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マネジメントを学ぶ理由~エピソード5

 質問だらけ

 ドラッカーを読み始めて最初に気づいたのは、その質問の数だ。大きな問いかけがあり、それを考えやすくするためにいくつもの小さな質問がそこかしこに並べられている。僕はその質問に答えようと、ない知恵をしぼった。自分なりの答えが出るまで考えた。最初のうちは、考えることで精いっぱいだった。当時はまだ服薬もしていたので、進みはイマイチどころではなかった。だが、なぜか読み続けること質問に向き合うことをやめようとは思わなかった。質問と問いに向き合う時間が長くなるに連れて、薬の飲み忘れが多くなり、飲まなくなっていった――。

 かすかな自信

 季節は初冬を迎えていた。耳がおかしくなってから、心療内科に通うまでのことが昨日のことのように思い出される。既に、一年が経ってしまった。だが、不安や恐れはドラッカーの質問に答えることで、何もないと思い込んでいた自分にも答えられるものが在ると実感がわき、かすかにだが自信が戻りつつあった。ゼロではなかったのだ。考え方を知らなかったのだ。要はこういう学びがあると知らなかったのだ。ドラッカーの質問に答えるたびに、自分が何かの本質に迫っている感があった――。それは、今も続いている。どれだけ行こうと、どれだけ時間が経とうと変わらない、この螺旋の社会の中で感じるかすかな自信である。

 読むだけでは分からない

 質問に答えていこうとすればするほど、他にも学ぶ必要があると感じた。これまでの読書の糧もあり、応答できることは昨年よりマシになっているはずだとは思えた。だからと言ってこれだという確信には程遠かった。独学では限界があると感じはじめていた。読むだけでは分からない何かがあると思うようになっていた。僕はネットで調べながら、ドラッカーの言ってることをもう少しわかるヒントはないかと探していた――。

 運命のセミナー

 冷えた空気が厚手のコートを要求し始め、暦は師走に変わっていた。僕がメンタルダウンしたことを真っ先に相談した上司から、急に呼び出しがあった。てっきり、何かしらの次の展開とか心療内科通いの報告でもしなきゃいけないのかと戸惑った。だが、まったくもっての的外れだった。というのも、セミナー受け放題サービスの導入を決めた上司でもあったのだ。そう、話はセミナーに行って学んで来いというものだった。僕はドラッカーを知りたいと自分の意見を恐れずに伝えることができた。咄嗟に思ってたことを言ってみたのだが、セミナー一覧の中にドラッカー講座があると聞き、僕の目の色は変わった。しかし「もし~ドラ~」ブームで予約が取れないとも言われた。が、キャンセル待ちで僕は偶然にもセミナーに参加することが出来た。
 2010年12月8日に受講した運命のセミナーである。
この日から、僕はほころびだらけで独学だったドラッカー流『マネジメント』を本格的に学び続けることになる――。

つづく

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