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System on Chip(SoC)とは?CPUを含む一体型システム✨

System on Chip(SoC)は、現代の電子機器において欠かせない技術です。SoCは、一つの半導体チップ上にコンピューターシステムの主要な構成要素を集積した集積回路のことを指します。

これにより、デバイスの小型化、省電力化、高性能化が実現されます。

本記事では、SoCの基本概念、構成要素、利点、課題、そして応用例について、最新の市場データを交えて詳しく解説します💡


SoCの誕生とASICの役割

System on Chip(SoC)は、1980年代に登場したASIC(Application Specific Integrated Circuits)の進化形として位置づけられています。

ASICは、半導体メーカーがあらかじめ設計した基本的な回路セルを用い、ユーザーが特定の機能を追加してカスタマイズする半導体製品です。1980年代半ばに登場したASICは、ユーザーが設計したロジックを搭載したシリコンダイでした。

しかし、技術の進歩により、1枚のシリコンダイに集積できるロジックの規模が急速に増加しました。これにより、従来は別々のシリコンダイに存在していたCPU、メモリ、インターフェース、グラフィックス、コーデックなどの回路が一つにまとめられるようになったのです。

この変化に伴い、従来のASICという呼称では不十分となり、SoCシステムLSIという新しい名称が誕生しました。SoCは、より高度な機能を統合した製品として、現代の電子機器の心臓部となっています。

従来のASICからSoCへの変化(引用元:https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/1204/25/news001.html)

SoCに関する歴史はAnsysのHPにも紹介があるので、興味ある方は読んでみて下さい。

SoCの構成要素と機能

SoCの構成要素には以下のようなものがあります:

  • 中央処理装置(CPU):計算や制御を行う頭脳部分

  • グラフィックス処理装置(GPU):画像や映像の処理を担当

  • メモリ:データやプログラムを一時的に保存

  • 入出力インターフェース:外部との通信を担当

  • 信号処理プロセッサ(DSP):音声や画像の信号処理を行う

  • アナログフロントエンドモジュール:ADC/DACを含む

  • 電源および電源管理モジュール:電力供給を管理

無線SoCの場合、RFフロントエンドモジュールユーザー定義ロジック(FPGAまたはASICで実装可能)、およびマイクロエレクトロメカニカルモジュールも含まれます。

さらに、SoCチップには基本ソフトウェア(RDOSやCOSなどのアプリケーションソフトウェア)モジュールやロード可能なユーザーソフトウェアが組み込まれています。

これらの構成要素は「オンチップ・バス」で接続され、効率的にデータをやりとりします。SoCとASICの大きな違いは、SoCがカスタムICと標準ICの両方を含む点です。

SoCの内部構造例(引用元:https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/1204/25/news001.html)

特に、標準ICはASSP(Application Specific Standard Products)として知られ、あらかじめ仕様が決まっているため、ユーザーはデータシートやカタログを通じて容易に情報を得ることができます。これにより、SoCはより多くのユーザーにとって利用しやすい製品となっています。

SiPの登場とその重要性

SoCのシリコンダイは通常、標準的なCMOSロジック製造技術で作られますが、特定の機能を持つ半導体ICには独自の製造技術が必要な場合があります。

このような場合、すべてを一つのシリコンダイに集約するのは難しいため、SiP(System in Package)というアプローチが採用されます。SiPは、複数のシリコンダイを一つのパッケージに収納し、システム全体を実現する技術です。

例えば、高性能マイクロプロセッサや大容量DRAM、フラッシュメモリを組み合わせたSiPは、特にモバイル機器でのスペース効率を高めるために重要です。

つまり、SoCの方が汎用品SiPの方が専用品ということが出来るでしょう。

  • SoCと異なり、1つのチップにまとめることにこだわる必要がない

  • 求める性能に応じて、SiPの組み合わせを変えられる

汎用品としてのSoCと専用品としてのSiP(引用元:https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/1204/25/news001.html)

SoCの市場規模と成長予測

SoC市場は急速に拡大しています。2024年の市場規模は約1726億5000万ドルと推定されており、2029年には2538億ドルに達すると予測されています。これは、年平均成長率(CAGR)8.01%に相当します。

SoCの利点

SoCを用いることで多くの利点があります💡主な利点には以下のようなものが挙げられます。

  1. 小型化・軽量化:複数のチップを一つに統合することで、機器全体の小型化・軽量化が可能になります。これにより、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどの小型機器の開発が飛躍的に進みました。

  2. 省電力化:チップ間の通信が減ることで、消費電力を抑えることができます。バッテリー駆動の機器では、この省電力化が非常に重要です。

  3. 高性能化:一つのチップ内で処理が完結するため、データの転送速度が向上し、全体的な処理速度が上がります。

  4. コスト削減:複数のチップを個別に製造・組み立てる必要がなくなるため、製造コストを抑えることができます。

  5. 信頼性の向上:部品点数が減ることで、故障のリスクも低減されます。

SoCの課題

一方で、SoCにはいくつかの課題も存在します。例えば、主なものだけでも以下のような課題が挙げられるでしょう。

  1. 設計の複雑化:多くの機能を一つのチップに集約するため、設計が非常に複雑になります。

  2. 発熱問題:高性能化に伴い、チップの発熱が増大する傾向にあります。効率的な放熱設計が必要です。

  3. 開発コストの増大:高度な設計と製造プロセスが必要なため、開発コストが高くなる傾向があります。

  4. 柔軟性の低下:一つのチップに統合されているため、個別の機能をカスタマイズすることが難しくなります。

SoCの応用例

SoCは非常に広い範囲で活用されています。主な応用例を以下に列挙します:

  1. スマートフォン:現代のスマートフォンには、ほぼ必ずSoCが搭載されています。高性能なCPUやGPU、通信機能などが一つのチップに集約されているため、小さな筐体で高度な処理が可能になっています。

  2. ウェアラブルデバイス:スマートウォッチやフィットネストラッカーなどの小型デバイスでは、省電力性と小型化が特に重要です。SoCの採用により、長時間の使用と多機能化を両立しています。

  3. IoTデバイス:家電や産業機器などのIoT化が進む中、SoCは重要な役割を果たしています。小型で省電力、かつ通信機能を備えたSoCにより、様々なモノがインターネットに接続可能になりました。

  4. 自動車:最新の自動車には、多数のSoCが搭載されています。運転支援システムや車載エンターテインメントシステムなど、高度な機能を実現するために活用されています。例えば、ガソリンエンジン車では約50〜150個の半導体チップが使用されますが、電気自動車では最大3000個の半導体チップが使用されることがあります。

現代の自動車は走る半導体と言っても良いほどに多数の半導体が搭載されており、SoCも欠かすことが出来ない部品の1つ。画像は自動車用先端 SoC 技術研究組合のPRより引用(https://asra.jp/news/20231228_jp.pdf)

まとめ

  • SoCは、1つの半導体チップ上に複数の機能を集積した技術

  • 小型化、省電力化、高性能化などのメリットがある

  • スマートフォンやタブレット、IoTデバイスなど、様々な分野で活用されている

  • 設計の複雑化や発熱問題などの課題もある

  • AI処理の強化や次世代通信対応など、今後さらなる進化が期待される


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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

ハッシュタグ

#SoC #SystemOnChip #半導体 #スマートフォン #IoT

参考文献

https://www.ansys.com/ja-jp/blog/what-is-system-on-a-chip


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