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毎日読書#240 『日本酒の起源:カビ・麹・酒の系譜』(上田誠之助)

書店で日本酒の本をみかけるとつい買ってしまう。幸い、失敗したことはなく、どれも勉強になり面白い本ばかりだった。

本書、タイトルで『日本酒の起源』とあるが、読んでみると「日本の酒の起源」といった内容だった。とはいえ、稲から作った酒にフォーカスしているから、やっぱり日本酒で良いのかな。

本書も面白い読書でした。先日、米の歴史をおいかけたばかりだったのでなおさら。

日本酒の歴史は、当然「稲作」の歴史とリンクするのだ。

『米の日本史』では、縄文人が稲作をしていたかは正直よくわからないという感じだったが、本書では、縄文人の起源が東南アジアの海岸沿いに住んでいた非漢民族であるならば、稲作と口噛酒の風習も一緒に持ってきたはずだという。

ちなみに口噛酒とは、漫画『もやしもん』でも作っていたが、口に米などの穀物を含み、よく噛み、よく噛んで、噛んで、唾液とよく混ざったら壺にダーッと出して、それを壺一杯につくる。そうすると唾液に含まれるアミラーゼという酵素が米を糖化して、その糖をつかい野生酵母がアルコールを作るという機序だ。なかなか勇気のいる飲み物だ。

今の日本酒のスタイルである米麹を使った酒の醸造は、紀元前2~3世紀ぐらいに、中国の江南地域から、水田による稲作の伝来と一緒に入ってきたようだという。日本起源説も有るが、渡来説の方が主流だ。そして、米麹を利用してつくった日本酒は、口噛酒をおいやり、日本酒醸造の主役となっていった。

口噛酒は全く途絶えたのかと言うと、神様へのお供え物として、戦前までは一部で作られていたようだ。

日本では神に供える食物を神饌(しんせん)と呼ぶが、特に米で作られたものは必ず添えられており、「しとぎ」と呼ばれる米粉に水を加えて練ったものと神酒は必ず入っていた。

神酒は、日本酒の場合が多いが、一部地域では、米粉のねりものである「しとぎ」を口噛みにし、神酒を作った。

当時の人たちも、やはり抵抗があったのか、口噛酒作りに参加する口噛み担当は、若い女性に限定されるケースが多く、なんとかして抵抗感を減らそうという努力をしていたようで面白い。

口噛みによる神酒作りは、戦後になると全て消えてしまったようだ。まぁ、そうだよね。

本書では、いわゆる「日本酒」について、詳しく説明されているわけではない。それよりも、古代の酒作りがどのように起こり、どのように発展して現在の形に落ち着いたのか、その変遷を時には酒を実際に作ってみながら丁寧に検証している。

全体的に説明が少なかったりするので、読みにくい箇所もあるけど、ググりながら読めば問題無しです。酒好き、歴史好きの方、是非お試しを。

本書には口噛酒の詳しい作りかたも記載されているので、試してみたいかたは是非どうぞ。

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