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人気Youtuberに聞く!正規ルート以外を攻めていくキャリア

今回はキャリア編のインタビューです。

YouTubeチャンネル『予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」』にて講師を務め、教育系YouTuberとして大活躍中のヨビノリたくみさんにお話を伺いました!

『予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」』(略称:ヨビノリ)
当時現役の東大院生と東工大院生が設立し、運営しているYouTubeチャンネルです。大学レベルの数学、物理を主とした理系科目の授業動画を配信しています。また、大学院卒である立場を生かし、理系進学を考える高校生への情報提供も行っています。
(公式webサイトより)

ヨビノリたくみさんのプロフィール

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ヨビノリたくみさん
東京大学大学院卒業。博士課程進学とともに6年続けた予備校講師をやめ、科学のアウトリーチ活動の一環としてYouTubeチャンネル「ヨビノリ」の創設を決意。学生時代は理論物理学を専攻しており、学部では「物理化学」を、大学院では「生物物理」を研究。
(公式webサイトより)
YouTube
『予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」』(略称:ヨビノリ)
Twitter
@Yorinori
instagram
@yobinori

YouTubeは科学の啓蒙活動の一環だと思った

ーたくみさん、本日はよろしくお願いいたします! キャリアという切り口で、色々真面目なお話を伺いたいです。

たくみ:よろしくお願いします!

ー最初は研究者を志していたというたくみさんですが、大学院生、特に研究者を目指す道って、大変なことが沢山あると思うんですが、実際その道に入ってみてどう思いましたか?

たくみ:大変さもいろいろ種類があると思うんですが、単純に時間という意味で言えば、社会人と比べれば、時間的に忙しくはないです。ただ成果がでなかったら何にも残らないという意味ではとてもシビアですね。期限的には迫られるものがあるというか。

ー大学院生の一部はバイトができなかったりと、お金の余裕がないイメージがありますが、大学院生の経済事情について教えてください。

たくみ:これはあまり知られていないんですが、実は大学院生たちを救う制度ってたくさんあるんですよ。正しい情報にアクセスできれば、奨学金など使って日本の大学院でも十分に生活を賄えるんです。例えば、奨学金って利子も何もないものもあって。一定の成績を収めさえすれば、返済が全額免除になったり、半額免除になったりするんですよ。
もちろんいろいろ解決すべき点はあるんですけど、補助についての情報を得られずに経済的に辛い思いをしている大学院生はいっぱいいると思います。自分の活動を通じて、そういうところは伝えていきたいですね。

「YouTuberになる」=「YouTubeだけで食べていく」という発想はなかった

ー院生の時にYoutuberとしての活動を始めるにあたって、問題などはなかったのでしょうか。

たくみ:2017年に、学術振興会特別研究員に採用されたんですけど、それだと副業は禁止になるんですね。

学術振興会特別研究員とは...
日本の優れた若手研究者に対して、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与え、研究者の養成・確保を図る制度。(日本学術振興会HPより)

ただ、Youtubeは広告をつけるか、つけないかは自分で選べるので、問題ないと思っていました。
しかも、学術振興会特別研究員って、科学に関する啓蒙活動が推奨されているんですよ。YouTuberはまさにそれだと思ったんです。大学院生でも、ブログとか書いている人はいましたし。それの延長線上だと思っていたので、しれっと始めました。
自分はちょうどメンバーも集まったし、失敗しても、誰にも知られずに終わるだけですし笑。新しいバイトを始めるくらいの心理的ハードルの低さではありましたね。

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ーコンテンツに対する反響はとても大きかったですが、予想していたんですか?

たくみ:最初はある程度見てくれる人はいると予想して始めました。でも、現在のような反響の大きさまでは予想してなくて。
最初は大学生が見てくれれば良いと思っていたし、そこに一定の需要はあると思っていたんです。でも、卒業された社会人の方や進んだ勉強をしたい高校生とか、最初は視野に入れていなかった層の数が大きくて。思ったより大きなことをやれるかもしれないと考えが変わりました。

ーYouTuberとしての活動に舵を切ろうと思ったのはいつだったんですか?

