毎日読書#186 『それまでの明日』(原寮)
原尞という作家が居ます。レイモンド・チャンドラーが好きすぎて、フィリップ・マーロウが好きすぎて、42歳のときに、西新宿に事務所を構える私立探偵・沢崎を主人公としたハードボイルドな探偵小説『そして夜は甦る』で作家デビュー、山本周五郎賞を受賞。
その1年半後に出した、やはり私立探偵・沢崎が活躍するキレッキレのハードボイルド小説『私が殺した少女』で直木賞を取り、和製ハードボイルドを日本に定着させるという偉業を成し遂げた。
その後は6年後に『さらば長き眠り』が。
9年後に『愚か者死すべし』と続く。
典型的な寡作家。
チャンドラーにならって7作は書くとインタビューでは言っていたのに、あまりにも新作が出ないので、一部界隈では(私ともうひとりの原寮ファン)、もう二度と新作は出ないのではないかと噂をされていた。
それがなんと、前作発表から14年後にあたる去年、今日紹介する『それまでの明日』が出版された。
新作を書店で見かけたときは本当に驚いたし、待っている人が多かったのだろうか、奥付をみたら7刷になっているし、慌てて購入しましたよ。
ただ、なんとなく買うだけで満足しちゃって、冒頭を少し読んで、相変わらずの沢崎節を感じ取るだけで、最後まで読んでいなかった。
というのも、コンディションをハードボイルドにしておくために、なにかしらレイモンド・チャンドラー作品を読んでから読もうと思っていたから。
特に理由もなにもないのだけど、なんとなく、これが最後かもしれないと思うと、ちゃんと整えておきたいなぁという気持ちがありました。
そして、先日。やっと『ロング・グッドバイ』を読みました
ので、満を持して本作にとりかった次第。
もはや過去の作品はちゃんと覚えていない(だったらチャンドラーじゃなくて原寮の過去の作品を読めばよかったのか)のだが、相変わらず昭和の香りしかしてこない沢崎に安心した。
もはや、沢崎もその周りの人物たちもハードボイルドすぎて、言葉遣いというか、言動がおかしいのだけど、この作品は原寮ユニバースの世界の話なので問題無い。
ハードボイルドな男が、振り回される。ハードボイルドに振り回される。滑稽一歩手前なんだけど、絶対に滑稽には落ちない。
過去のシリーズで脇を固めていた新宿署の面々や、ヤクザの皆様達についても相変わらずの様相。口汚く罵り合いながらも、愛で強く結ばれている。
感想? んー、ノーコメント! でも、原寮ファンは買って読んでおきましょう。そうしないと、次が出ないから。あと2作だよ。
刊行ペースが6年、9年、14年。約1.5倍の伸び。そうすると次の6作目は21年後なので、著者は95歳になっている計算だ。いけるかな。私も生きているのか怪しい。
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