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マネジメントを学ぶ理由 エピソード6

 自らセミナーへ

 その日まで、僕はセミナーへ行くのが怖かった。まさか、自分から進んでセミナーに行きたいとはどういう変化だろうか。薬も服用しなくなり、確実に何かが変わりはじめていた。バラバラではあるが、散らばってしまったメンタルのパズルは、少しずつ組み直されはじめていた――。
 僕はガチガチに緊張しながらセミナー会場に着くと、席は自由とのことで、遠慮される一番前の席に座った。自分への戒めもあったのだが、せっかく受講できるチャンスだ講師に近い方が聞き逃さないと咄嗟に思ったからだ。

 頭の中が整理されていく

 セミナーが始まり、テキストをめくる。ドラッカーが言った名言が穴埋め形式で書き込んでいくタイプのものだった。講師の話し方が柔らかく聞きやすい。僕はすぐに引き込まれ、テキストに書き込みはじめた。内容は管理職はこのくらいは知っておくといいとされるところを網羅した構成だった。
 書き込むほどに、僕の中で何かがつながりはじめた。そう、これがやりたかったのだ。しっかりと学べることをしたかった。講師の話を聞きながら、質問への考え方=頭の整理の仕方を学ぶことがしたかったのだ。一人では、できないことだ。あちこちに散らかった考え方が徐々にまとまっていくのを感じた。今までより、はっきりとドラッカーの言葉が意味するところがつかめているという確かな手応えもあった。夢中になっているうちにセミナーは終わってしまった。こんなに思い切り学ぶのはいつ以来だろう――。

 分かったことから始める

 セミナーが終了後に、講師のにお礼を言おうと名刺交換させて頂いた。多少の緊張をしつつ挨拶し、「プロフェッショナルの条件」を読んでいると伝えると、次も継続して条件シリーズが良いとのアドバイスを頂いた。実は『マネジメント-エッセンシャル版-』という本はエッセンスが凝縮されすぎてて、ドラッカー初心者には難しいとの事だった。
 先に買ってたら、未だに撃沈していただろうことが容易に思い浮かんだ。そして、別れ際に「今日、学んだことで、分かったことから手をつけてみてください。始めるのは、どこからでもいいんです。分かったことからしか使えないのはドラッカーも言ってますから。」とアドバイスをくれた。僕は自分のどこかで何かのスイッチが入ったのを感じた――。

 目には見えない、ものごとの繋がり

 家に着くと、すでに22:30を過ぎていた。遅すぎる夕飯を軽めにすませ、講座で頂いたテキストを開きながら考えた。
 『マネジメント』ってなんだろう――。もしかしたら、こうして、目に見えないことを、言葉と行動でひとつずつ分かるようにして、次に使えるようにしてくことなんじゃないか?この本やテキストには、実際に分かったことがまとめられていて、使えるようにされているってことじゃないかと。
 僕が欲していたのは、目に見えなくても、理解できて、自然の法則の様に使える考え方だと、ようやく気づいたのだった。熟したリンゴが樹から落ちることを、僕はようやく理解できたかも知れないと感じて身震いした。
 ドラッカーの説く原則とは、そうしたものごとの繋がりを考えて使う手法だった。となると答えは無い。答えよりも大事だから質問が多いのだ。つまり、学び続けて、自分が使えることを見つけて増やしていくこと以外に無いのだ。知ることではなく、何より実際に使えることが大前提なのだ――。

つづく

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