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毎日読書#216 『太陽系最後の日」(アーサー・C・クラーク)

「SF好きですよね?」と聞かれて「いや、そうでもないと思いますよ」と答えていたのは、あまりにもコアで強まったSFファンたちが周りにいるからでした。私のSFの知識なんて大したことが無いので、SFに強まった方々の前ではシュンとしてしまう。

でも、ある日、ふと思いました、無理して「好き」と「詳しい」を同居させる必要は無いですよね、と。そんなわけで、最近、やっと自分が「SFファン」であるということを自覚しました。長かった。

SF面白いよね。大好き。

でも、吹っ切れたとはいえ「SF作品で何が好きですか?」とか「SFは何から読んだら良いかな?」などと聞かれると、困ります。あんまり、網羅的にこの分野を読んでいないから。(そういえば、そんなふうに読んでいる分野なんて無いかも)

個人的にはダン・シモンズの『ハイペリオン』のシリーズが大好きなんだけど、いきなりこれを渡しても3ページ位で捨てられちゃうだろうし。最近流行りの『三体』も「読むぞ! 読むぞ! 読むぞ!」と3回気合入れないと読めないだろうし。昨年の個人的ベスト『なめらかな世界と、その敵』とかどうかしらね。あ、短編が良いね。

短編でこれぞSFといえば、もうこれしかない。ということで、今日ご紹介の『太陽系最後の日』です。人間の可能性、科学技術の可能性に夢と希望を与えるのがSFなら、まさにこの小説はクラークが残したSFらしいSF。まさにマスタピース。

とある恒星の寿命が尽きようとしていた。数日前に見つけたその恒星には10の惑星があり、そのうち、中心から3つ目に有る惑星には、(少なくとも他の恒星系にも届く電波を出す程度の技術力を持った)知的生命が居るようだ。あと数時間で恒星が爆発し、惑星も破壊されようとするなか、その惑星から生命体を救おうと2つのチームが惑星に降り立った。

ということで、あと数時間で爆発してしまう太陽と、それに巻き込まれ破壊されてしまう地球が舞台。地球人を救おうと地球に降り立った宇宙人達は、人類を見つけることが出来ない。それどころか、あと数時間で地球が爆発するというときに、うっかり閉じ込められたりする。ハラハラドキドキの冒険活劇だ。はたして宇宙人の探検隊は無事地球を脱出することが出来るのか。そんなことより、地球人はどこへ行ったのか。

あっと言う間に、あっと驚くラストまで。

SFの面白さが詰まった傑作短編です。

本書は、短編集となっていて。掲載作品は以下の通り。

太陽系最後の日
地中の火
歴史のひとこま
コマーレのライオン
かくれんぼ
破断の限界
守護天使
時の矢
海にいたる道
エッセイ 貴機は着陸降下進路に乗っている―と思う

クラークは、作家として活動した62年間の間に、沢山の作品を世に出してきた。20世紀を代表するSFの巨人だ。代表作としては、キューブリックが監督した「2001年宇宙の旅」の原作や「幼年期の終り」などが有名だし、SFを読むなら、絶対に読んでほしい長編の傑作が沢山ある。でも、まずはこの短編集でSFの楽しさをカジュアルに感じてもらい、SFの楽しさ、面白さを知ってもらい、そこから徐々に長編に挑戦するというのは良い道かもしれない。

なんと3月の「100分de名著」でアーサー・C・クラーク特集をするそうですよ。「太陽系最後の日」という文字面を書店でちらっとみかけて、懐かしくなって小走りで家に帰り、早速読んでみたという了見です。今回は1作ではなく、複数のクラーク作品を取り上げるみたい。

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