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ギャグマンガ・4コママンガ千冊 65〜77冊目 『行け!稲中卓球部』 単行本 全13巻 感想


『行け!稲中卓球部』古谷実  講談社

93年から96年まで『週間ヤングマガジン』にて連載されていた
『行け!稲中卓球部』(古谷実)単行本を読んだ。

中学卓球部のクソばか集団六人衆+αによる青春お下劣ドタバタギャグ。

連載当時わたしは小学校低学年なので、青春時代にこのマンガを読んでいない。もしわたしが中学生のときにこれが連載されていたら、夢中になって読んでたかもしれない。もちろん、今読んでも、たまにギャグに引いてしまうことがあったが、笑いながら楽しんで読めた。

中学生っぽさ全開のギャグが常に垂れ流されていく。涙、汗、鼻水、血、糞尿が毎話飛び散っていく。汚ない下ネタもジャンジャンいく。正直、女性キャラに対する下ネタで引いてしまうものもある。でも、こんなんで引いてちゃダメでしょ、といった中学生の頃にあった”ビビったら負け”みたいな根性が表れている。同級生とどちらが過激でお下劣なことをできるか、競い合っていく状況ってのは覚えがある。中学時代ってのはそんだけバカだったし、むしろそれを自慢にしているところもあった。そういう中学当時の精神を稲中卓球部はまんま描いてくれていて、自分の中学時代を思い出した。

卓球部の前野と井沢で、ラブコメ死ね死ね団を結成する。イチャイチャしている同級生の邪魔をしたり、野次を飛ばしたりする。バカをやってるオレらは恋愛なんて気にしている場合じゃないよな、といった協定が暗黙のうちに結ばれていてお互い脱退できなくなっている。このあたりも中学生っぽい。ほんとは恋愛したいし、彼女も欲しいんだけど、それを言動に出してしまうのがひどく恥ずかしいのだ。すごくわかる。だから、逆に恋愛をバカにするほうへ舵を切るんだよな。ラブコメ死ね死ね団員となってしまう。

あと、稲中はブスが多種多様に描かれている。美人は正直どれも似たようなパーツなんだけど、ブスやブサイクは異様に凝って描かれている。ほんと様々な顔が登場して、どれひとつ似たブサイクはいない。正直、面白い顔がたくさんある。ブスいじりは、このマンガの連載当時は常套手段だったんでしょうね。今だとなかなか難しそうだ。でも、笑ってしまいます。

稲中のギャグマンガとしての面白さは、キャラの顔芸にあると思う。『マカロニほうれん荘』を読んだときは、アクションや動きがギャグマンガとして面白いなと感じたんだけど、稲中はやっぱ顔だ。顔が面白い。人殺しのような顔とか、恍惚として呆けた顔とか、街中でたまに見かける気持ち悪い人の顔とかが立体的に描かれていて、歌舞伎役者顔負けの顔芸だ。気持ち悪い顔なのに貫禄があるのがいい。前野と井沢が、ときどき『進撃の巨人』に出てくる無垢の巨人みたいになる。もしやモデルでは・・・。

わたしの好きなキャラは田中だ。前野と井沢はまだお下劣なバカを演じている感じがするが、田中は真性のクズだ。田中はホラーなので、怖いもの見たさで関心を惹かれる。身近にそういう人がいるのは嫌だが、遠目で見るぶんには楽しい。田中の怪奇さを目の当たりにするのも稲中の魅力のひとつ。

汚くて、お下劣で、たまに引くこともあったけど、爆笑させられることもあり、爆発力抜群のギャグマンガだった。顔芸を真似したくなる。

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