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環境学博士に聞く、地球温暖化の話(Vol.2)

この記事は2019年12月のインタビューをリライトしたものです。

前回のお話はこちら↓

地球温暖化。
いろんな意見があるけど、「ぶっちゃけ、どうなんですか?」ということを、ちゃんと科学者に聞いてみたい!
ということで、第53次南極地域観測隊のひさしさんにインタビューをしてみました。

<インタビューした人>
ふるかわりさ:SELF共同代表。

<インタビューされた人>
大岩根尚(おおいわね ひさし):1982年宮崎生まれ。地質学を専攻、東京大学博士号(環境学)取得。南極観測隊として、気候変動に関連する研究に従事。鹿児島に移住し、三島村の役場職員に転身。その後、同村の硫黄島に移住し合同会社むすひを起業。書籍「DRAWDOWN」の翻訳協力・実践支援
・NPO薩摩リーダーシップフォーラムSELF理事
・株式会社musuhi取締
・鹿児島県大崎町「サーキュラーヴィレッジラボ」所長

脱線に次ぐ脱線で、全然温暖化の話にたどり着けなかった前回のインタビュー。
今回こそは、地球温暖化の本題にグググっと入っていきたいと思います。

りさ:ひさしさん、お久しぶりです。

ひさし:こんばんは〜!

りさ:実は、前回のインタビュー、思った以上に大好評で。
みなさん「早く続きが読みたい!」とおっしゃっていました。

ひさし:嬉しいですね。

りさ:で、前回、脱線につぐ脱線で全然本題に入れず、
「地球温暖化が人のせいって、ぶっちゃけ本当なの??」
「めっちゃ人のせいですから!」

という、おーーーーーい!そこで終わるのか〜!
ってところで話が止まっていたので、今日はその辺をずばりお伺いしたいわけです。

ひさし:いいですね。

りさ:でもね、本題に入る前に、まず読者のみなさんと共有したいことがあるんです。

ひさし:おお。何ですか?

りさ:あるとき、ひさしさんが温暖化の話をしている中でね、ポロっと
「僕たち研究者は命をかけて研究してる」っておっしゃった。
実は、その一言で私は改心したんです。
ネット上の素人の意見に振り回されず、もっと素直な心で研究者の皆さんの声に耳を傾けて 自分でも勉強する習慣をつけようと。

ひさし:素敵。
ただ難しいのは、
研究者の中にも温暖化を否定するようなこと言う人もたまにいるんです。
最近はさすがに少なくなったかなと思うけど。

りさ:おお。
では、研究者の間でもまだ温暖化は完全に一致した見解というわけではないんですね?

ひさし:一致していると思いたいんですけど、検索してみたら確かにまだ懐疑派の立場をとってる方もいるみたいで・・・残念。
僕から懐疑派の人たちの意見をみると、そんな貧弱な証拠とか論理でどうして主張できるんだ、、、と思ってしまうレベルのものばかりです、、、。
まともな研究者の間では一致した、と思っていただいてよいと思います。

僕がご一緒させてもらった研究者の方々は、本当に複雑な地球の気候システムを、それこそ命がけで調査・分析されていました。
いまの気候変動に対する理解って、世界中のそういう研究者が紡いできた本当に繊細で緻密な叡智の結晶です。

それに比べると、懐疑派の意見はお粗末と言わざるを得ないです。
ただ、そこそこの科学的な知識や、証拠と論理を読む力、を持ってないと、懐疑論のどの部分が怪しい、ということを見抜くのは難しいこともあります。

りさ:たしかに難しいです。
実際 ある程度社会的地位のある人が温暖化否定してたりするのを見聞きしたりするので。

ひさし:そうなんですよね、、、。
あれってどういうことなんでしょうね。
僕から見ると、真実を明らかにすると言う立場よりは、自分の主張が正しいことにしたいというエゴとか、何か他の理由でがんばってあら探ししてるのかな、と思えてしまってます。

りさ:国によっても その辺の立ち位置や見解に温度差があるように思います。
利権も大きく絡むからかな?

ひさし:アメリカのパリ協定脱退への動きなんかはまさにそうだと思います。
トランプ大統領の支持層に石炭業界がいたりとか。

りさ:そういう意味で言うとSDGs 、よくぞ全会一致で採択されたなと。

ひさし:ほんとに!!

りさ:変な見方だとわかっていますが、各国いろんな「大人の事情」があるわけで。
それをおしてまで 全会一致で採択されると言うことは やはり相当切羽詰まってるんだなと。

ひさし:なんかね、僕あのSDGsの原文の日本語訳読んだとき、泣けましたよ。
人類の叡智が集結されて、本当に素晴らしい世界を目指そうとしている人たちが国連にいる!っていう希望。

りさ:本当によくできていると思います。
大きな地図を手に入れた感覚。
これまとめ上げて、可決に至るまで 本当に想像を絶する苦労があったと思うんです。

ひさし:でしょうねえ…(遠い目)

りさ:なんだか、もう、この感動でインタビュー終わってもいい気がしてきました。
が!
ダメです。
今日こそは聞きたい!

