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アンドロイド転生968

2119年4月5日
上野:つばさ幼稚園

入園式の後のクラスの案内及び自己紹介が済んで今日は終わった。子供らは元気にナニーアンドロイドや親達と共に帰っていく。チアキは園長らと手を振って見送った。大成功だった。

ユウサク園長は満足げに微笑んだ。
「皆んな有り難う。明日から宜しく頼む。楽しくて笑顔が一杯の幼稚園を作っていこう」
一同も笑顔で頷いた。

チアキは中庭のうさぎ小屋へ行く。広くて清潔で冷暖房完備で快適だ。チアキはユウサクの息子のサクヤと共にうさぎの世話をしている。20羽のうさぎはどれも毛艶が良くて健康だ。

チアキは小屋からガーデンにうさぎを放した。芝生を元気に駆けていく。その間に小屋の掃除と給餌の準備をする。サクヤが走って来た。
「ただいま!入園式はどうだった?」

チアキはニッコリとする。
「お帰りなさい。大成功ですよ。クラスに案内して子供達に自己紹介をしてもらいました。うさぎが好きって子が何人もいました」

サクヤは瞳をキラキラとさせた。彼のうさぎ達に対する愛情は格別で生体管理も完璧だ。チアキにとってサクヤは先輩なのだ。
「先輩に会いたいって言ってましたよ」

「やったあ!」
10歳のサクヤは1人っ子。これから沢山の弟妹が出来る気分なのだ。嬉しくて堪らないらしい。
「よし!やるぞ!」

サクヤはうさぎを見渡すと目を泳がせた。グレーの1羽を見つけてそっと抱き上げる。お腹が大きい。妊娠しているのだ。
「ハナ。元気か?お腹は大丈夫か?」

ハナはモゾモゾと動いた。サクヤは目を瞑ってハナの腹を優しく触ると頷いた。
「うん。今晩…産まれそうだな」
サクヤは何度も出産の経験をしている。

チアキは微笑んだ。サクヤの気持ちの優しいところ、頼もしいところが好きだった。彼は都会よりも田舎が好きらしく、ホームに行きたいといつも言う。いつか連れて行くと約束していた。

その後2人は阿吽の呼吸で作業を始めた。小屋の中を更に快適になるように試行錯誤する。餌も栄養価が高くうさぎ達の嗜好に合うようにアレンジをした。穏やかに時が流れて行く。

夜になりハナが出産した。3羽の元気な子供を取り上げた。サクヤはまるで獣医のように自信満々で取り組みハナの手助けをしたのだ。
「ハナ!偉いぞ。お疲れ様」

チアキも一緒に子供を拭いて母親の腹に誘導した。乳を吸い始めると笑顔で顔を見合わせた。その後の片付けも、もう何度も経験済みだ。スムーズに事が運ぶ。やはり阿吽の呼吸なのだ。

真剣に作業するサクヤをチアキは目を細めて労った。深夜で眠いだろうに彼は責任を全うしている。子供であろうとも彼はうさぎ係のリーダーである。チアキはいつも尊重していた。

ナニーアンドロイドがやって来た。
「サクヤ様。もう11時です。お休みにならないといけません」
「僕はうさぎ係だから最後までちゃんとやる」

サクヤの父親もやって来た。
「うん。いいぞ。それでこそ先輩だ」
チアキはこんな親子関係が素晴らしいと思う。信頼があれば壊れる事はない。


※チアキとサクヤとうさぎのシーンです


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