38年間で「他人の話をききなさい」が、やっとアップデートされた。
「聞く」と「聴く」
「他人の話をきく」ということの難しさに日々直面しています。38歳です。「きく」ってなんなんだろうか?なんとも難しい行為だなと。分かっている気がしたけれど、38年かかっても全く使い分けて実行できないので、そもそも「聞く」と「聴く」の違いについてから、考えてみたいと思いました。親が言っていた「ちゃんと人の話をききなさい」の「きく」は「聞く」だったのか「聴く」だったのか?それすら自分の言葉で説明できていないのだから、そんなん分かりっこないしできっこないよなあ。とかなんとか言っていると、いつも通りいつまでも着地できない文章になってしまうので、早速「聞く」と「聴く」のそれぞれの意味について調べてみることにしてみました。
聞く
「聞く」は、音や声を耳に感じ認める意。「聞く」という言葉に含まれる「聞」という漢字は、「門」と「耳」が組み合わさった会意兼形声文字です。「両開きの扉」の象形と、「耳」の象形が組み合わさっていて、「音が自然と耳に入ってくる」ことを意味します。『類語国語辞典』(角川書店)
聴く
「聴く」は、聞こえるものの内容を理解しようと思って進んできく意である。「聴く」という言葉に含まれる「聴」という漢字は、「耳」の象形と「階段」の象形、「まっすぐな心」を示す象形が組み合わさった会意兼形成文字です。「階段」の象形は「突き出る」という意味を指すことから、「耳を突き出して、まっすぐな心でよくきく」ことを意味します。『類語国語辞典』(角川書店)
つまり「聴く」とは、音や、音が持つ意味を認識しようと注意して耳を傾けることを意味します。となるといよいよ、「他人の話をちゃんとききなさい!」は「他人の話をちゃんと聴きなさい!」であることが理解できてきます。目の前で会話している、対話している相手の話が「自然と耳に入ってくる」ではおかしいですもんね。対峙している相手が発してくれている声や表情など全ての音から、聞こえる内容を、相手の言葉を理解しようと思って進んできくのであります。改めて僕は人の話を聴くことができていなかったなあと。
まずは聞く耳を持つ
しかも結果として聴くことができていなかったのではなくて、そもそも聴く姿勢がなっていなかったのだなと。聞く耳を持たないとはよく言ったものです。あれ?こっちのきくは聞くなんだな。
聞く耳を持たない
意見を聞き入れたり耳を傾けて参考にしたりといった姿勢を持たないさま、聞く気のないさまなどを意味する表現。(実用日本語表現時点)
ああそうそう。やっぱりそういうことか、聴くという姿勢どころか、聞くというそもそも音としても相手からの発信を受け取らないようにする姿勢のことということですね。無茶苦茶納得であります。聞く耳を持ち、聴く姿勢を整えなくてはなあと、身にしみます。
きくレベル0:聞く耳を持たない
きくレベル1:聞く
きくレベル2:聴く
きくレベル3:傾聴する
ざっとこんな感じで「きくレベル」を分類出来るのかなと思いました。こんなレベル分けが出来ていると、「聞くだけじゃなくて聴こう」とか、「聴くから傾聴に進むにはどうしたらいいかな?」とかとか、「おいおいせめて、聞く耳だけ持って、聞いておくれよ」なんて会話が相手と出来るようになって、少しコミュニケーションが円滑に行くかもしれませんね。
早押しクイズじゃないんだから
こんな事を考えながら、色んな人と聞くと聴くの違いについて話していると、僕が今まで人の話を聴く時のスタンスが「クイズ番組で、問題文を読んでいる途中で、分かった気がして、早押しして答えている状態」にとても近いことが分かった。
【イメージ】
出題者)問題!1192年、鎌倉幕府を〜
回答者)ピンポン!源頼朝!
出題者)違います!もう少し問題文があるので、聞いてください。
出題者)問題!1192年、鎌倉幕府を作ったのは源頼朝ですが、その時に〜
回答者)ピンポン!いざ鎌倉!!
出題者)違います!もう少し問題文があるので、聞いてください。
出題者)問題!1192年、鎌倉幕府を作ったのは源頼朝ですが、その時に鎌倉武士たちの掛け声が「いざ鎌倉!!」ですが、では、対する〜
回答者)ピンポン!平家!!
出題者)違います!いい加減、問題文最後まで聞いてもらえますか?ちなみに最初に言わなかったかもですが、この問題は早押し形式じゃなくて、問題文を全て読んだ後に、フリップに書いていいただく形式の問題です。なので、早押ししないでください勝手に。
回答者というか僕)えっ、あっ、ごめんなさい・・・
こんな感じのことを人との対話でしてしまっている自分に気が付きました。というか、じっくり話を聞いてくれて、特に相槌とか質問をせずに話を聞いてて、こちらが話しきった時に「ええとこの部分が理解できなかったんだけどどういうこと?」とか質問してくる仲間が、なんか話聴くの上手だなあと、話引き出すのうまいなあと思ったのがきっかけでした。問題文と同じように、相手の話は最後まで聴かなくちゃいけないですね。
耳を傾け「聴く」姿勢
最後に、きくレベル3の傾聴に関してです。
傾聴
傾聴とは、相手のいうことを否定せず、耳も心も傾けて、相手の話を「聴く」会話の技術を指します。意識すべきなのは、相手に共感し、信頼していると示すこと。経済産業省が「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事するうえで必要な基礎的な能力」として提言している「社会人基礎力」の要素にも、「傾聴力」が含まれています。『人事労務用語辞典』
経済産業省が大事なことを設定してくれている。文部科学省と連携して、初等教育から実践する方法教えてくれたら最高なのに。というのはおいていて、直近とある友人とオンライン会議をしている時に「傾聴」を感じた。こちらが話をしていると「いつもより反応が少なくて、なんだか動作やリアクションや返答がスローモーションだなあ」と感じた。ただ全く遅いとかイライラしたりなんてしなかった。むしろ落ち着いていて、しっかりと僕の言葉に耳を傾けてくれているようにも感じた。そのことを友人に伝えると、「確かに反応をする前に自分の中で潜る時間を作ってるかもしれない」と言っていた。つまり、僕が話している際に何度か反応をしようと思えばできたのだと思う。そのタイミングもいくつもあったのだろう。ただ、そこで反応をせずに、自分の中で思考を巡らせていたというのだ。しかも、その思考を巡らせる表現がなんともまたお洒落で、「縦にも横にも斜めにも網を張り巡らせていって、解像度を高めて、キメ細やかにしていくイメージ」と言っていて、とてもしっくりきた。そうか、僕は反応に特化するあまりに、自分の中での思考の潜り、行き来が不十分だったから、網目が荒くて、解像度が低かったのだと。
上品とは欲望に対して、動作がスローモーションであること。
友人の立ち振舞や言葉を聴いて、立川談志さんのこの名言を思い出した。僕も、聞く耳を持って、他人の話を聞いて、聴いて、そんでもって傾聴できる大人になりたいものです。
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