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全力でジャガイモ蘊蓄を集めた著者のジャガイモ愛に満ちた本『ジャガイモの世界史 歴史を動かした「貧者のパン」(伊藤章治)』【読書ログ#42】

富士山をも超える高度4000メートル、寒暖差も有り穀物など育ちそうも無いようなチチカカ湖のほとりからジャガイモの歴史は始まる。アンデスの山中で栽培され、地元の人達の生活をささえていたジャガイモは、スペインからの征服者により金銀財宝と共にヨーロッパに持ち込まれ、悪魔の穀物なんて言われながらも徐々に浸透を深めた。

すぐに人々の生活に欠かせない穀物となったジャガイモは、やがて英国の覇権の広がりと共にアジアへ伝播し、とうとうジャカルタから長崎にやってきて、日本の人々にも愛されるようになった。

ジャカルタから来たイモだからジャガイモだ。

人類の歴史が動くとき、その陰には、常に戦争や貧困、飢餓に苦しむ人々が大勢いた。ジャガイモは、そんな彼らをギリギリのところでささえ、人類の歴史をつなぎとめる。

この本は、ジャガイモを軸に歴史を学ぼうというものではない。ジャガイモ愛に溢れた著者により丹念に拾われたジャガイモの蘊蓄が、歴史の流れと共に紹介されれている。それを興味深く楽しく知る本だ。

読めばわかるが、ジャガイモは歴史なんて動かしてはいない。歴史を掘り下げたい人には物足りないかもしれない。でも、ジャガイモ大好きコラム集だと知ると楽しい読書になる。

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「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。