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ギャグマンガ・4コママンガ千冊 97〜121冊目 『星のカービィ デデデでプププなものがたり』 単行本 全25巻 感想


『星のカービィ デデデでプププなものがたり』ひかわ博一  小学館

1994年から2006年まで『月刊コロコロコミック』『別冊コロコロコミック』にて連載されていた『星のカービィ デデデでプププなものがたり』(ひかわ博一)を読んだ。私が小学生の頃、コロコロコミックを読んでいたので、なんとなくこのマンガを読んだ記憶がある。なので、手にとってみた。子供のころに触れた記憶のある作品を、大人になってから再び手に取ってみると、なんだかワクワク感が湧いてきますよね。

大人になってから読むと、プププランドの住人たちが、すべてを貪り食うピンク色の化け物に蹂躙されるホラーコメディとして読めてしまった。もちろん、面白いです。初めのうちは、スターロッドという願いが叶う棒を奪ったデデデ大王と、それを取り返そうとするカービィの構図になっているが、すぐにスターロッドは影が薄くなってしまう。デデデ大王がスターロッドを利用して、宇宙船やらテーマパークやらいろんなものを建造するのだが、カービィがすべて破壊するという、くちびるのぶ厚い創造神となんでも吸い込む破壊神の戦いの様相を呈していたのだが、そのうち、カービィが様々な職業に就こうとしたり、プププランドやその外世界を探検したり、ある時代にタイムスリップしたりと、いろんなことをしようとするカービィに巻き込まれて、デデデ大王を筆頭に(いちおう、プププランドの王様です)プププランドの住人が大混乱に陥れられることになっていく。カービィはキャラを吸い込むとそのキャラの能力をコピーできるので、カービィは手当たり次第、自己都合で住人を吸い込みまくります。カワイイ顔をしているので、ほのぼのとして眺めていられますが、こちらがちょっと真顔になって読むと、カービィの魔物性が目に付きます。カービィの目も巻を重ねるごとに、どんどん大きくなるし、一抹の恐怖を覚えました。一抹どころか、厚塗りの恐怖かもしれません。”ペポポーイ”と奇声を上げながら、おいしそうに住人を吸い込みます。

ここまで、おどろおどろしくカービィを語っちゃいましたが、このマンガの面白いところは、まず、オノマトペ・効果音のイラストが多彩であることでした。マンガとして大切であろう、パッと見の面白味が感じられるんですよね。その効果音が表している行為にとてもよく似合ったイラストなので、読んでいて面白い気分が醸成されていく感じがします。お目々をコマからコマへとポンポン移していきながらも、効果音のイラストはじっくり見ちゃいましたね。

次に、私が良かったと思うのは、モブキャラがしっかりと描き込まれている点です。ゲームのカービィをプレイすると出現する敵モブキャラが、プププランドの住人として存在しています。もちろん、ゲーム内でカービィの友達というか、助太刀だったキャラも登場します。コマの背景とか、主要キャラの後ろにモブキャラが描かれていて、たとえば、冬の場面では、マフラーやニット帽を身につけていたりと、細かく描き分けられています。モブキャラの表情も豊かだし、なんなら話の中心に出てくることもあります。こいつ、こんな名前だったんだ、と知れますし、こいつ、どんな奴なんだろう、と興味が湧いてきます。私は、中途から、モブキャラばっかりに関心が向いちゃいました。カービィとデデデ大王のドタバタは正直、同じパターンの繰り返しなんですね。致し方ないことだと思います。カービィは、バーニング、アイス、スパーク、マイクでデデデ大王を痛めつけるのがお決まりですし、カービィが他人の食べ物を勝手に食い尽くしてしまうのも、いつものことです。それでも、途中で読むのをやめずにいれたのは、細かく描かれたモブキャラがたくさん出てきたからですかね。

24巻くらいから背景、地面、モブキャラの描き込みが少なくなります。ほとんど白地になって、カービィ、デデデ大王、ポピーの三人がスタジオかどっかでコントでもしているかのようになってしまい、プププランドの世界観が消え失せます。一体全体、どうしたんだペポと思っていましたら、そこら辺の事情がウィキペディア(Wikipedia)書いてありました。

『星のカービィ デデデでプププなものがたり 傑作選』 ひかわ博一 小学館

作者による自選の傑作選 全七巻が、新しく出版されているようなので、気になる方はこちらを読んだほうがいいんじゃないでしょうか。

このマンガを読んで浮かんだのは、やっぱり、ホニャララは細部に宿るってことですね。背景、効果音、後ろに映っているモブキャラなんかが、凝った描写をされていることによって、読者が気づかないうちに本人の頭の中に世界観が築かれていくんでしょうね。それが、なにか面白味を感じさせる素地になるんでしょうか。コマの隅々まで見ようとする私にとっては、カービィの口の中にぎゅうぎゅう詰め込まれたモブキャラたちの描写を楽しんで読むことができました。


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