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台風に追いつかれる

中学生三男の初めての試合の日だ。
早朝の出発だったが、いつもギリギリまで寝ている三男もさすがに起きた。朝ごはんと弁当と水筒を用意してやる。一年生はユニフォームがないのでゼッケンを昨日のうちに作っておいた。それを安全ピンで体操服の背中側につけることになっているのだが、見てるだけでゾワゾワした。安全ピンが肌に近いところに刺さっている様子は怖い。

三男は何度も警報が出ていないか聞いてくる。数十年に一度の大型台風が近づいて来ているが、見るからに外の景色は穏やかだしまだこちらには届いてないというのに。自分の責任ではない理由で試合が中止になることを少し望んでいるようだ。
学校からもらったプリントの「持ち物」のところを一緒に確認する。「持ち物に体操服って書いてあるってことは制服で行くのかなぁ?」とか「体操服の他に着替えって書いてあるけどどうしよう」とか、なぜ!?今!?みたいなことを言い出す。いや私も事前に確認しておくべきだったが本人に任せてしまっていた。ちょっと前まで彼が小学生だったことをうっかり忘れていた。


三男を送り出したら今度は次男が起きてきた。次男は寝起きが良いのが長所だ。彼も今日は試合なので淡々と支度をして出発した。とても助かる。
長男はバイトにでかけた。いつもは自転車で行くが風が強いから歩いて行くと言う。帰りは迎えに行ってあげるよと何度言っても「大丈夫、大丈夫」と断られ「まぁそう言わずに!危ないから」と押しの一手で迫ったら「じゃあもしかしたらお願いするかも」と折れてくれた。

送り出してホッとしていたら今度は通例儀式のごとく私の心配モードが始まる。三男の水筒はあれで足りてるだろうか、お金持たせておけばよかった、お弁当傷まないだろうか、具合悪くなったりしないだろうか、帰りに台風がひどくならないだろうか、などひとしきりまだ起こってもない事態を妄想して心配する。私のこの妄想心配はもはや趣味なのではないかとすら思うほど日常的だ。


私の心配の必要もなく無事に各自帰ってきた。長男は暴風の中結局歩いて帰ってきた。

その夜はいよいよ暴風雨が激しく、私はさっさと寝ていたが何度か短時間の停電があったらしい。夜中までゲームやらネットやらしていた三兄弟が、停電のたびに懐中電灯を照らして「停電!」と代わる代わる私のところに知らせに来ては「あ、ついた」とまた部屋に帰っていってたなというのはおぼろげに覚えている。そういえば子達が停電を体験したのは生まれてはじめてだったかもしれない。

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