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ブックレビュー【世界のマーケターは、いま何を考えているのか?|廣田周作(著)】

どこかで聞いたことのようなタイトルで、あまり惹かれるものはなかったのですが、冒頭の数ページでとても共感し引き込まれました。

・SDG'sを掲げている会社って本当に環境やダイバーシティについて責任をもってやっているのでしょうか?
・「何か」をやっている風で表面だけなぞり、SDG’sが自社の製品を売らんがためのスパイスになっているのでは?
・SDG’sの次は「ウェルビーイング」でも掲げるのでしょうか?

全編を通して、知らなかった最新の事例がたくさん紹介されており、興味深いものばかりで一気に読み終えました。単なる読み物の面白さだけでなく、後に調べ考察したいポイントを多く得ることができ、読み物を超える知見を押し広げるとても有益な一冊となりました。

そのなかで面白かったポイントをいくつか紹介します。

「平均」よりも「私」


これまで企業は「みんなが使っている状態」のトレンドを作り出し、さらに多くを巻き込んでいくことが使命で、「有名だから大丈夫」と消費者感じてもらうことを目指していました。

しかし、現在は目まぐるしく多様化した社会・環境・価値観により、「みんながどう思っているか?」より「私がどう思うか?」、公から個へ消費者の思考がシフトしています。

すでに多くの企業が実行しているようなインフルエンサーを囲い込んだり、SNSマーケティングも、手法を変えているだけで「トレンドを消費者に押し付ける」という意味では、本当の意味での「個」の思考ではありません。

「ユーザー(または社会・環境)を主人公にして、企業はどのようにサポートできるか」という視点が大事で、未来を語る企業がブランドストーリーとなり、人々の共感を集めます。

マーケティングは「市場・経済」だけでなくなる


いま社会情勢やテクノロジー、消費者の意識などが急速に変化し、マーケティングの置かれる役割も大きく移り変わっています。

市場は社会がうまく回っていないと成り立たない、さらに社会は地球環境が安定しないと成り立たちません。

世界のマーケターは、環境や社会、教育、メンタルヘルスに対して何ができるかを真剣に考えています。

ソーシャル・マーケティングは、SDG'sのバッヂを付けただけの表面的な味付けではなく、私たちを取り囲む環境や社会、人間に関係する問題を真正面から取り組むことです。

Z世代のインサイト


SNSにより発信やつながりが容易になった反面、コロナ以降つながり過ぎてむしろ孤独を感じるようになり、Z世代(1990~2000年代生まれ)の「メンタルヘルス」の問題が急増しています。

近年欧米や中国では「メンタルヘルス」「セルフケア」を切り口にしたスピリチュアルな製品やサービスが続々と立ち上がり、若い世代の熱烈な支持を得ています(世界の消費の40%がZ世代)

スピリチュアルは昔のオカルト的なものではなく、現在では「広いライフスタイルに関連した知恵」と捉えられています。

現代のスーパースターは、大阪なおみ、ビリーアイリッシュ、BTSなど、弱さや傷つきやすさにオープンであり深く共感できる存在です。

弱者を切り捨てるのではなく、弱さに真摯に向き合うべきこそが強さであるということに、人々が気づき始めています。


「信念」「優しさ」「勇気」が試される時代へ


ブランドが人々から信頼を得るうえで必要なことは、広報活動だけでなく、「信念」「優しさ」「勇気」の感覚がもてるかどうか?

人種差別に抗議して国歌斉唱をボイコットしたアメリカンフットボール選手を起用したNIKEは、多くの人の批判にさらされたものの、結果的にはその信念が人々の強い支持を獲得しました。

これが日本の企業の場合、批判が集まった時点で撤回・謝罪となり、信念が貫けないなのではないでしょうか?
そのようなヌルい感覚では、支持も共感もされません。

モノがあふれ、価値観が多様化したいま、全方位的に認められることは不可能、というより時代遅れ。

「みんなに好かれたい」「こうすればいいんでしょ」というよな場当たり的なことではなく、一部から嫌われようとも、自社の信念を語りストーリーを描けることに、人々は心動かされます。

これからマーケターがすべきこと


「最速」「時短」そんな言葉を多く見かけるようになり、さまざまなツールも登場して、資料作りやプレゼンが無意識のうちに手段から目的に変わっていることを見かけることが少なくありません。

マーケターが本来すべきことは、人々がどんな声をあげているか、しっかり傾聴していくこと。

データは人々が残した行動の結果です。
このデータの元になる人の心にどう寄り添うか、これからのマーケターは視座あげて広く見渡し、人々に対して自分は何ができるのかと深く考える大事になります。

まとめ


マーケティングはついテクニックに傾倒しがちですが、本書ではサーチコンソールやWEB広告など、そういった具体的な手法は一切書かれていません。

マーケターとして、目を向けるべき核心部分を難しい語句を羅列することなく、サラッと軽妙に面白く書かれていますので、スルッと頭に入ってきます。

同じ仕事をするにしても、これらを知っておく知らないかで、あなたの今後のマーケティングが大きく変わってくるかもしれません。マーケティングの視点はマーケターだけでなく、ビジネスに携わる多くの方のチカラとなると思います。


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