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マネジメントを学ぶ理由~エピソード4

 セミナーの受け放題

 ちょうどその頃、会社でも社員教育の一環としてセミナー運営会社に会員企業として登録した旨の通知が回ってきた。要するに、セミナーに行けというお達しだった。出勤するのがやっとだった当時、セミナーへの参加は未開の地を開拓するようなものだった。最初の4回は必須とのことで、仕方なく腹をくくって必須のセミナーに申し込んだ。この時はまだ、マネジメントも学べると気づいていなかった。そんな余裕はなかった。ほかの管理職の面々も渋々申し込みをしていた。この時はまさか、この最初のセミナーから半年後には入り浸るように学びに行くとは予想だにしないことであった。

 学がないから、学べていない

 本はほぼ毎日、持ち歩いていた。ドラッカーの言葉も少しづつ覚えていた。だが、実践とは何をすることだろう。一番手っ取り早く効果があるのは、どんな実践だろう。小説のなかでは、部員たちが様々な取り組みをしている。実際の現場では何が出来るのだろう。そんな思いが、ぐるぐると上れない螺旋階段のようにめぐっていた。次の一手が分からなかった。結局、何も学べていないのかも知れないと思った。自分は高卒で学がないから、振り出しに戻るのかと悲嘆にくれてさえいた。秋風が木の葉を赤やオレンジに染めはじめた頃、僕は打ちひしがれながらも次の一手を探そうと、週末に本屋へ向かったのだった。

 働くことを楽しみたい

 「もし~ドラ~」のブームは続いていた。僕は本屋で主人公が読んでいるのはこれ!のポップを目印に『マネジメント-エッセンシャル版-』を一度手にした。パラパラめくり、はっ、として次の瞬間には本を戻した。咄嗟に、これはまだ理解できないと感じたからだ。そうして次によく読まれているという『プロフェッショナルの条件』を手に取った。タイトルにも「はじめて読むドラッカー【自己実現編】」とお墨付きだ。少しページをめくると、僕の内心を読んでいたかのような「いきいきと働くための方法」が目に止まった。高校生の頃にバイトで味わったあの店舗の一体感と上昇感がふつふつと思い出されてくる――東北の片田舎。スーパーのテナントに入っていた持ち帰りの寿司店。数年来ほぼ最下位だった同店が、全国第3位まで浮上したあの経験が脳裏を過った――。僕はこれがいい、と直感的に買って帰った。

 本格的にドラッカーを読み始める

 『プロフェッショナルの条件』は、僕が手にした初のドラッカー本だ。文字通り、はじめて読むドラッカーとなった。日本の読者へというメッセージだけでも、ドラッカーという人はこんなにも日本人に期待してくれているのだなと感じた。これを機に「はじめて読むドラッカー」条件シリーズとも呼ばれる4冊を読み進める事になるのだった――。

つづく

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