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『極端に短いインターネットの歴史 (浜野保樹)』【読書ログ#28】

『何であれ、一度作ってしまったものを、使わずにおいておくことは難しかった』から本書は始まる。インターネットの事ではない、8月6日に広島で、8月9日に長崎で使用された原子爆弾に関する話だ。これがインターネットの歴史を語る上でのスタート地点となる。

1997年に書かれた本書では、原爆の圧倒的な破壊力を人類が目の当たりにした日から始まり、1995年にインターネットのバックボーンが全米科学財団(NSF)から、民間のサービスプロバイダーにスイッチした日までを紹介している。

インターネットの歴史と表題にあるが、話の中心は第二次世界大戦のコンピュータの歴史であり、その開発を牽引する事となった冷戦の歴史だ。

今や道路や水道、テレビやラジオと同じレベルでインフラの一つとして認められているインターネットだが、この技術がどのようにして生まれ普及が始まったのか。どのような人達が、どのような目的でこの仕組みを作り上げてきたのか。

この本にかかれている事を、何一つ理解していなくても、全く問題なくインターネットを利用する事が出来るし、この本の内容を知っていたところでインターネット論を語れるようになるかというとそんなことはない。

でも、ワクワクする。ブッシュやフォン・ノイマン、リックライダーたちの物語にワクワクする。核攻撃を受けた再のダメージコントロールのために発想された分散ネットワークのアイディアが、後に拾われ、パケット技術と結びつき学術ネットワークが出来上がるというダイナミズムにワクワクする。歴史モノが好きな方々の気持ちが少しわかったきがする。

この物語の終盤、1969年にARPAnetと呼ばれるインターネットの前進となるコンピューターネットワークが産まれる。今のインターネットを支えるパケット通信と分散ネットワークの仕組みを備えていた。

ARPAnetは、研究資産としてのコンピューターを共用する為に造られたが、ネットワークに参加する機関が増え、電子メールが発明され、まもなくメーリングリストが発明されると、最初の大きなメーリングリスト『SF-LOVERS』が生まれた。全く仕事に関係の無いトラフィックだが、ARPAをお目溢しをした。これがインターネットメディアの始まりかもしれない。

1980年2月のログをみてみると「 Today's Topics: Review of new Hogan book, More on Reuse of SF Props」なんてあって楽しそう。

当初の狙いだったコンピューターの処理能力を共有する目的からそれ、次第にメッセージのやりとりなど、様々な利用方法が発明されるようになった。そしてみんな大好きCERNがWWWを発明し、最初のWEBブラウザ『モザイク』が開発されると、インターネットの利用は一気に拡大されていく。

それから先の歴史は、今まさに私達が経験しているものとなる。

刊行が1997年と古い本ですが、情報爆発前夜の様子を知る貴重な資料として。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。