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『忘れないように』の裏話① 物語の世界の法則

短編小説『忘れないように』の前編が先日文学金魚で公開になりました。
読んでくださったみなさま、ありがとうございます。いかがでしたでしょうか?

キリスト教の影響を感じた方もいれば、映画『Ghost in the Shell / 攻殻機動隊』の影響を感じた方もいると思います。自分が書いた物語なので、両方あるはずです。

すべての人間に守護天使がいるという考え方は、キリスト教にもイスラム教にもユダヤ教にもあります。

ここでいきなり余談ですが、大天使のミカエル、ガブリエルとラファエルは、この三つの文化圏に共通で、キリスト教徒にもイスラム教徒にもユダヤ教徒にも大切にされています。これはこの三つの信仰のルーツが同じだという証でもありますが、視点を変えれば、これほど大事な共通点があるからみんなでもっと仲良くしましょうよ、と言いたくなりますね。(笑)

天界の使者である天使がずっとそばにいるから、人は一刻も一人ではないと思われています。目に見えない大事な協力者で、人間と天界をつなぐ存在とされています。キリスト教の文化圏に生まれ育つと、天使の話をよく聞かされます。

一方で、『忘れないように』に出てくる天界の話は、厳密に言えば完全にキリスト教的ではありません。

すべての魂が宇宙の始まりに生まれたことや、人間は選んでこの世に生まれるという話は、世界中からの色々な物語によって養われた自分の想像力の産物です。この考え方の根拠を辿ると、プラトンの哲学やドイツ・ロマン派の影響が見つかると思います。物語の都合上このような要素が必要だったので、遠慮なく使いました。

小説や詩が好きな方はよく分かると思いますが、物語は小さな宇宙として考えられます。現実の世界の法則に頼る物語もあれば、独特の法則で動かされている世界を提供する物語もあります。後者の場合、その物語でしか通用しない常識があります。

その物語独特の法則と常識を作り上げる時、一貫性のある世界観になっていればそれで良くて、既存の考え方や主義を気にする必要はないと考えています。

人の心は「るつぼ」のようなものだと思います。生きている間には多種多用な考え方や物語を集めて、すべてを溶かして合成した上で自分の想像力と混ぜて、今までになかったような世界を夢見ることができます。この実感は物語を書く上での醍醐味です。

『忘れないように』の後編は文学金魚で来月11日に公開になります。楽しみにしていただければ嬉しいです。

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