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毎日読書@221 『TVアニメ創作秘話~手塚治虫とアニメを作った若者たち~』(宮崎克、野上武志)

まだ祖父が存命だったころ、テレビでアニメを見る僕たち兄弟に「またテレビ漫画をみているのか」と残念そうに言っていたのを思い出す。そう、むかしは「テレビ漫画」と呼ぶ人も居た。

私は昭和50年生まれ。小学生の頃の娯楽は、外ではサッカーかラジコン、家の中ではゲームと漫画とアニメだった。「だった」なんて書いてみたけど、今の子どもたちもそんなに変わらないのかもしれないね。

物心ついたころには「ドラえもん」とか「サザエさん」といった、国民的アニメの第一陣はすでに放送されていた気がする。なんとなく覚えているのは「北斗の拳」だ。主人公のケンシロウ(四兄弟の末っ子なんだけど、ラオウ、トキ、ジャギときてケンシロウ。明らかに両親は名付けの時に気を抜いている。もしくは、上の三人が芸名を使っている)がワタタタタタタと敵を指で突くと、敵の身体がはじけ飛ぶというアニメで、残酷だと言って母親は見せたがらなかったが、当時、子供向けなのに猥褻だと大問題になっていたらしい「まいっちんぐマチコ先生」を見る位なら何でも見なさいという方針が後に出来たので、ジャンプ系のアニメはよく見ていた。

ちなみに「まいっちんぐマチコ先生」は当時から酷いな、と思わせる内容のアニメだったのだけど、いま改めてググってみると酷い。おそらく現在放送したら逮捕者が出るレベルのセクハラ作品だ。

今も、昔も、子どもの娯楽として大人気のテレビアニメ。その始まりは昭和38年。西暦だと1963年の元日に始まった手塚治虫による「鉄腕アトム」だ。日本で最初、世界で最初の毎週連続テレビアニメーションのはじまりがこの作品だった。

本書は「鉄腕アトム」がどのようにして生まれ、世に出たのか、手塚治虫という漫画界、アニメ界の大巨人とかかわってきたアニメーターや制作者たちとのエピソードを紹介することで、手塚治虫がいかにして日本にテレビアニメーションを根付かせてきたのかが紹介されている。

少年時代のぼくらが、現在の少年少女たちが、テレビの前で夢中になっているテレビアニメの源流は、手塚治虫という一人の天才の異常ともいえる情熱と、その熱にうかされた才能ある人々から生み出されたものだった。

ただただ純粋にアニメが好きで、日本でアニメを成功させたくて頑張っていた人たちのお話だが、とにかく、ゼロから何かを生み出す際の熱量というものを感じる。当時の雰囲気を知るには良い作品。

しかし、ここで書かれている制作の現場は苛烈を究める。そして、単なる個人的な印象でしかないが、現在においても、程度の差は有れど、あまりこのときから変わっていないではないのかしら? 外野にいると、聞こえてくるのは制作現場が限界を迎えているという声ばかり。ここから現在まで、大きなブレイクスルーって有ったのだろうか、現在のアニメ制作の現場の事が気になった。

本書、頂きものなんですが、面白かった。才能と情熱のあるひとが転職を見つけると、新しいものが生まれる。子供がもう少し大きくなったら読ませてみたいな。もう、こんな労働環境のところはないからねと付け加えつつ。

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