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-Vol.03-プロ野球選手の誕生日~プロ野球選手になりたかったら○月に生まれて!! <32年分の選手名鑑から平成とプロ野球選手を読み解く>

筆者が一年一年購入してきた『日刊スポーツプロ野球選手写真名鑑』32年分、32冊から、様々なデータを解析、紹介するnoteのVol.03。

今回は、プロ野球選手の誕生日について解析した内容を紹介したい。
既に有名な話ではあるが、プロ野球選手の誕生日にはかなり偏りがある。そこを含めて色々とプロ野球選手の誕生日について話を広げていきたい。

また、プロ野球選手と合わせて、厚生労働省が毎年行っている「人口動態調査」から一般の日本人の誕生日の傾向や変化についても独自の解析を紹介したい。
いわゆる雑学として野球を知らない人にも披露できる知識となるだろう。

なお断りなく“選手名鑑”と記述しているものは、一般名称としてのプロ野球選手の選手名鑑を指し、“プロ野球選手名写真名鑑”と記述しているものは、私の大好きな『日刊スポーツプロ野球選手写真名鑑』のことを指すように記述している。そんなに意識せずとも読み進められるとは思うがご承知いただきたい

なぜ筆者がこのようなシリーズでnoteを書いているか、詳細は下記の自己紹介の記事にあるので、お時間があれば読んでみてもらえるとうれしい。

本記事の内容は下記の目次の通りである。

○選手名鑑と誕生日

筆者は子供の頃、毎年プロ野球選手写真名鑑を手に入れると、自分と同じ誕生日の選手がいないか必ずチェックしていた。
誕生日が同じ選手が入れば応援したくなるものだ。
ちなみに筆者は1983年生まれ。
2006年にヤクルトに入団したある選手と生年月日が全く一緒ですごく親近感が沸いた事を覚えている。

誕生日はファン要素の一つ。選手名鑑の重要な項目であろう。

○巨人・クロマティ選手は昭和28年生まれ

誕生日の解析をする前に一つ小ネタを紹介したい。
1989年(平成元年)版のプロ野球選手写真名鑑の、選手の生年月日の表記は「昭39.5.25生」というような元号表記だ。
西暦より元号のほうが、今より格段に使用頻度が高かった時代であり、自然の流れでそのようになっているのであろう。

その中で一つ面白いのは
「ウォーレン・クロマティ 昭28.9.29生」
と外国人選手でも構わず元号表記となっていることだ。
クロマティ選手は1984年(昭和59年)、30歳の時に来日。
君の誕生日は昭和28年だ」
と言われた時はどんな気分であったのだろうか?
平成元年の読者や編集者たちも、違和感をもったのだろうか、翌年1990年(平成2年)からは誕生日は西暦表記となり今も続く。

○誕生日は平等に存在するのか?

後述するがプロ野球選手の誕生日(正確には誕生月)には偏りがある。
それでは、そもそも一般的な日本人の誕生日にも偏りがあるのではないか?という疑問も湧く。

厚生労働省の実施している人口動態調査で、筆者が集計時に最新であった2017年(平成29年)から、20年遡り1998年(平成10年)まで計20年分から、一般の日本人の誕生日について、まずは解析してみた。
20年間としたのは、インターネット上で容易に参照できるデータとなっていることと、4年に1度の閏年の影響も見れるという所からだ。

この出生日でランキングを作成した所、一番出生数が少なかったのは、2月29日であった。まぁ当たり前の結果である。

○2月29日生まれ

筆者の世代は、1984年が閏年だったことから、同級生に2月29日生まれの人はいた。
筆者はその人に直接尋ねた
「誕生日パーティーはいつやるの」
答えは
「2月28日か3月1日のどちらか」

・・・その人にしかわからない悩みであろう。

ちなみに先に明かすと、1989年(平成元年)から2020年(令和2年)のプロ野球選手写真名鑑に掲載された日本人選手3,500人に、2月29日生まれは、なんと1人もいない
(365) x 4 + 1 = 1,461 つまり1,461日に1日は2月29日がくるので、1人くらいはいても良さそうではあるが、1人もいないのである。