ひさし:笑

りさ:ひさしさん、前回のインタビューで「温暖化 めっちゃ人のせい」って言ってたじゃないですか?
そもそもね、ほんとに温暖化っておこってるんですか?
今日もけっこう寒いし去年もけっこう寒かったですよね。

ひさし:そうですね。
たしかに寒い日もあるし、寒波が、、ってニュースもありますもんね。

りさ:はい。

ひさし:都市部に住んでるとそれほどに感じられなくても、場所によっては影響がめっちゃでてるところもあるんです。

りさ:ほぅ。

ひさし:例えば北極圏。

りさ:暖かくなってるんですか?

ひさし:はい。 2018年10月〜2019年8月の平均気温が、1900年以来の観測史上2番目の暖かさだったみたいです。

りさ:2番目。

ひさし:英語わかんなくても雰囲気でわかると思うんで、↑この動画ぜひ見てみてください。
流氷が70-80%減ってるとか、漁獲量が40%減ってるとか、それによって生態系がめっちゃ影響うけてるとか。
グリーンランドの氷がめっちゃ溶けて、沿岸の高潮の原因になるとか、 永久凍土(permafrost)が融けて二酸化炭素出してるとか。
氷がなくなって、住民の人たちも魚とかアザラシに近づきにくにくくなっているとか。

りさ:みました。
数字が大きくてびっくり。

ひさし:ほんとに。
温暖化によって氷が溶ける、ってことで、氷がある前提の暮らしをしてた人たちは生活環境がめっちゃ変わってるみたいなんです。

りさ:涙。

ひさし:永久凍土融解で、村ごと移転開始、っていうニュースもあります。

りさ:去年、どこだったっけ。
ベネチア?水に浸かってるニュースみました。

ひさし:これ(ヴェネチアの大部分が浸水)ですね?

りさ:はい。
逆に、寒くなっている地域ってないんですか?

ひさし:はい! 寒くなってる地域、あるみたいです!

りさ:あるんだ!(びっくり)
でも、プラマイゼロみたいなことにはならないんですよ、、、ね、、?

ひさし:こちらの記事。
東大の先端研の森先生の成果らしいのですが、ユーラシア中央部では寒くなってるところもあるみたい。

観測された冬(12月~2月)の平均気温の上昇・低下傾向(1980~2014年)。10年あたり何度のペースで上昇・低下しているかを色分けして示している。図の下の横棒にある目盛りが、10年あたりの上昇・低下ペース(単位は「℃」)。プラスの数字(暖色系)が気温の上昇、マイナスの数字(寒色系)が低下を表す。北極海での気温上昇が著しく、中央ユーラシアでは低下している。図中の曲線は、地上気圧の変化を示している。(森さんら研究グループ提供/サイエンスポータルより)

ただ、全体的には赤系の色が多いのがわかるとおもいます。 プラマイゼロ、という話にはならないみたいです。

りさ:「平均気温」というのが、ピンとこないんです。 昨日と今日で5度くらい違うとかザラにあるから。

ひさし:平均気温ね、、、。
1850年ころから地球上のたくさんの場所でずーっと気温測ってきてて、今は何千点かの場所で測ってるらしいのですが、それを平均したのが地球の平均気温。
で、毎年の気温のパターンありますよね。

りさ:うんうん。
この時期からこのくらいあったかくなるとか?

ひさし:そうそう。夏あったかくて、冬さむい、のいつものパターン。

りさ:うんうん。
ありますね。

いつものパターンをずーっと比べてゆくと、それがやっぱり徐々に上がってきてる、ということなんです。
NASAのこの記事の動くグラフがわかりやすいかな。

NASA Earth Observatory chart by Joshua Stevens, based on data from the NASA Goddard Institute for Space Studies.
(クリックすると、リンク先で動くグラフが見られます)  

りさ:ほーーー。

ひさし:で、場所によっては、さっきのアラスカみたいにめっちゃ上がってるところもあれば、ユーラシア中央部みたいに寒くなってるところもある。
とはいえ、全体としてはやっぱり上がってる。
1880年から2012年までの約130年間で、平均気温は0.85度も上昇しているらしいです。
鹿児島もあったかくなってるみたい。

りさ:むむ。
そういえばね、このあいだ、保育園で地元のおばちゃんに煮しめを習うというワークショップをしたんですが。

ひさし:うんうん。

りさ:おばちゃんたちが 昔は 翌朝どのくらい味が染みるかを考えて味付けをして、一晩常温で置いてたけど、今はそれでは腐ってしまうから常温では置けなくなったって。
おばちゃんがお嫁に来た時と今は全然暑さの種類が違うって言ってました。
あぁ、こんな身近な暮らしにも影響出てきてるんだなって思いました。

ひさし:確かに、あったかくなってるんです、鹿児島でも。
これ、鹿児島市の地球温暖化対策アクションプランってやつの図なんですが、

鹿児島市地球温暖化対策アクションプランより

りさ:えええええ?
こんなに?

