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#3 オーシャンカレント

ウイスキーを炭酸水で割ったあと、間違えてシークワーサージュースを入れてしまった。奇跡的に美味しい!なんてことは、残念ながらなかった。

今日こそは、海流のなぞを解かなければならない。

昨日は、海流がマッピングされた地球儀を見て、潮について思いをはせて終わったはずである。

そんな地球儀を今日も見つめる。

小さいころから地球儀は好きだった。地図も好きだが、地図とは異なる視点を与えてくれる地球儀は、幼心を特別な存在感で埋めていた。回しては止め、回しては止めを繰返し、落としそうになりながら、おもちゃのように遊んでいた。

今では椅子に腰かけながら右手の指をちょろっと動かすだけで、拡大したり裏側を覗きにいけるのだから、随分とズルをしている気分になる。しかも、動き付きだ。

まずは、日本周辺を拡大してみる。

海流は台湾のほうから北上して九州・本州の東側を沿うように流れる。そのまま北海道・ロシアと、大陸を沿って流れるかと思いきや、東北のあたりから大陸との距離がどんどん広がり右側にそれている。

「海流は何が影響しているのか」

教授が私たち生徒に尋ねる。

小さな潮目が風の影響を受けてできたように、きっと、大きな潮目も風に影響を受けているのではないか。

豪快なほどシンプルな仮説を立て、本文を読み進める。

「角運動量の保存(the conservation of angular momentum)」と「コリオリ力(The Coriolis force)」が理由、とのこと。

途端に難しそうな用語がやってきた。万年文系の僕は、読むスピードを下げる。詳しい原理までは説明されていないので、検索スキルを駆使して理解した結果を書き連ねてみる。

「角運動量の保存」とは

回転軸から遠いほど早い速度で回転し、近いほどゆっくり回転するという現象を説明するための原理だ。回転軸から離れれば、円周は大きくなり運動量はその大きな円を動くのに使われるため、代わりに速度は遅くなる。回転軸に近づくときはその逆だ。

「コリオリ力」が働いた結果は、

事例を用いて説明する。回転がかかっている円盤の上にボールをまっすぐ転がす。すると、この場合は回転がかかっている方向とは逆向きの、ゆがんだ曲線を描いて転がる。

これは、「まっすぐ転がろう」という力(=コリオリ力)が継続的に作用するため、円盤が回転によってずれてしまった分取り戻そうとして、逆に見た目上、回転と逆方向に曲がってしまったということらしい。

これらの力を地球に当てはめるとどうなるか

地球儀を最初に見た時気づかなかったが、確かに赤道近くを流れる海流は高緯度の海流より流れが速い。つまり、角運動量が保存されているから。

そして、地球の自転が左向きな北半球では、移動する海流に対して右向きのコリオリ力が働くため、地球儀でみた黒潮のように、海流が右に歪曲した流れになる。しかも、赤道付近ではコリオリ力がゼロなので、海流は大陸にぶつかるまでまっすぐを保ったままとなる。

ふう。

脳が一汗かいたようだ。

仮説は外れたが、よく眠れそうである。とはいえ、風の影響も受けないわけではなさそう。ここはもう少し勉強する必要がある。

そういえば、コーヒーカップに乗った際、カップの中心に向かって前のめりになって回していたが、気持ちが悪くなってカップの淵に体をくっつけてだらけていると、自然と回転が弱くなった感じがしていた。

コリオリ力。生活のどこにでも潜んでいるかもしれない。

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