが出来るのだ。2周目の生が嬉しかった。

イヴは真面目な顔をする。
『エリカにお尋ねします。リョウが俺達を恨んでいるか?と言っています』
エリカは考えた。

機能停止になる寸前までの事を思い出す。彼らは責めた。何を言っても許してくれなかった。自分の生死を握っている事をまざまざと理解して悔しかった。憎かった。だが…。今は…。

『う〜んと…。恨んでない』
エリカにアオイへの嫉妬やリョウやキリに対する憎しみは消えていた。今は全てが楽しくて嬉しいのだ。そう。幸せだ。

『そうですか。リョウは喜びますね』
『私は…酷いこと…したね?イヴ?』
『そうですね。横暴でしたね』
『うん…。ごめんなさいとリョウに伝えて』

イヴは微笑んだ。
『自分の悪い行いを認めて反省し謝罪すること。それは当然のことですが、なかなか難しいものです。ですがあなたはそれが出来ました』

『褒めてくれる…?』
『勿論です』
エリカの顔がパッと明るくなる。赤子の彼女は更に愛らしさが増した。

・・・

同時刻 フランス 某ホテルにて

(リョウの視点)

リョウはイヴの言葉にホッとする。エリカはチャンスを理解したそうだ。だがまだ懸念材料があった。彼女を機能停止してしまった事だ。
「イヴ…エリカは…俺達を恨んでいるか…?」

『恨んでいないどころか自分の行いを反省しています。あなたに謝罪しておりました』
リョウは目を丸くする。
『ええ?あのエリカが…?』

リョウは眉間に皺を寄せた。
『信じられない…。たった4日で…そんなに早く心を入れ替えられるものか…?」
『ベビーマニュアルの影響が大きいのです』

リョウは驚いた。
「ホントに?そんなに?」
『はい。嬉しいや幸せなどのプログラムが働いたのです。負の意識を凌駕するほどに』

リョウは黙り込んだ。本当にそれで良かったのか。まるでエリカをコントロールしたようだ。本人は転生など望んでいたわけでもないのに…しかもベビーだなんて…俺の自己満足ではなかったか?

イヴはリョウの胸の内を汲み取った。
『あなたは正しかったのです。彼女は人を愛し愛されて心の平穏を得ました』
「そうか…うん…そうか」

イヴはニッコリとする。
『さぁ。明日の最終日を楽しんで下さい。新婚旅行中なのですから』
リョウはミアと顔を見合わせて笑った。

そして2日後。フランスを満喫して彼らは飛行機に乗った。リョウは心置きなくこれからの人生を楽しめるのだと嬉しくて堪らなかった。そしてエリカの幸せを心から願っていた。


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