言霊(ことだま)ってなんだろう

ちまたではよく「言葉が人生を変える」とか「マイナスの言葉を使うとマイナスの人生になる」といったことが言われます。

しかし、具体的にどんな風な言葉がどんな風に人生を変えるのか、手取り足とり解説している本や人に出会ったことのある人は少ないのではないでしょうか。

ただ、あまり良くない結果や災いを招いた人の中で、「ああ、あの人はこんな風な言葉をよく使う人だったな」「こんな喋り方をする人だった」と思い起こせる人はいます。

民間の資格団体の社長さんは、取引先や自分の会社の社員に対して「人間のクズ」という言葉をよく使う人でした人種差別的な言葉もよく用いる人でした。結果どうなったかというと、社員がほとんど辞めてしまい、本人も社員から感染症をうつされたり、秘書の女性が多額の使い込みをして失踪したり、奥様とは家庭内別居のような関係になってしまいました。もちろん、散財癖があったり女性に対してハラスメント的であったりする方でしたが、周囲に聞いても「彼のあの口癖はねえ」と口の悪い方からすら指摘されるような方でした。

昔、京都に町家を改造したような感じの素敵な珈琲屋さんを経営している男性がいました。こだわりの隠れ家的なお店らしく、店内での撮影は禁止でしたが、珈琲を写メる客をいつも恫喝まがいの口調で罵倒していました。それだけではありません。グーグルクチコミなどでお店の対応に対して率直な意見を述べるお客を人格的に罵倒するような返信をしていました。結局そのお店はどうなったかというと、町家の店舗を維持できなくなり、また珈琲屋さんとしての評判も維持できなくなって郊外の雑居ビルで細々とウィスキーバーやっているそうです。その売り上げも生活には足りずアルバイトと掛け持ちだとか。

誰だって頭に来たり、他人を口汚くののしりたくなります。人間ですから仕方ありません。どうせこの世で悟ったのはお釈迦様くらいですし。

ただ、この資格団体の社長さんにしても、珈琲屋さんの店主にしても、悪い噂が立ったというだけでないものを獲得してしまったのではないでしょうか。それは悪い意味での「意識の亢進性(こうしんせい)」というものです。例えば誰かを恨んだりののしったりする際、どこかでそれを止めなくてはと思う自分と、さらにその先に進むことである種の快感を感じてしまう自分がいます。邪悪な感情のエスカレーション。そしてそれは言葉や活字にすることでさらに気持ち良くなってしまう。自分の中にある後者が前者に勝ってしまった場合、自分では押し戻しようのない境地に達してしまうのではないでしょうか。

「気が弱くて言いたいことが最後まで言えない」「バカバカしくて怒るのを途中でやめてしまう自分を中途半端だと思ってしまう」という人がいたら、その人は逆に「こちらの世界に自分を引き止める勇気を持っている」のだと思います。もしくは自分の意識を別の方にそらすことのできる言わば「無意識の自己治癒性」に長けた人です。

ちなみに先に述べた通り邪悪な感情は伝染します、中毒性があるので。出会ったら走って逃げましょう。


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