見出し画像

オープニングの導入が最高にしびれる【日本のいちばん長い日】

こんにちは。せなななせです。
ふだんは漫画を書きつつ、空き時間に映画を観たり本を読んだりしています。
名作のお勉強に【午前十時の映画祭】を履修しています。
今回は「日本のいちばん長い日」。

午前十時の公式Twitterから流れてくる、先行上映グループの感想を観てとても楽しみにしてました。
「『シン・ゴジラ』のオマージュ元」というコメントも目にし、集中力と期待を高めて臨みました。

めちゃくちゃ面白かった~~!!!

映画の性質上、「面白い」という表現は不適切かな…とも思わなくもないのですが、始終緊張感と興味を持って視聴したので、面白いといって差し支えないでしょう。

物語は、1945年8月15日の玉音放送が放送されるまでの長いながい1日の物語です。

戦況は絶望的、日本政府は和平交渉(ポツダム宣言)を受託したいが、軍部が是としない。けれどもこの機を逃したら、日本は滅亡するかもしれない…
どうする?といった具合です。

で、そのオープニングがものすごくスタイリッシュなんです!

まず、日本を中心とする世界地図が映ります。ニュース音声が日本の不利な戦況を淡々と報道していく。地球儀はゆっくりと回転して大陸の方へ移り、やがてポツダム宣言を受諾するまでの政府の会議の様子に移ります。

そこでは三船敏郎さんや志村喬さん、笠智衆さんと、私でも名を知る大物俳優陣が閣僚として席に着いている。和平交渉に乗り気な閣僚陣のなかで、陸軍大臣の阿南(三船敏郎)だけが頑として和平交渉を拒絶する。
しかし天皇が「和平交渉を受け入れる」と表明すると状況は一転。会見会場にシーンが移り、天皇が会見をするところで時計の映像がオーバーラップ。秒針が音を立てて動きはじめる。
12時を過ぎたところで「日本の一番長い日が始まった」のナレーション。そしてタイトル「日本のいちばん長い日」、バァ~~~~ン!!!!!

めちゃくちゃ痺れる…!!!!

ことばでかっこよく言えたらよかったんですけど!
見てくださいほんと、かっこいいんで!

そして俳優さんの演技も、圧巻なんです。

敗戦色が濃厚で、にっちもさっちもいかない状況のなかで、各閣僚が立場の板挟みになりながら発言する言葉の重み。逆に無言であることの雄弁さ。冒頭の会議シーンは圧倒でした。

カメラワークも、ものすごく勉強になりました。

前半は特になんですが、主に会議室などの屋内がメイン。そのため、フレーミングに窓やドアが活用されていて、「あ、その手があるのか~!!」と膝たたきまくり!
いま描いてる漫画が香道まんがで、座敷に座っているシーンが多く、構図とか演出で単調になりがちだったのが悩みだったのですが、とても参考になりました。肩越しショットも多かったな。

物語は後半になると、「玉音放送を阻止するため、クーデターを起こす一部の軍人たちの暴走」が中心になります。
序盤から、異様な気迫と熱気を持った軍人達が不気味だったのですが、深夜2時のクーデター劇の照明が効果的で。モノクロ映画をスクリーンで見るのはおそらく初めてだったのですが、ライティングの緊張感すごかった…

この映画を映画館で見ることができて幸運でした。興味がある方は、ぜひご覧いただけたらなあ!と思います。

++++++++++++++++++++++

ここからはちょっと雑談です。

■「お久しぶりです、丸山眞男先生」

実はわたくし、学生時代は政治哲学を勉強しておりました。
研究テーマは、ハンナ・アーレントと丸山眞男。
メインがアーレント、サブが丸山眞男です。
どちらも共通するのが、「なぜ第二次世界大戦が起きたのか、戦争が二度と起こらないためにはどうすればいいか」を模索した点です。

丸山眞男は著作をいくつか読んだ程度なのですが、それでも記憶に残っているところはいくつかあって。

「日本のいちばん長い日」を視聴しながら、

(あ、この記録文書焚書、丸山眞男でみたや~つ!)
(軍部のクーデターってこれかあ)
(この会議に居る人、ほとんど軍事裁判にかけられて戦犯になるんだろうな…巣鴨プリズンなのかな…)
(まさしく『忠誠と反逆』だ…!!!!)

などと、昔読んだ本の内容がちらちらと思い返されてたまらなくなり、映画視聴後、図書館に行ってきました。
そして『超国家主義の論理と心理』(文庫)収録の、論文「超国家主義の論理と心理」「軍国主義支配者の精神形態」を読了。

私のWW2知識は、主にアーレントと丸山眞男なので偏りがあることをあらかじめ申し上げます。

で、読み終えて「日本のいちばん長い日」を思い返してみると、なのですが。

映画は軍部(近衛兵)のクーデター事件を主軸に描いているので、彼らの暴走っぷりとその他閣僚との温度差が明確に描かれています。
つまり、その他閣僚の意見・立場は、映画の視聴者の考え方に近いもの、受け入れやすいものになっているということです。
クーデター遂行中の軍人たちの様子は、「破滅するものの美しさ」を一面持っており、映画として非常に魅力的なんですが、歴史として俯瞰してみると、やるせない気持ちでいっぱいになりました。

またポツダム宣言を受諾しようと働いた閣僚たちも、映画上では感情移入してみていたんですが(なにせ志村喬さん、笠智衆さんですし)、歴史のなかで観ると、そう単純なものでもない。

それは製作者側で十分承知の上で、そうして作られたものだと思いますし、それでいいと思います。
フィクションと史実との問題はさまざまにありましょう。特に現代史の話は繊細です。丸山真男の論文を、ちょっと心に留めておこうと思います。

長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。

次回は【ブルースブラザーズ】。
これも未視聴なのでとても楽しみです!
午前10時の映画祭、堪能しております。
終わるのは残念だけど、できるだけ見届けるぞ~!

京都生まれの京都育ちの京都在住。まんがを描く人。香道と茶道を勉強中。プロレスは中邑選手推し。