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毎日読書#196 『ドキュメント生還-山岳遭難からの救出』(羽根田治)

小さなミスが積み重なり、やがて致命傷となる。それはどんなことにもおこりうる普遍的なことだけど、登山でそれに出くわすと、文字通り致命傷だ。命を落とす。

本書は、生還をはたした山岳遭難のインタビュー集で、8つのケースがまとめられている。

目の前に歩いていた登山客は悠々と下山しているのに、ほんの一時間、余計に休憩をとっただけで、何日も雪山に閉じ込められることになってしまう。いつもなら見落とす事のない印を見落とし、登山道を大きく外れ、深みにはまっていく。道に迷った事を認められず、取り返しのつかない事になる。

いったい彼ら、彼女らは、何故遭難事故にあってしまったのか。本書を読むと、きっかけは些細なのだなと気が付く。ごく普通に登山を楽しむ方々が、ちょっとしたきっかけで遭難している。

遭難を決定的にするその瞬間の心理状態はとても興味深い。そこにあるのは実に人間らしい弱さだったりする。

それは、きっと自分は大丈夫という過信や思い込み。ひきかえすべきと分かっていながら「ここまで来たのに」という思いから先へ進んでしまうサンクコスト効果。迷ったと分かっているにもかかわらず、プライドが許さず家族に告げる事が出来ないなど。

本書に登場する方々は、幸いにも生還を果たした方々だ。同じように遭難し、命を落とすものも多いだろうから、かれらの記録は、さながら臨死体験の記録だね。

さて、では、どうしたら遭難しなくてすむのか、生還か否かの線引きはどこにあるのか、結局は、ただひたすら待つというのが正解のようだ。

全員が〝救助を待った結果として生還を果たせた〟ということだ。 「いたずらに動き回って体力を消耗するのではなく、一カ所にとどまってジッと救助を待つことだ」というのは、山で遭難したときの鉄則とされている。

そして、助けが来るまでのあいだ、しっかりと待つため、準備も重要だ。

●事前に家族や地元の警察に計画書を提出する。
●しっかりした装備で挑む。ツエルト、火、ストーブ、非常食は必携。
●万一、遭難してしまったら、救助が来るまでじっと待つ。
山で遭難してなお生き延びるには、この三つが必須条件になるといっていいと思う。

私は、もともと登山はしないし、これからもすることは無いと思うし、本書を読んでしまったので、さらに登山はしないぞという決意が何より硬くなった。のだけど、この本に書かれていることは肝に銘じておこうと心の底から思う。

私は、走らない、登らない、ゴルフをしない。不健康中年三原則。

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