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アンドロイド転生577

東京都新宿区:平家カフェ

営業が終了した。最後の客を全員で見送った。少年達は清々しい顔をして笑い合った。満足感でいっぱいだった。これがカフェなのか。なんて楽しいのだろう。やっぱり都会ってスゴイ!

間もなくして彼らの前にパフェが置かれた。初めて見る物だ。カラフルな色合いとフルーツとクリームがたっぷりで美味しそうだ。代表してルイが一口食べた。目を見開いて何度も頷く。

カナタとヤマトも口にして歓喜する。
「スゴイ!美味しいです!ビックリ!」
店主のキヨシは目を細めた。
「パフェの語源はパーフェクトだ」

ホントだ。完璧だ。こんな旨い物が世の中にあるのかとルイは感心する。やっぱり俺は知らない事ばかりなんだ…。俺もタウンで生まれていたら何でも当たり前のようにしていたのかな。

リツは賄い飯を食べながら大声を上げた。
「あ!ヤバい!もう9時半だぞ!タカオさんに連絡をするのを忘れてた!」
タカオとはルイの父親の事だ。

キヨシも食事をしながら微笑んだ。
「ああ。大丈夫だ。坊主達はうちに泊まる。タカオには俺から連絡をしておいた。明日は店を休みにして俺がホームに送る」

一同は驚いてキヨシに注目をした。ルイ達は顔を見合わせた。え?ここに泊まる?本当に?
「と、父ちゃ…父さんは怒ってましたか?」
「ああ!凄〜くな!」

少年達は気まずい顔になる。キヨシは笑った。
「嘘だ。怒ってないよ。明日は昼前に出発しような。今晩はこれから皆んなで風呂に行こう」
ルイはホッとすると同時にワクワクしてきた。

ルイはキヨシを見つめた。この人は優しくて理解があって良い人だ。俺らの味方だ。子供らしい本能だった。ルイはカナタとヤマトを見る。2人の顔にも同じような表情が浮かんでいた。

30分後。一同はスパにいた。広いバスタブ。白濁の湯船に浸かり、良い気分の少年達。
「タウンってやっぱり…凄ぇなぁ…」
ルイはつくづく実感する。

カナタは高い天井を見上げて笑った。
「帰りたくねぇよ。マジで楽しい」
綺麗なニナに会ったこと。壮大な祭り。巨大な鯨。カフェ。手伝い。パフェ。風呂。

ヤマトもボーっと天井を眺めていた。
「俺も。あ〜あ。なんでホームってタウンと仲が悪いんだろ。こんなに便利で何でもあって凄いんだから仲良くすれば良いのに」

ルイはモネの顔を思い浮かべた。胸がキュッと掴まれたような苦しみを覚える。ああ。今すぐにでも会いたい。モネの笑顔を見たい。手を繋いで歩きたい。抱き締めたい…。

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