見出し画像

有栖川有栖「白い兎が逃げる」

 現在、一人有栖川有栖祭りでございます。髙村薫先生の「冷血」を読んでいたら、あまりの筆力に気分が鬱々としたもので、面白い本格ミステリが読みたいめちゃくちゃ面白い本が読みたいと手に取ったのが、有栖川作品。多分火村先生とアリスシリーズは全て読んでいると思うのですが、再読してもまた面白いんですよね。
 という事で、今回は四編の中編が入った本書を読了。
 面白い。
 私、高校時代に何故か西村京太郎先生の鉄道を使ったトリックが好きすぎて、友人に、「読みながら出てくる時刻をメモして、確かにそのトリックが可能かどうかを確認しながら読んでる」と話をしてドン引きされた記憶があります。だって、面白いんだもん、鉄道トリック。なので、表題作「白い兎が逃げる」はとても楽しく読みました。有栖川作品の好きなところの一つに、がちがちの本格でありながら、どこか浮世離れしたおとぎ話のような色彩が混じっているところがあります。イメージ、選ぶ言葉のチョイス、そして語り手が、「アリス」。本格物は結構読んでいると思いますが、こういう作家さんて、なかなかいらっしゃらないのではないかしら。トリックも、がっちがちにつくりました、ではなくて「え?こんな事?」という思考の盲点をついているのも非常に面白く感じました。
 この本に入っている他の作品も同様で、「ああ、こういう動機があるのか」「これでアリバイがやぶられるのか」というのが、少し思考の扉を違った方向に開けば見える世界で、それがすっごく面白く感じるのです。特に、「地下室の処刑」にはうなりました。また、あとがきで先生ご自身が触れられていますが、法月綸太郎先生の「死刑囚パズル」もめっちゃ面白かったです。
 本格ミステリは、素晴らしいですよね。という事で、今後も楽しく読書をしていきたいと思います。当分は、有栖祭りが続きそうでございます。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?