【かごしま選手名鑑】#013 鹿児島県大隅地域振興局 水産技師 福留慶さん
鹿児島県庁最上階 かごゆいテラス内の EAT LOCAL KAGOSHIMA ポップアップキッチン初めてのイベント大隅の魚colorの仕掛け人、福留慶さん。
どんな思いで鹿児島の海に向き合い続けているのか、お話を伺いました!
(聞き手: ふるかわりさ)
海に関わる仕事、きっかけは?
母の故郷でもあり、大好きな祖母が暮らす奄美の海が、幼い頃から好きでした。世界中すべての海が奄美と同じだと思っていました(笑)
だからなのか、今こうやって海に関わる仕事に就いているんだと思います。休みの日は(平日の朝も笑)隙あらば海で波乗りをしています。台風シーズンは特に忙しくなります(笑)
どうして県の職員(普及員)という仕事を選んだ?
大学では水産を専攻していて、入学したときは水族館の飼育員を考えていました。
水族館へインターンに行ったりもしましたが、なんだか違うなぁとモヤモヤしていた矢先、決定的な体験が大学3年生のときにありました。
東日本大地震の復興支援ボランティアで、石巻の大指という小さな漁村に1ヶ月、ひとりで飛び込んだ体験です。
漁師さんや水産加工、仲買の方々、そして彼らを支える異業種の方々。水産の現場を、課題を、たくさんの人が一緒に悩み、コーディネートしていく姿がすごく印象的で、僕も鹿児島でこんなことがしたいと感じました。
そして、その翌年に県職員の仕事(普及員)をインターンで体験して、「普及員やりたい!」と強く思ったのです。「公務員」という肩書きや福利厚生、安定とかは全く就職の理由としては考えなかったです。
普及員ってどんな仕事?
県職員(水産職)になると、県庁の水産部署で働く「事務職」と、水産試験場で働く「研究員」、そして各地域の振興局などで現場に一番近い「普及員」の3つの職種をぐるぐる回ることになります。
僕が学生の頃になりたいと思っていたのは「普及員」です。
この「普及員」という職種、実は言葉で説明しろと言われると難しくて、普及員になる前に先輩数名に「普及員って一言で言うなら?」と聞いても、誰も明確な答えを持っていなかったのが衝撃的でした。
いまやっと普及員になれて、最初は業務の幅が広くて確かに言葉で説明するのは難しいと感じていましたが、最近やっと自分なりの答えが出ました。
普及員は「現場のコーディネーター」であると思います。
普及員という仕事の難しさ
学生の頃からなりたかった普及員になれて、現場の課題を見つけて、コーディネートしていく。そんな今が一番充実しています。
やりたいことがやれている。こんな人と出会ってみたかった!と思える人と出会えている。
だけど。「現場の課題」って一口に言っても、実は見つけるのも、取り組むのもすっごく難しくて、一筋縄にはいかないのが現実です。
あちこちの現場に何度も足を運んで、やっとのことで信頼関係ができて、初めて課題が見えてきます。
そこから課題を解決していくための糸口をいかにスピーディーに見出していくか。誰を巻き込んで味方につけていくのか。すごくセンスが問われます。
そして、すごく言いにくいのですが、水産の普及員は1年に最低1つ、報告できる取り組みがあればOKみたいなルールがあるんですが、そこが個人的にはすごく違和感を感じてる部分で、普及員という仕事が言葉で説明しにくい分、評価の指標も設定が難しいんだと思います。
言ってしまえば、例えば4月1日に県庁18階でイベントをしたら、あとの364日は他の課題に取り組まなくてもノルマクリアなのです。それでも給料は変わらない。
そんな、楽ができてしまう公務員らしい一面を捨てて、バシバシ課題にぶつかっていく。
そうすることで出てくる周りとの温度差にもひるむわけにはいかない。3年間で異動だから。その間にやれることにとにかく向き合う。
普及員て、公務員て、難しいなと思います。
いまどんなことに取り組んでらっしゃいますか?
普段やらないといけないオフィスワークを除くと、コロナ禍で滞留した養殖魚を販売するための補助事業や、水産エコラベル認証取得のフォロー、佐多岬でのトビウオすくい網漁体験の立ち上げ、大隅半島の魚を都市部へ販路拡大するフェアの実施、通信会社や航空会社とのコラボで水産流通のDX化検証、漁業者と一緒に食育支援や地産地消イベントの開催、そして未利用魚を提供する場や仕組みづくりなどを行っています。
今後どんなことをやっていきたい?
これを言うと誰かに怒られるかもですが(笑)
実は、僕は「漁業者のために」仕事をしたいとは思っていません。すごく語弊があるかもだけど(笑)
僕は、「海のために」、漁業者と一緒に、分野が全く違う漁業者以外の人たちと一緒に、水産の課題に向き合っていきたいです。
幼い頃から大好きであるこの鹿児島の海でも、ボランティアで行った石巻と同じで、「産地にコーディネーターは必要だ」と気づいたからです。
それは今後、自分が公務員であっても、公務員でなくても、変わらずに目指したいです。
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