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きっかけは2014年のシアタードラマシティだった〜月組シアタードラマシティ公演THE KINGDOM〜

その世界の扉は開いていた

 その世界の扉はどこにあるのか、入ってしまう前には案外気付かないものである。
 私のそれは、2014年8月7日梅田のシアタードラマシティであった。
 当時高2の娘の大学見学に合わせて有給休暇を取得、久しぶりの娘とのお出かけに大学見学だけではもの足らずデートイベントを探していた。特にタカラヅカがみたかったわけではない。その日の夕刻、京都か梅田近辺で時間を過ごせるイベントならなんでもよかった。
 チケットぴあのサイトで18時半開演の公演を発見したのは1週間ほど前だっただろうか。キャンセルでもあったのか、前方の席がぽつんと2席残っていた。そんなわけで宝塚歌劇団月組シアタードラマシティ公演「THE KINGDOM」をみることになった。

キメキメとゆるゆるのギャップにハマる

 小ぶりな劇場の前方(8列目だったか)センターブロックの下手寄りだと記憶している。あおるように見上げた舞台の上で繰り広げられるお芝居に、ダンスに、歌に、私と娘は虜になった。かっこいい。とにかく、かっこいい。
 さらに胸キュンである。例えば、だ。主人公の一人が病弱な兄の妻と訳アリな会話をしている。ロシアの高貴なお姫様が従者に視線を送っている。職場恋愛禁止のスパイの先輩後輩はツンデレでいちゃいちゃしている。
 さらにさらにカーテンコール後。幕が下りたその後に主役二人が登場する。お芝居とフィナーレが終わった後の彼女達は、完全にゆるゆるだった。さっきまでエレガントに踊っていた人が、キザにキメキメに決めていた人が、お衣装はそのままに「今日はどっちの番だった?」「まあいいか、二人でしゃべろうか?」「二人とも日に日にガリガリになっていくねー」などと語るのだ。このギャップがダメ押しとなって完全にその世界に入ることとなった。

母と娘の熱量ある会話

 終演後に娘と感想を語り合った。凪七瑠海も美弥るりかもその名前を知らなかった。ドースンの方がすらっとした感じ?伯爵の方が色気あった?と役名で語る。
 紫のスーツのロシア人(紫門ゆりや)がきれいで悪かった、と私が言うと、変かもしれないけれど(娘は確かにそう前置きをした)、あの髭の部長(鳳月杏)がおじさんなのにカッコよかった、と娘。それ、お母さんも思ってた、と返す。
 髭のおじさんがたまらなくかっこいいこと、それを受け入れるには母娘は宝塚初心者すぎた。
 話題はつきない。娘役さんの感想も語った。ロシアのお姫さま(早乙女わかば)は夢夢しいプリンセスで、先輩スパイ(海乃美月)はクールでできる大人の女だった。

 後にスカイステージで放送されたものを繰り返しみたので、細部の感想は後付けかもわからない。だけれど、ここに書いた感想は間違いなく、当日帰宅中の阪急電車の中で、翌日や数日後のリビングで語っていたことである。あの興奮を7年後になる今でも覚えている。
 革命の話だったはずなのに、急にアルセーヌルパンが登場した。先に上演されていた大劇場公演(本作は大劇場公演のスピンオフである)を知らない私たちには意味がわからなかった。だが、それは些細なこと。全ての感想に「かっこよかったな」と応じる初心者母娘は、後半に詰め込んできた唐突な登場人物に疑問を感じている余裕はなかった。

あの日あの時あの劇場で

 その後、あのときドラマシティで見たあの人たちを見るために宝塚大劇場に足を運ぶようになった。 大学受験に励む娘を残して母は一人でのめり込んでゆく。
 凪七瑠海を初舞台から応援しているというOさんと客席で偶然隣り合ったことをきっかけに凪七瑠海の魅力にずぶずぶとはまっていくのであるが、それはまた、後の話。

 同じ公演を複数回観劇したり、スターが役作りを語るCS放送の番組をみるようになった今では、一期一会の舞台に素直に感想を述べることが難しくなっている。
 あのときドラマシティでTHE KINGDOMをみた感動は二度と感じることができない。

 あの日あのとき、あの公演のあのチケットを見つけたこと。開かれていた宝塚歌劇への扉を一歩入った瞬間を何度も何度も思い出しているのである。


終わりに

贔屓の魅力を140文字で語るという課題がありました。大好きな凪七瑠海様の魅力を語ろうと出会いから振り返りました。すると、初めて彼女を意識した公演を振り返っただけで1400文字、課題の10倍の分量を費やしてしまっていました。

 せっかく書いた思い入れをしまっておくのがもったいなくなり、公開を決めました。情熱が冷めないうちにと急きょ投稿しましたので、今回はいわばパイロット版。ぼちぼち体裁整えていきます。
 わかる人にしかわからない。知っている人にしかわからない。そういうシリーズになるかもしれませんが、凪七瑠海出演作を中心にこれからも書き残してゆきます。
 よろしければどうぞお付き合いくださいませ。

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