たくみ:一般的に、Youtuberの活動だけで生活できるようになるラインというのが、登録者数10万人といわれてます。
でも1万人行った時に自分はこれで生活できるなと。なぜなら、広告で全額生活費を稼げなくても、これに付随する仕事はできると思ったからですね。
1万人動画を見ている人がいれば、その中でコアな視聴者が1%はいたとして、100人いるということで。例えば、オンラインで家庭教師をやりますといってYouTubeやSNSで発信をしたら、生活は全然できるだろうなとか。

ー具体的にはどういうお仕事が多かったんですか?

たくみ:最初YouTubeだけで食べていけないので、家庭教師をやったり。あとは、企業の方からいろいろ一緒に仕事をやろうと言っていただけたりですね。

ー教育分野ならではのお仕事ですね!

たくみ:ひとつよかった点としては、自分は、YouTuberやるならYouTubeだけやらなきゃいけないっていう感覚がなかったんですよね。だからこそやりがいもあったし、大学院を辞めたり、踏み切るのが早かったですね。

アカデミックな世界との架け橋になりたい

ー結果としては、大学院から離れられていますよね。

たくみ:1年くらいして博士課程を中退しましたけど、自分のYouTubeを想像より多くの人が見ていたこと、そして自分の活動に価値を感じたことは理由として大きいですね。そもそも、大学の先生になることが目標ではなかったというのもあって。科学と研究に関わる仕事をずっとやれたら良いと思っていたので。

ーYoutubeの活動を通じてやりたいことはなんですか?

たくみ:大学の研究を世に広めていくことだったり、難しい理系の問題をわかりやすく噛み砕くことだったり、アカデミックな世界とそうでない世界の架け橋になりたいですね。
あとは、新しいことをやりたかった、唯一無二になりたかったからYouTuberになったっていうのはあります。
やりたいと思った時にはもう止められない性格なんですよ。

ー専門家と世間との架け橋になりたいというお話ですが、専門家とそうでない人との距離感について、マスメディアだったり、SNSだったり、いろんな場所で最近問題が起きていますよね。

たくみ:起きてますねえ。一般の人は専門家を過剰に神格化しちゃっている面があると思います。大学生にとったら、大学の先生は完璧で何も間違えないというイメージがあったりとか。例えばコメントを求められて、「こういう条件があったら、こうなる」と言っているのを、「こうなる」の部分だけ取り上げられて合ってる、合っていないと騒がれたり。
一般の人と専門家のギャップを滑らかにつなぎたいというのは、自分が特にできる部分だと思いますし、基本理念でもありますね。
あと、先生が研究している姿ってなかなか見られないじゃないですか。講義というすごく限られた場所でしか、生徒ですら関わらない。一般の人まで先生たちの知識や研究の成果が届くわけがないなと自分は思っています。科学者と、人々との壁ってすごく厚いんですよ。自分の活動を通じて、大学の先生などのありのままの姿を伝えていけたらなとは思います。
段階的に、まずは理系の大学生からとか。YouTubeで大学の先生たちにいま取り掛かっているものを自分に向かって本気で語ってもらう企画をやったんですよ。その反響も大きかったです。

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ーそういう問題意識は昔から抱いていたんでしょうか。

たくみ:ひとつは、大学の授業を聞いて分かりにくいと思っている大学生を救いたいというのがあって。
もう一つは、大学の先生が何百人単位での授業をしなくたっていいよねっていう。大学の先生のホームは研究だということを伝えたくてやっているんですよ。その二つがずっと根本にありますね。
よく、自分の活動は大学の先生の仕事を奪うものなんじゃないかと勘違いされるんですが、そういう意味では自分は大学と仲良くしていきたいと思っています。

ーYouTuberになってよかったこと、大変なことを教えてください。

たくみ:まず、自分が好きな科学の勉強をして発信するということでお金をもらえるのは幸せなことですね。デメリットとかは今は感じてないですけど、人前に出るということのリスクを常に抱えているという認識はありますね。

ーそのリスクにはどういう風に向き合っていますか?