○1998年(平成10年)~2017年(平成29年)に生まれた日本人、2,165万7,840人の誕生日ランキング

厚生労働省の実施している人口動態調査を元に、1998年(平成10年)~2017年(平成29年)に生まれた日本人 2,165万7,840人の誕生日人数トップテン及びワーストテンを作成した。
結果は下記の表である。

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生まれた人数から2月29日生まれの人を引いて単純に365日で割る、つまり全く偏りがなかった場合に同じ誕生日となる人の数は5万9,301人となる。
誕生日ランクトップの12月25日生まれは、これより8,600人多く(約15%増)、2月29日を除いたワーストの1月1日生まれ1万8,182人少ない(約30%減)だ。これは結構な差である。
なおこのトップ10については、何故この日づけ達なのか、納得できるような理由は見つからない。

○出生日と曜日と休日の関係

ワーストランクについては理由が見つかる。
一目瞭然だが、すべての日付は、年末年始と祝日、休日である。
このような結果から、一般的な出生日は、休日などの影響を受けていると考えらえる。
同じ20年間で、各年の各日を、祝日、国民の休日・振り替え休日、年末年始(12月29日~1月3日)、上記に当てはまらない場合は曜日、というように分けて、その日の出生数を集計した。
結果は下記の表である。

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結果は明らかで、平日は出生数が多く、土日、祝日等は出生数が少ないことがわかる。
世の中には計画的な分娩も多いだろうから、その影響と思われる。
土日は病院も休みだ。その影響は確かにある。

上記は20年間の総合の結果であるが、これを経年推移を見てみると傾向が見える。
下記が経年推移のグラフである。
年ごとの出生数が異なるため、各年の一日あたり出生数に対する比の形で各年の曜日・祝日休日別の推移が表されている。

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20年間の経年推移を見ると、出生日について、土日祝日休日を避ける傾向は強まっていることがわかる。
平日生まれの割合が上がり、土日祝日休日の割合が下がってきているのだ。今後、固定祝日や、年末年始が誕生日の人はより珍しくになっていくことが想像される。

また火曜日が一貫して出生曜日の一位である。この理由も何かあるのだと思うが筆者にはわからなかった。

○出生日における”年度”の影響と出生月毎の出生数

この曜日や祝日の影響を踏まえて改めてランキングを下から見ていくと、祝日や休日になっていない日付で、初めに出てくるのが353位の4月1日となる。次いで348位の3月31日で、その次が345位で3月29日、次は休日では無いがお盆の8月15日、その後は3月30日、3月28日と続く。

この結果からみて、出生日については、年度末も避けられていることがわかる。
では一方の4月2日以降の順位は
 4月2日 36位
 4月3日 84位
 4月4日 286位
 4月5日 190位
 4月6日 189位

である。
微妙に4月4日が避けられているような気がするが、年度変わり付近の日付では、年度始めの方が出生数が多いことは明らかである。

ここで、1998年(平成10年)~2017年(平成29年)に生まれた日本人 2,165万7,840人の出生数を、改めて、月毎で見てみる。
下記がそのグラフである。
上が月毎の絶対数、下が月毎の一日あたり出生数となっている。

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出生月の偏りは、戦前は農閑期に出生数が多いなど、偏りがあったようであるが、戦後、平準化されていった。ただ、近年また偏りが生まれつつあるようで、5月~9月生まれが増えてきているという話もある。
このグラフからもその傾向はみられており、社会生活が年度で動いていて、効率化に向かう社会では、出生日に偏りが出てくる事は自然なことであろうと筆者は思う。

○プロ野球選手の誕生日~誕生月の傾向~

ここでやっとプロ野球選手の話に入る。

1989年(平成元年)から2020年(令和2年)のプロ野球選手写真名鑑に掲載されている日本人選手3,500人の誕生日を月毎にまとめた結果が下記のグラフである。

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明らかである。

4月生まれが一番多く、3月生まれが少ない。そして4月から月ごとに減っていくという傾向である。
これは学術的な先行研究も多くあり、有名な話のようである。

私が参考にしている書籍「プロ野球選手のデータ分析 改訂版(中山悌一著,2015年)」においても、もう少し長期間でプロ野球選手の誕生月を解析しており、同様の結果が示されている。
本書籍で、4月生まれが多く3月生まれのプロ野球選手が少ない理由として

