見出し画像

ブーメランは巨大化して、彼を確実に刺していたのだ。

★これまでのあらすぢ。
 上司であったカバアグは、自分の意にそぐわない
 言動や、自分以外の人間と新たなコミュニティを
 築き始めた私をうとましく思い始め、孤立させよ
 うとしたり人事権も無いのに多拠点へ飛ばそうと
 したが、いずれも大失敗。
 その後、会社の組織が変わり、私の上司では
 なくなった。
 彼は必死に『自分の王国』を築こうとしたが、
 彼のチームがあまりに勤務態度が悪いと評判
 になり、上長たちが組織改革するまでに。
 さあ、果たして!?

別名、「ハラスメントパーク」と化したカバアグチームに、遂に魔王が降り立った!
その名も「パワハラー」さん。
時代錯誤の立ったまま説教、3時間。
自分の発言したことを忘れて、また説教。
何度出しても通らぬ書類、思いつきの膨大な仕事量。

魔王の破壊力にカバアグチームはみるみる疲弊していき、精神的脱落者は後を絶たない。

そして遂に、
カバアグは早退した。
「もう、ついて行けません」と言い残して。
私が聞いたのは、今の上司さんが呆れながらその話をしていたから。

勿論、聞いていた上役の方々も失笑よ。
そらそーだ、カバアグは50歳の役職付きよ、
20代派遣女子(偏見ではなく、過去の私)じゃ
ないんだから。

聞いた瞬間、
「あ、こりゃパフォーマンスだわ」
 と思った。
次々に精神を病んで出社拒否者が増える中、
遂に自分が被害者になってしまった! となれば、
同情票が集まり、大嫌いな魔王が居なくなる。
——と、考えたのかもしれない。

しかし、その算段は甘かった。
それは会社に大きく貢献し、信用がある人がするなら強力な爆弾となるのだろう。
しかし残念ながら、カバアグ本人が思うほど、彼には貢献度も信用度も無い。
上司さんは、鋭い人だ。
読心術かよ、というぐらい鋭い。
私は聡い方(単に他人の目を気にしすぎ、というだけかもしれないが)であるが、そんな私が思うのだ。
カバアグが上司さんを小馬鹿にしていることぐらい、上司さんにはバレバレなのだ。

カバアグがコソコソ何かを画策していても、私にはバレバレだったりすることが多い。
前に「気付いてないかもしれないけど」と前置きされた事柄も、私は普通に気付いて確信まで得ていて、「知ってます」と言ったら、もの凄く驚かれたことがあった。
「えっ!? なんで!?」と問われ、つい、
「バレバレですよお!」と笑ってしまったが、
あの時のカバアグの驚愕の表情は忘れられない。
……と言うか、隠すなら隠し通せ!
爪が甘い。

てな具合で、カバアグは自分が思うほど賢くはない。

残されたカバアグチームの若者たちは、どう思うのか。
ろくに教育もされず、「協調性がない」(楽しく会話している中に入らない、カバアグに逆らう)という理由でクビを切られるチームに腰を据え、
他部署の厳しい環境を知らず、だらだらとお喋りしながら仕事するのが当たり前なこのチームの
リーダーが
仕事を投げたのだ。

残された、知恵を持たぬ子羊たち。

私は、カバアグの責任感の無さに呆れている。
ああ、彼は自分が大好きで何より大切で、
みんな仲良く、他人の介入など許さない。

彼の王国が崩壊していく。

私の容姿や生まれつきの声をバカにしたあの人も、
一つの数字を間違えた私に「若年性アルツハイマーじゃないですか」と笑ったお局オッサンも、
ニヤニヤしながら私や他の女性にセクハラ発言を繰り返していたあの人も、
頑張っている人を、隣で嘲笑っていた子たちも。

今、窮地。

正直、「そらそうやろ、仕事しろよ」
という気持ち。

私が訴えることもなく、勝手に潰れていった。

楽して遊んでいただけなのが公になり、
追い込まれたカバアグは、パフォーマンスに出た。
そんな風にしか、見えない。
本当に頑張っている部下や上長たちが哀れだ。

ずっと、「●●さんのせいで」と繰り返していたらしい。
そんなことは断じてなく、自分の非を認めなかった。
また、部下のミスを最初は
「私のせいです、私が見てあげていなかった」
 とかばう素振り(これも素振りだと解る)を見せていたのが、次第に黙るようになり、遂には失笑。
いやいや、書類にあなたのサインがありますがな。
数字の『4』の次は『5』です、『123465』て、
なに。のレベルの間違い多発。
2年近く経つのに、単純な誤記がたくさん。
本当に、「見てあげていなかった」のだ。部下が可哀想でならない。

私はずっと、我慢していた。
派遣会社に訴え、担当者が乗り込む寸前までいった。
しかし、私の今の上司さんたちが止めてくれた。
私の評価が落ちてしまう、と。
彼らが我慢しているのだ、彼らは私よりずっと理不尽なことと戦っていて、尊敬出来た。
だから、我慢した。

暴れないで、良かった(笑)

私は、まだやれる。
前にカバアグが私に言っていた、
「評価は他人が作るもの」
「見ている人は見ている、仕事をちゃんとしていない人は、今までこの会社で残れていない」
「出る杭は打たれるじゃないけど、調子に乗っていると、必ず痛い目を見る」

本当だった!

私は、関わらないようにしていただけだ。

巨大なブーメランが刺さり続けるのに、
気付かなかったカバアグの敗けだったのだ。