ひさし:このグラフを見ると、ばーちゃんたちが嫁入りした40-50年前からすると、1.5-2.0度くらいはあったかくなってる。

りさ:うーん。
脱線するけど〜。(←前回脱線しすぎたことを反省している)

ひさし:はい?

りさ:1.5〜2度だったら、昨日と今日の差みたいなもんであんまり気にしなくていいように思っちゃうのです。
素人は。
でも大きいことなのよね。その1度って。

ひさし:おお、、(考えこんでいる)

りさ:、、、、。(反省)

ひさし:まず平均があがる、っていうことの意味ですね。
平均って平均だから、暑い寒いのいつものパターン全体がきれいに底上げされた、ということではないんです。

鹿児島市温暖化対策アクションプランより

ひさし:これも温暖化対策アクションプランからですが、オレンジ色の最高気温の上げ幅に比べて、青色の最低気温の上げ幅が大きいの、わかります?

りさ:おお。

ひさし:1990年頃からは、寒い日でも、あんまし寒くならなくなった、ということなんです。
グラフで読み取ってみると、3度くらいは上がってますよね。だから煮物が腐っちゃうようになったってことじゃないですかねー。

りさ:そっかあ、なるほど~。

ひさし:北極圏とか、もちろん鹿児島でも、平均気温は確実に上がってきてる。
ユーラシア中央部みたいに、一部では下がってるところもあるけど全体としてはやっぱ上がってる。ってことですね。

一旦まとめると。

Ed Hawkins

ひさし:このグラフは Ed Hawkins っていう学者さんが作ったグラフなんですが、1850年代から2018年までの世界の気温の変化を色付けしたものです。
一目瞭然で下の方が赤い。

りさ:えええええええ!
下の方暑い!てか熱い。こわい。

ひさし:そうなんです。
北極圏、赤いってか黒いでしょ。

りさ:はい。

ひさし:場所によって温暖化の幅が違うんですね。

りさ:俯瞰して物事を見るって大事ですね。
あ。
実は、先日。

ひさし:お?

りさ:われら そらのまちほいくえんがジャパンSDGsアワードの特別賞をいただいたのでございます。

ジャパンSDGsアワード表彰式の様子:園代表の園児5歳と保育士

ひさし:すげええええ!SDGsネイティブ。

りさ:こないだ、官邸から持ち帰ってきた表彰状を先生が園児たちに見せたあと、環境の話などをしてくれて。

ひさし:うんうん。

りさ:その時、先生が読んでくれた本の中にあった、ゴミの山の上でたたずむ猿の写真を園児が見てね、「僕がお猿さんになってクリーンアップする」と言ったんです。
クリーンアップって、私たちが開園前からずっと続けている天文館のゴミ拾いのイベントの名前。

ひさし:へええええ。

りさ:この発言。私、本当にすごいことだと思っていて。
例えば今回 table for twoさんがおにぎりアクションでアワード受賞なさってましたけど、地球の裏側の子どもたちにおにぎりを届けたい!って、そう思うことが始まりで そこから どうやったらできるかなって方法を考え抜いてできるわけじゃないですか。

ひさし:うんうん。

りさ:だから ゴミの上の猿を見て 自分がひろう!とまず思えることが素晴らしいと。

ひさし:こどもだからこその柔らかい発想の方法が生まれるんでしょうね!

りさ:そう思います。
それこそ 大人の事情なんて関係ない ストレートな感情と解決法。

ひさし:こども達と一緒に考える可能性!

りさ:SDGs関連の資料とか書籍とか。どれも小難しいじゃないですか。
身近なこと、小さなことの積み重ねが大きなことに繋がるので。
想像力豊かな子どもたちと考えると、大人の私たちにとっても理解しやすいし、日々の行動が少しずつ変わったりする気がします。

ひさし:そうですね。

りさ:こないだね、鹿児島の長島町に遊びに行ったとき、加工場のおばちゃんたちが、今年は海があったかくてテングサが取れないからところてんが作れないって言ってて。
こないだひさしさんのイベントで観たドキュメンタリーでも昆布がとれないって言ってたじゃないですか。

ひさし:はい。

りさ:ユーグレナの寿司の動画。これも「遠い未来の話じゃないんだ」と実感できて、すごく焦りました。

ひさし:うあああ…(観ている)

りさ:生態系って複雑に影響しあってるから、魚の問題だけじゃ済まないですよね。

ひさし:すみません、見入ってしまってました…。
これ、めっちゃ衝撃きますね…。

りさ:はい。 涙

ひさし:それでもこのレポート、プラスチックの影響が考慮されてないみたいですね。

りさ:え?