たくみ:そもそも言葉の攻撃が発生しにくいような環境を作っていくことや、なるべく気にしないことですかね。発信していく上では、編集段階で誰かを傷つけたり、嫌だなと思わせる場面が入っていないかにはかなり注意を払っています。
誹謗中傷は自分の場合テーマがテーマなので少ないんですよ。自分のジャンルの場合、動画見るのにも体力がいるので。ただ、悪口の割合が全体の1%とかだと気にしないままいけるんですけど、これが5%とか10%になってくると、それが全国民の意見に感じられてしまうという感覚自体はわかりますね。誹謗中傷コメント1つの威力は良いコメント100個に匹敵するなと感覚的には思います。
自分は2秒後には忘れるようにしてますし、そういうものが発生しにくい環境づくりを頑張っています。

正規ルート以外の道をガンガン開拓していこう!

ーこれからのキャリアについて、教育という場で広く活躍していきたいといった野望はあるんですか?

たくみ:いやあ、特に大きな野望はなくて。とにかくやってみたいことにすぐ挑戦できる今の環境をずっと保ち続けたいですね。
活動の自由度を保ちたいので、次のステップでもっと公的なことをやるとかはあまり考えていないです。あくまで俯瞰的に自分の活動をみていたいと思います。

ー私たち世代が今キャリアについて考えておくべきことって、ずばりなんでしょう?

たくみ:何かやりたいことがあって挑戦する前に、道のりの長さを想像して諦めちゃうということがあると思うんですよ。
今の時代、ネットで取れる情報もいっぱいあるし、正規ルート以外の道がたくさんあるので、もっと柔軟に考えていいと思っています。
例えば自分の場合、予備校講師としてトップになりたいとしたら、正規ルートだと、予備校に入って長年勤めて実績を重ねていくという本当に長い道のりがあります。でも今はYouTubeがあるんだから、予備校に入らずにトップを目指す道があるんじゃないかと。それを実践しているような感じですね。
U25のみなさんにも今まで歩んできた道があると思いますが、今までこれをやってきたからこの道じゃなきゃダメだ!と思うのは本当にやめたほうがいいと思いますね。歩んでいく道を最終的に正解にしていけばいいというのはずっと思っているんですよね。

ーそのための情報収集はどうしているんでしょうか。

たくみ:SNSの使い方が上手い人が今は勝っている気がするので、そういうところだったり。新しいものが出てきたら、常に触れるようにすることですかね。
TikTokとかもやってみて。やっぱり発信者ともユーザーともジェネレーションギャップがあって最初「うっ」てなりましたけど、これを使わないと遅れるなと思ってやってみたりしました。

ーたくみさんにとってキャリアとは一体何でしょう?

たくみ:すごく難しいですけど、どういう話をしたらいいんですかね(笑)。

ーお話を聞いていると、私たちはキャリアについて結構固定的なイメージを持ちすぎなのかなと思いました。どこかのタイミングで職を得て、その中でポジションを上げていって。人生ゲームの職業カードを新しく引いたらキャリアチェンジで、みたいなイメージを持っている人は多いですよね。

たくみ:多くの人にとってキャリアはどんどんと上に上がる、積み上げていくものだというイメージがあると思いますけど、自分は縦ではなく、横軸にどんどん広げていくやり方だし、そういうのもありじゃないかと。YouTuberも、例えば登録者数だったりとか、やろうと思えばどんどん縦に積み上げていけちゃうんですよ。でも自分は、それなら全く新しい形を実現したいなという気持ちがありますね。お笑いだったり、ミステリーだったり、いろいろ自分自身も好きなことがいっぱいあって。その時々やりたいことに挑戦できるという環境が今は整っているし、かなりハードルが下がっていると思いますよ。

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ー横軸に広げていく、ですか。すごく分かりやすい言葉ですね。既存の価値観にとらわれず、今の環境を生かしていくことが大切なんですね!たくみさん、ありがとうございました!

インタビューを終えて

U25の学生たちに大きなインパクトを与えているたくみさん。その力強さは、純粋に「やりたいこと」にフォーカスしているからこその熱量の大きさからきているのかもしれません。キャリアというものに関して固定観念を持たず、自分がやりたいことを達成するための道のりを柔らかい頭で思い描いてみて、行動してみること。これが大切なのかもしれないと思いました!
ヨビノリたくみさん、貴重なお時間、そしてお話をありがとうございました!

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