見出し画像

アンドロイド転生731

白水村:リペア室

エリカは寝台にいた。頭部と胴体を切り離されて非常に心許ない状態だ。そこに人間達からの機能停止(死)の宣告。あまりの事に驚いた。恐怖を覚えて親友のアリスを呼んだ。

エリカの瞳からポロポロと涙が落ちた。
「死にたくない。嫌だ…。怖い」
アリスの顔が引き攣った。
「キリ…人間だから…裁きを下すの?」

「そうだね。やっぱり人間にはアンドロイドを造った責任があるからね。マシンが暴走したら停止させるものでしょう?」
「エリカが…何の暴走をしたの…?」

「脅迫、密告、誹謗中傷。それから盗撮」
アリスは目を丸くする。首を横に振った。
「…エリカは…そんな事をしない。絶対しない」
「本人に聞いてみれば?」

アリスはエリカに顔を向けた。
「したの?そんな事…ホントにしたの?」
エリカは視線を逸らす。疚しそうな顔をしている。無言が全てを物語っていた。

アリスはキリに顔を戻した。
「でも…でも殺さないで。エリカは親友なの。妹なの。失いたくない。私が言うから。反省させるから。お願い…お願いします」

またリペア室の扉が開いた。ルークとミオだった。やがてケイとチアキもやって来た。エリカが通信で呼んだのだ。自意識がないと馬鹿にしているサツキとエイトには助けを求めない。

アンドロイド達の顔は不安げだった。エリカは涙を零し、怒りを露わにした。
「キリ達が私を機能停止しようとしている!人間だからって横暴だよ!皆んな助けて!」

キリは深々と溜息をついた。
「そうやって皆んなを巻き込む。あんたはいつになったら大人になるの?」
「大人になった!議論の纏め役をした!」

キリの顔が怒りを帯びた。
「そうだよ。エリカはちゃんと務めを果たした。私は嬉しかった。それなのに殺人に等しい事をした。正直に皆んなに打ち明けな…!」

ケイが一歩前に出た。
「キリ。お願いだ。許してくれ。殺さないでくれ。エリカの未来を潰さないでくれ」
「エリカはタケルの恋人の未来を潰したよ」

アンドロイド達はタケルに恋人がいた事に驚いた。だがタケルとエマはたった8日間の付き合いだった。これから時を重ねて行く筈だった。それをエリカが引き裂いたのだ。

リョウも一歩前に出た。
「そうだ…俺が協力したんだ。馬鹿な事をしたよ。その恋人の…醜態を…ネットで暴露したんだ。日本に居られなくなって出て行ったんだ…」

ケイは眉間に皺を寄せた。
「リョウはなんで協力したんだ?」
「エリカが俺を脅したんだよ!コイツは人の弱みを握って思うように動かすんだ!最低だ!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?