記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

「山河令」登頂致しました

 登頂致しましたので、ねたばれ感想致します。未見の方は、お気を付け下さいませ。

 社交ダンスのタンゴのホールドが、難しくて。みぞおち⇒肩甲骨⇒指先までを繋げてパートナーと組む。そして、右腕。どうしても抜けてしまう私に先生が一言。「相手を抱きしめるには、どういう風に腕を差し出す?」
 ああ、なるほど、と思いました。そういう気持ちで腕を差し出すと、上手くはまりました。ペアダンスならではの感覚だなあと思いました。
 そして、「山河令」。ブロマンス、直接的な表現は不可。それでも、相手をいつも大切に抱きしめているような、大きな愛情を確かに感じさせてくれる作品。制約を逆手に取り、素晴らしい物語を生みだして下さった手腕に拍手。
 「山河令」は、演出や構図もめちゃくちゃ私の好みなのです。あしゅが温様に素顔を初めて見せるのが水の中だったり、簪を贈るシーンも言葉はなく、ただ「贈る」という行為と二人の満ち足りた表情だけ。余計なものを全てそぎ落として、そこにある人間としての愚かさ、強さ、優しさ、人への思い、愛情、憎悪、嫉妬、執着を描き切ったような気がします。
 構図としては、再度晋王の元へ向かった際に四方から槍で囚われているあしゅの姿がめちゃくちゃ好みでして(ごめんね、あしゅ)。その後に温様があしゅを助けた後、四季山荘の弟子としてあしゅに跪き、拝謁するシーン。谷主としての姿で、というのにぐっときました。きっとあしゅが谷主としての自分を受け入れてくれたから、温様は自分がやってきた事全てを引き受ける覚悟を決めたうえで、あしゅと共に歩んで行く事を決意したのだろうなあと。そしてあしゅにもその決意が分かるから、あの泣きそうな優しい笑みで温様の頭に手を伸ばしたのだと思うと、もう涙しか出ないですよね…。あと、あの時の温様のお顔、いけめんすぎます。ただでさえいけめんなのに、いけめん度合いが振り切れてます。怖い。
 あとは、温様が「光に触らせてくれ」とあしゅに手を伸ばす時の神々しさとか。温様にとってあしゅは光だった。そして、その逆も。
 この作品の素晴らしいところは、あしゅと温様の二人の世界だけではなく、他の方々との繋がりや自分の信念の為を大切にしているところだと私は感じます。成嶺、あしゅ、温様の三人の家族の形であったり、温様が阿湘の為に命をかけたり、韓英さんのあしゅへの忠義であったり、あしゅが己の命より多くの民を助ける事を選択したり。二人だけの世界ではなく、ちゃんと他の人達もその世界に生きていて、自分が貫くと信じるものがお互いにある。そのうえで、最後に選ぶのが互いの命というのが、ああ、本当に本当に大切なものが二人の間に残ったのだな、と思える。武庫の中であしゅが、「生きたいさ。お前にも会えたしな」と口にした事が、全ての答えなのかなと思いました。死を恐れていなかったあしゅが、「生きたい」という願いを持てるようになったのは、あしゅが温様の光だったように温様もあしゅの光だったのだと。
 「命や人の思いを繋ぐ」という事がこの物語のテーマの一つなのかもしれません。白衣先輩の「この時の為に自分はいたのかもれない」という言葉に涙腺崩壊したのですが、両親が必死で守った温様、その温様の命を守った羅様、そして温様が守りかばってきた阿湘。成嶺は父から託された瑠璃甲を必死で守り、あしゅの思いを引き継いで四季山荘を再興し、大切な娘に「念湘」と名付けた。連綿と続くひとの営みは、こうして続いていくのかな、と。その営みが、とても美しく感じました。そして、このように繋いでいきたいと思う人との出会いが、どれだけ貴重なものなのか。
 あしゅと温様が行った「六合心法」の事を大人になった成嶺が、「喜んで相手の為に命を差し出す人が必要」と口にしていますが、よくよく考えるとそのような人に出会える確率は、人生の中でどれくらいなのだろう? と。私は誰の為になら命を差し出す? と考えてみると、家族、本当に本当に大切な友人しか思い浮かびませんでした。
 だから二人が六合心法を行う時の温様の台詞が、なんかもう本当に胸にささって。あしゅは温様の言動を本当に疑いもしないし、純粋に二人でずっと生きていける道を選択したのだなと。そして温様は、そんなあしゅにずっと生きていてほしくて、あの選択をしたのだなと。六合心法が終わり、目を開け、目の前の温様の姿を見て全てを悟ったあしゅが、温様の手をずっと離さなかった事がとても印象的でした。
 その事と、成嶺が自分の弟子達に「六合心法」の事を話していた事、白衣先輩が、「自分の前にはもう誰も死なせない」と言っていた事から、温様は目を覚ましてあしゅと共に生きているという、もう一つの結末を安心して見る事が出来ました。成嶺の心根からして、万が一二人が一緒にいなかったら、弟子達にそのようなお話はせず、自分の心に留め置いていると思ったからです。
 なので、もう一つの結末は、「本当にお二人一緒で良かったです…!!」と号泣しながら見ておりました。二人の穏やかな笑顔を嬉しかったですし、あしゅの髪に新しい簪があったのを見て、「良かったわね、あしゅ」と母親のような気持ちで見ておりました。

 「山河令」は、本当に素晴らしい物語だと思います。しんどい内容ですし、本当に腹が立つ人も出てきますし、人間の嫌な部分も描かれています。だからこそ、成嶺、あしゅ、温様の三人の家族、阿湘と曹兄さんの恋、阿湘と温様の兄妹、あしゅと七爺さん、大巫さんの友情、そして韓英さんとの信頼関係がとてもきれいで、大切な人との繋がりを大事にしようと思えるのです。このドラマに出会えて、本当に良かった。作品との出会いも、人との出会いと同じように奇跡のようなものかもしれません。そのような奇跡に、感謝です。有難うございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?