低学齢児においては年間の成長量が大きいために、早生まれは体格・体力面で同一学年の中で劣勢である

とし、

日本の教育制度の中では、同じ学年同士でスポーツを行うことが多い。この場合野球の競技特性を考慮すると体格・体力面で優位に立つことが競技力を高めるのに有利となる。すなわち野球という競技は、体格・体力面で優れた選手が、投手や捕手ととなり、また主力打者としてチームを構成し活動の機会も多い。(中略)体格・体力面に優れた選手は試合に出場することも多く、投げたり、打ったり、守ったり、走塁したりする機会も増え、ますます競技力も向上する。このような選手がプロ野球に入団してくる確率が高まるのであろう。

と考察している。

生まれた月で人生が変わる可能性がある、というのは少し理不尽な気もするが、理不尽こそ“社会”である。

3月生まれをはね除けてプロ野球選手となった人もたくさんいる。
また以下で解説するが、誕生日ですべてが決まる訳ではない。
個人個人で理不尽に打ち勝つ、これもまた“社会”である。

○プロ野球選手の誕生日~出生年による誕生月の傾向の変化~

今回まとめた選手は、1989年(平成元年)から2020年(令和2年)のプロ野球選手写真名鑑に掲載されている選手という事で、「1989年(平成元年)に在籍していた選手」 + 「1990年(平成2年)から2020年(令和2年)に新人選手として入団した選手」が対象である。
これらの選手の生まれた年は1947年生から2002年生までとなっている。
その中である程度の人数が揃っている1965年生から1997年生の2,885人をについて、年代毎に出生月の傾向の変化があるか考察した。

上記の該当者を、
1)1965年生~1970年生
2)1971年生~1975年生
3)1976年生~1980年生
4)1981年生~1985年生
5)1986年生~1990年生
6)1991年生~1997年生
に分けて、出生月毎に集計した。
その結果が下記の6つのグラフとなる

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このように見ると全年代において、これまで述べてきたことと同様の傾向が見られることがわかる。
ただその”程度””については、読み取ることが難しいため、下記のように表を作成した。

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行は誕生月を3ヶ月毎にまとめたものとして、各年代における割合を出している。微妙にではあるが、生まれた年代が近年になってくると、4月-6月生まれの割合が低下傾向となり、1月-3月の割合が増加傾向となる。
全体的にみても割合は、段々と平準化してきているようにも見える。
理由は様々ある可能性はあるが、一つ考えられる事はある。

○プロ野球選手の誕生日~経歴の影響~

平成年間で、プロ野球選手について変わって来た事といえば、NPB入りするまでの経歴である。
下記が各年度で在籍している選手の、経歴別の割合のグラフである。

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このように高卒ですぐNPB入りする選手は減ってきており、大学からNPB入りする選手が増えている。

ここで話は誕生月に戻り、NPB入り前の経歴毎のプロ野球選手の誕生月を見てみる。
1)高校から直ぐにNPB入りした選手
2)大学から直ぐにNPB入りした選手
3)高校から社会人野球を経てNPB入りした選手
4)大学から社会人野球を経てNPB入りした選手
にそれぞれ分けて集計した誕生月の人数のグラフが下記である。

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高校から直ぐにNPB入りする選手は、見事に4月生まれが優位となっているが、経歴が上がっていくごとにこの傾向は崩れていき、大学、社会人野球を経た選手では、逆に見事に傾向が見えなくなっている。
下記に傾向がわかりやすいようにまとめた表を示す。

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この表からも誕生月の平準化がみてとれるであろう。
理由として考えられるのは、経歴を重ねて年齢が上がると、幼少期から続いた誕生月による優位性が薄れ、プロ入りの可否に影響しないようになっていることが示唆される。

このように経歴による誕生月の偏りの違いも明白である。よって前項であげた全体での誕生月の平準化の傾向は、高卒で直ぐにNPB入りする選手が減っていることが要因という事も考えられる。

○プロ野球選手の誕生日~タイトル獲得と誕生月

プロ野球選手になることに関しては、年度初めの月に生まれた方が有利であることは述べた。

それでは、プロ野球選手となって以降、活躍するか否かについてに誕生月は関係あるのであろうか?

「活躍」といっても、なかなか判断が難しいが、今回は、活躍の証である、各種タイトルを獲得している選手、いわゆるタイトルホルダーと誕生月に関して関連を見た。

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