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「劇画」とは何だったのか “大人”に読んでもらうことを目指した漫画の手法

本日7月24日は「劇画の日」という記念日です。

1964年のこの日、劇画漫画雑誌である「ガロ」が創刊されたことがきっかけ……ということになっていますが、まぁ正直「ガロって何?」という人も多いでしょうね。

かくいう僕も「ガロ」という名の漫画雑誌があることを知ったのは専門学校に入ってからのことで、その漫画誌そのものは読んだことがありません。

一応2002年までは刊行が続いたようですが、「本屋にそんな雑誌あったかなぁ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。名だたる作家さんがそちらの雑誌に連載を持っていたものの、雑誌の在り方としてはかなりニッチなものだったと思います。


そんな「ガロ」に代表されるような劇画ですが、そもそも今は「劇画」とそうでない「漫画」を特に区別したりしませんよね。「劇画」という言い方を知らない若い人もいるかもしれません。

「劇画」って一体どういうものでしょうか。

改めて聞かれると正直難しく、単純に「絵柄」では区別できないのではないかと思っています。

コロコロコミックのような子供向け漫画誌で描かれていものがいわゆる「漫画」で、ヤンジャンなどの青年誌で描かれているものが「劇画漫画」かというと、そういうことでも無いですよね。

では、物語性のあるなしで「漫画」か「劇画漫画」かが区別できるかというと、そういうわけでもない。線の密度の少ない絵であってもストーリーのしっかりした漫画はありますし、あえて劇画風タッチでギャグを描いているものだってあります(「北斗の拳 イチゴ味」とかね)。

もう現代においては「漫画」と「劇画漫画」の境界は無いと言ってもいいような気がしますね。

ここまでジャンルが多様化し、色んな絵柄の作家さんが漫画を描いている現代においては、もう全て「漫画」なんだと思います。


元々「ガロ」という雑誌は、それまでの漫画が「子ども向け」とされていたことに異を唱え、「大人向け」を目指して作られたという経緯があります。

そのため物語性のあるストーリーに重きが置かれたものが多くあります。

しかし絵柄と言う面においてはどうでしょうか。

「ガロ」で連載されていた白土三平さんや水木しげるさんの絵は、線もそれほど多くなくわりと「漫画」っぽい絵柄です。

やはり「劇画漫画」かそうでないか、は単純に絵柄で示されるものではないようです。


「漫画」か「劇画漫画」かの境界はほぼ無いと上記では言いました。今あるとすれば「漫画風タッチ」「劇画風タッチ」かという、絵柄の区別の仕方で出てくる「劇画」という言葉くらいでしょうね。

その境界もかなり曖昧になってきていますが。

今ではもう子供も大人も関係なく漫画を読むような時代です。かつて漫画を読んで育ったような人たちが今大人になっているのだから、そりゃ「漫画を読む」ということに抵抗も恥ずかしさもなくて当然ですね。

「世間が認める、大人にも読んでもらえるような漫画を」として「劇画漫画」というジャンルを作った人たちの想いは、結局のところいろんな人たちが漫画を描き、漫画が一つの文化として定着することによって達せられたわけです。

「ガロ」の存在が意味を為さなかったということではありません。

こんな風にいろんなジャンルの漫画誌が出ていることが大事なのです。


「劇画」という言葉はそのうち忘れられていくのかもしれません。

しかし、「漫画は劇画でなければ大人に認められない」と考えられていた時代があったことは覚えておいて損はないかもしれませんね。


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