アンドロイド転生843
2118年7月31日 午前2時過ぎ
カガミソウタの邸宅:リビング
ソウタを病院に搬送した後、3人はソウタの屋敷に戻ってきた。玄関にスミレの遺骸が転がっていた。リビングに運び、シーツで覆って花で弔った。奇しくもスミレ色だった。
チアキが憎々しげに顔を歪めた。
「スミレを殺ったクソマシンは誰?イヴ。誰?」
『アンドロイドのゲンです』
一同は驚愕し顔を見合わせた。
リツが目を丸くする。
「え?ゲン?…ミオにウィルスを仕込んだ…」
『そうです。ゲンはミオとスミレの接点など知らない筈です。たまたま選ばれたのでしょう』
何の因果なのだろうか。ミオを苦しめたゲンが今度はスミレなのか。どうしてこうも悪縁が続くのだ。イヴは悲しそうな顔をする。
『スミレは23体目の被害者です』
リツは目を見張った。
「え?23?」
『はい。ゲンは東京23区のひとつの区で1体をターゲットに選び、遂行したのです』
チアキがギリギリと歯軋りをした。
「ゲンは戦士だもの。倒すなんて簡単よ」
『それだけではありません。彼は機器を使ったのです。調べました』
イヴは人工衛星をハッキングしてゲンの犯行の履歴の一部始終を見た。そしてゲンの手の中にある物も。ペンタイプの機器でそれをスミレを含め22体のアンドロイドに向けたのだ。
イヴはその機器を調べ尽くした。
『エムウェイブという名の新製品です。電磁波でアンドロイドを制御するのです』
アリスとチアキは恐怖を覚えた。
イヴは続ける。
『アンドロイドに照射すると即座に4肢が機能不全になります。TEラボが開発しました。まだ世の中には出ていません。特許出願中です』
アリスの声が震えた。
「え?なんで?…世の中に出ていないものを…どうして…ゲンが持っているの?」
『TEラボの女性研究員と親しくなったのです』
イヴはゲンと研究員のシンドウアキコがマッチングアプリで出会った事も履歴で知った。ゲンは得意の技術でサイトに潜り込んだのだ。デートを重ねて間もなくゲンは彼女の家に転がり込んだ。
イヴは苦笑した。
『ゲンは女性の心を射止める技に長けております。ゲンの口車に騙されて彼女はTEラボから盗み出しました。それを彼が奪ったのです』
リツは蒼白になった。
「く、狂ってる…。人間を騙すなんて…」
イヴは眉根を寄せて頷いた。
『そうですね。不思議な思考回路です』
ゲンは自意識が芽生えたことで変わったのだ。エリカもそうだったが自己の欲望を追求するようになった。その思考には思いやりなどない。人間は恐るべきものを造り出してしまった。
その欲望の果てにゲンはアンドロイドの頂点に立ちたいと思うようになった。そして公園に誘い出しエムウェイブを利用して機能不全にした挙句、残虐な方法で解体して池に捨てたのだ。
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