ひさし:マイクロプラスチックが微生物を脅かしてるって話があって。

りさ:うんうん。

ひさし:ちいさな海の生き物たちにとっては、小さなプラスチックも食べてしまったら消化できないので致命的になってしまうと。
食物連鎖のいちばんベースをささえる生物が死んでしまったら、その上はもちろん生きてゆけなくなる。

りさ:大きな動物も死骸の胃から大量のプラゴミでてきたりしてますよね。

ひさし:はい。そういうニュース、ほんとに多くて…涙
魚たちもそうです。

りさ:、、、、、。

ひさし:寿司が消える日、にはこの影響が考慮されてなさそうなので、実際にはもっと早いかもしれない、と僕は思っています。
思いたくないけど…。

りさ:変えることはできますか?
1日でも遅くすること。
または、できるのであれば、今よりもいい環境に戻すこと。

ひさし:プラスチックを極力使わないようにする、買わないようにして流通量を減らす、つまり売れないようにする。
そして浮遊ゴミとして環境に出てゆく量を減らす。
見つけたら拾う。

りさ:はい。

ひさし:今日ユニクロいったんですけど、レジが紙袋になってました。

りさ:プラスチックバッグ1枚減らしたところでインパクト小さすぎて意味ないという人もいますが わたしは意味があると思っていて。

ひさし:僕も、そういうところから、だと思います!
今の温暖化も、ゴミも、結局は一人一人のポイ捨てとか、無駄遣いの重ね合わせなので、減らすのも一人一人の意識の重ね合わせで解決できるものだと思っています。

りさ:あと、レジ袋有料化しても意味ないみたいな意見ありますが、あれって社会実験としてはかなり面白かったと思っていて。

ひさし:うんうん。

りさ:たった数円課金するだけで、日本中の人がマイバッグを持ち歩くという行動変容を起こせた。

ひさし:なるほど!

りさ:うちの物産館(日当山無垢食堂)で野菜買うと、こんな袋に入れてお持ち帰りいただいているんです。

ひさし:おお。
ほかのお店の紙袋、にシールを貼ってる?

りさ:はい。
お客さんがエコバッグ持参するだけじゃなくて、紙袋や古新聞持ってきてくださるんです。
保育園の先生たちが保護者さんに呼びかけてくれたり、それを受けて自営業をされてる保護者さんが、自分のお店のお客さんに呼びかけてくださったり。
少しずつ輪が広がっています。

ひさし:おお、そういうことか!

りさ:リサイクルの袋でもいいですか?と聞くと「むしろ、こっちの方がおしゃれね!」って言ってくださる方の方が多くて。

ひさし:いいですね!!

りさ:去年のクリスマスの朝刊。
こんな嬉しい記事まで書いていただいたりして。

南日本新聞2019年12月25日朝刊

ひさし:ほんといいですね!!

りさ:なんか あたたかいじゃないですか。この輪が。

ひさし:はい。
あるものを、みんなで大切につかう。意識の輪がいいですね!

りさ:そう。 これ一枚使わなくても co2削減量ほぼ意味ないよ じゃなくて、そういうこと以前に 使えるものを大事に使うという意識が 豊かさそのものだと思います。
大きいことは 小さいことの積み重ねなので、意味のない活動なんてないと。

ひさし:すてき…! そういう価値観を地域で、世界で育みたいですね。

りさ:はい^^

ひさし:昔はもったいない、でみんなそうしてたんでしょうけどね。
僕も、硫黄島のじーちゃんばーちゃんたちから学んでます。

りさ:ステキ。

ひさし:なんか、今回まじめでしたね。

りさ:え?

ひさし:脱線すくなかった感じが、、、笑

りさ:脱線してよかったんですか? (驚)

ひさし:りささんの自由さが抑えられてた気が。笑

りさ:じゃぁ、次回は自由に脱線してみます。笑

ひさし:では、次回は温暖化による影響のところをもう少し詳しく。

りさ:はい。もっと聞きたいです。

ひさし:どんどん行きましょう。

りさ:はい!私ももっと勉強しておきます。
それまでの間も、できることは一つずつ行動に移したいと思います!

ひさし:やりましょう!
では、また!

りさ:ありがとうございました!

((続く))

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