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【SOUU コミュニケーターまほの鹿児島訪問記】#003 阿久根市 前編

こんにちは。鹿児島県庁18階コワーキングスペースSOUUのコミュニケーターをやっております門田真穂と申します。

人と人とを繋げるコミュニケーターとして、県庁に訪れていただいた方と鹿児島全体もコネクトしていきたい!そのためにはまず鹿児島を知るところから!ということで、鹿児島県内を訪問し、紹介していく訪問記。

第三弾は鹿児島の北西部に位置する阿久根市です。
SELF理事の一人であり、株式会社下園薩男商店の代表取締役社長である下園 正博さんにお会いしました。
前半では下園薩男商店で取り組まれていることを中心にお伺いしていきます。

まず下園さんと待ち合わせたのは下園薩男商店のメイン工場。創業昭和14年、下園さんのお祖父様の代から続く、イワシの丸干しの製造が主な水産加工会社です。

下園薩男商店

下園薩男商店 外観

現在、下園薩男商店ではウルメイワシ、カタクチイワシ、シシャモ、キビナゴを丸干しとして作っています。そのうちの5割くらいがウルメイワシとのこと。
さっそく工場内を見学させていただきました。その日の朝どんな魚がどれくらい獲れるかによって、その日にすることが決まるため毎日作業内容が違ってくるそうです。訪れた時は、きびなごを並べる作業をされていました。

きびなご並べている様子

大きな冷凍庫にも入らせていただきました。

冷凍庫の中

新物ウルメイワシの8cmのサイズは6月〜8月頃までしか獲れません。それ以降になるとどんどんイワシは大きくなって最大30cmほどになります。サイズごとに獲れる時期が決まっているので、それぞれその時期に1年分加工して冷凍しているそうです。

阿久根市には丸干しを作る会社が10軒残っていて全国的にも珍しい地域。そのため漁師さんたちが丸干し用に朝方4:00〜6:00に「ウルメイワシ」を獲って阿久根にあげてくれます。朝方に獲れるイワシはお腹の中に何も残っていない状態のため、丸干しにしても苦味が少なく食べやすいものになるとのこと。

下園さんは鹿児島に戻ってくる前、東京の水産の会社にいるときから丸干しについて危機感をいだいていました。スーパーの売り場に行っても丸干しを買っていくのは高齢者ばかり。若い人に知られていないと。そこで商品開発に取り組み、できあがったのが丸干しを世界の国々の味をイメージしたオイルに漬けた「旅する丸干し」です。

旅する丸干し

家に帰って「阿久根プレーン」を和風パスタにして食べたのですが、イワシの味が存分に感じられとっても美味しかったです!

商品開発の際に大切にしていること

下園薩男商店で商品開発をする時に大事にしているのは「作りたい想い×地元のもの」。たとえば新卒で入った社員にお任せしてできたのが小魚とナッツのスイーツ「Kots」。ある有名アーティストが大好きな彼女は「食べることでキラキラ輝く女性になる」をコンセプトに開発しました。そのアーティストのCDジャケットを作っている東京のデザイン会社を調べ、代官山にある会社にデザインを依頼したそう。オーツ麦、イワシの煮干し、鹿児島県産の黒糖などを使っています。

kots

下園薩男商店の企業理念は「今あるコトに一手間加え、それを誇り楽しみ、人生を豊かにする」。会社を創業したお祖父様の代から時代に合わせて今あることに一手間加えてきました。2015年には品質管理の世界基準HACCPを取得。現在は魚を海外にも輸出販売しています。

そんな下園さんが2017年にオープンしたのが阿久根市の街中にあり、1階がショップとカフェ、2階が工場、3階がホステルになっている「イワシビル」です。

イワシビル

イワシビル外観
1階のショップ

お父様が2、3年空きビルになっていたところを購入し、そのビルを何に使うかは下園さんに任せられたそう。当時、阿久根に初めて2名の「地域おこし協力隊」がやって来ていて、その2人と一緒にイワシビルを作り上げていきました。
作る際には東京のビルなど様々な場所を見学に行きましたが、阿久根にそれがあってもただお洒落な場所で終わってしまう。地域のものに一手間加えて地元の人が日常的に寄れるような場所にしようと決めました。廃校から椅子や机を持ってきてそれをリメイクしたり、漁船で使われる大漁旗の職人さんにソファを作ってもらったり。備品一つ一つを企業理念である「今あるコトに一手間加え、それを誇り楽しみ、人生を豊かにする」に沿って集めたそうです。

3階ホステル
3階ホステル/部屋内

名物「鯛焼き」どうしてイワシ焼きにしなかった?

1階のカフェではたい焼きがメインメニュー。よく、なんでイワシ焼きにしなかったのかと聞かれるそうですがイワシ焼きにしてしまうと「偽物感」が出てしまうのと、阿久根は鯛も有名ということから、たい焼きにしたそうです。地元の方もよく買いに来てくださるとのこと。私が訪れた日もレジの前に行列ができるほどの人気ぶりでした。

たい焼き

なぜアパレルを手がけたか

またアパレルもやられています。世間で食品への薬物混入事件が騒がれるようになった頃から、量販店から食品への混入物がないように工場にカメラを仕掛けているのか問い合わせが来るようになりました。

そんな環境では従業員も信用されていないように感じてしまう。そこで着るだけでプライドを持って作れるような、テンションを上げて作業できるような服を作ろうと考え、様々な有名ブランドを手がける株式会社和興さんと一緒に作ったそうです。

アパレルライン

イワシビル2号店を作る?

多種多様なことをされている下園さん。今年の8月末か9月頃には阿久根を飛び出し、枕崎に「山猫瓶詰研究所」というお店もオープンします。旧郵便局をリノベーションした建物で、地元で採れる野菜のピクルスなどを販売する予定です。

「東京で新しいお洒落なお店に行ってもつまらない。外側だけ格好良くてもなんでそのデザインにしているのか芯が見えないと感じることが多い。今後はイワシビル2号店ではなく、地方でその地域の昔からある建物や特産品を使ってお店をやるというフォーマットを作りたい。東京ではない地方の山奥で子育てしながら、給料もある程度稼げる。そんな働き方がこれからはいいのでは」とお話ししてくださいました。

イワシビルの前で、下園さんと

前編はここまで。後編ではいよいよ魅力溢れる阿久根市を下園さんにたっぷり紹介していただきます。お楽しみに!

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