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アンドロイド転生6

主人と言う相手の言葉に呆然となるアオイ。
「R2-320i!私は喉が渇いているの!」
キサラギはキツい口調で命令する。アオイはオロオロとなる。怖い。どうしよう。

すると内なる声が従えと囁いた。そうだ。彼女は喉が渇いてる。お水?お茶?コーヒー?
「な…何をお飲みになりたいですか?」
「冷たいお水が欲しい」

アオイはキッチンに行くとダイニングボードの中のグラスをひとつ取りシンクへ行き水を注いだ。冷蔵庫の製氷室で氷を見つけると3つ落とした。トレイに乗せてソファにいるキサラギに運んだ。

「どうぞ…」
「はい。良く出来ました」
褒められて喜びを覚える。この気持ちは何?だが直ぐに不安感が心を大きく支配した。

とうとう我慢が出来なくなった。
「一体どういう事ですか?教えて下さい」
お願い。説明して。アオイは必死だった。キサラギはアオイをじっと見た。

「R2-320i、そっちこそ一体どうしちゃったの?あなたはアンドロイドでしょ。分かってる筈よ。年齢容姿は18歳標準型。女性タイプ。これから色々学んでいって、より完全になるの」

アオイは呆気に取られ30秒…。正確には29.369秒目を剥いて口を開いたままだった。キサラギはアオイを見つめ、分かったでしょ?だから何?と言わんばかりの顔をしている。

アオイは反射的に腕を見た。毛穴から産毛が生えている。掌に頬を当てた。この触り心地は…しっとりとして弾力がある。人間そのものだ。
「アンドロイド?私が?」

キサラギは苦笑する。
「ええ。そうよ。まさか人間だとでも思った?」
直ぐに眉間に皺を寄せた。
「でも、おかしいなぁ。こんな反応するなんて」

アオイは益々不安になった。どうにかして誤解を解きたかった。
「私、私はニカイドウアオイと言って…もうすぐ結婚する…いや、死んだけれど…」

キサラギは片方の眉を上げた。
「は?」
「でも…神様が…戻りたいかって言って…」
「神様?何言ってるの?」

言えば言うほど信憑性がなくなってくる。だが兎に角自分の身に起きた事を分かって欲しかった。アンドロイドだなんて突拍子もない事態から逃げたかった。怖くて不安で堪らなかった。

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