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もはや運用現場だけの課題ではない(運用者・情シス編)

運用チームが一致団結するために、まずは取り巻かれている状況と問題点を明らかにしていく必要があります。

経済産業省が出しているDXレポートの中で「あらゆるユーザー企業が”デジタル企業”に。」という標語があるように、ITはすでに社会インフラとなっています。
そのため、運用現場の課題は、社会全体の課題です。

それぞれの階層における課題を図にまとめてみましょう。

20200510_階層

社会や利用者からの止まったら困るという要望があり、それにこたえるために現場は忙殺されているというのが一番簡単な図式になるかと思います。
ただし、問題はもう少し複雑です。
それぞれの課題をひとつずつ紐解いていきましょう。

1.運用者が抱えている課題

ここでの運用者とは、実際に手足を動かして作業をしている現場の人を指します。

人手不足とコストカットの影響で、ギリギリで運用している現場が多いことでしょう。
そのため、運用作業の自動化や業務効率化は急務となっています。
自動化や業務効率化のために新しい技術を習得していかなければならないのですが、その時間がなかなか取れません。

「忙しい……いそがしい……イソガシイ……ナニカオカシイ……」と呪詛を唱えつつ、なにもできないまま何年も同じ作業を繰り返すことになります。
……あれ……、おかしいな……、身に覚えがありすぎて、なぜだか目から汗が流れ出てきます。


もう一つの別種の問題として、そもそも業務時間内に決められた仕事はこなしているから問題はないと思っている問題です。
私はこれを「問題に気づかない問題」と呼んでいます。

管理職の方から運用改善を頼まれ、現場に「何か困っていることはありますか?」と尋ねても、「あんまり困っていることはないですね」と回答を頂くことがあります。
たしかに業務時間内に作業は終わっているし、大きなミスも起こっていない。
ただ、実際に作業内容を聞いていくと、コピペするだけのような単純作業を繰り返している場合があります。
ツールを導入すれば簡単に効率化できるのですが、ま、契約通りだし、問題が起こってないから、問題はなし! という地点で思考が止まってしまいます。

このような現場に長い時間いると、システム更改ぐらいでしか新しい技術に触れるタイミングがないため、新しいスキルが身につかないという課題があります。

新しい技術を学ぶにあたって自主学習では限界があります。
やる気と根気と、潤沢な時間と少しのお金がある人であれば、自主学習でも出来るでしょう。
ただ、すべてのメンバーにそのモチベーションと環境があるとは限りません。
なので、現場で強制的に新しい技術を試すことは大切です。
また、新しいツールや技術は現場で実際に使わないと、生きたスキルを身につけることが難しい側面もあります。

硬直した運用現場に長くいると、業界から取り残されて浦島太郎になってしまいます。
そうならないためにも、運用現場の改善と、そのためのスキルアップ、そして新たな経験を得るための定期的な現場ローテーションが必要となります。

簡単にまとめると運用者が抱えている課題は以下となります。

・新しい技術を学びたいけど、業務が忙しすぎて手がつかない。
・業務時間内に決められたことはこなしているから問題だと感じてない。
・長く同じ現場にいすぎると新しいスキルが身につかず、新しい現場へ異動することが難しくなる。


2.情報システム部門が抱えている課題

情報システム部門(以下、情シス)も運用者と同じく既存システムの維持で忙しい状況です。
情シスが運用者を兼任している場合もあるかと思います。

上からは、業務を効率化して「本来やるべき業務をやれ!」と言われることがあると思いますが、そもそも情シスの「本来やるべきこと」はとは何なのでしょう?

「私の本来やるべきことは、〇〇です!」と言い切れる人が、どれぐらいいるでしょうか?
おそらくそれは、生きている意味を問われるぐらい難しい問題でしょう。


日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2019」によると、情シス(IT部門)の役割は以下の4つが重点項目となっています。

・ビジネスアイデア創出・企画
・デジタル化を実現する新システムの構想・企画
・新技術・ソリューションの調査・研究
・データを分析・活用しやすい仕組み作り

20200513_IT部門の役割

それに対して、デジタル化の課題は以下の3つが重点項目です。

・アイデアが出ない、具体化できない
・効果の見極めが困難
・社内人材のリソース不足、スキル不足

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……お分かりいただけたでしょうか?

情シスの方々は、運用などやっている場合ではないんです!

外だしできる業務は運用者(ベンダー)へアウトソースして、社内の人材リソースを確保し、課題解決に向けて構想、企画、研究、開発しなければなりません。

しかし、リソース確保に向けて業務をアウトソースしすぎると、今度は運用者のやっていることが複雑に絡み合いブラックボックス化します。
そこへ「運用コストをカットをしろ!」との号令がかかります。

ブラックボックス化した運用業務を把握することが容易でないので、コストカットも容易ではありません。
運用者へお願いしても、先に記載した運用者の課題があるので効率化してコストカットは難しい状態です。
そのために、コストカットのために運用業務分析するコストをかける。という、なんとも奇妙キテレツな業務が発生します。
さらにこれに投資対効果の計算を求められると、コストカットのために運用業務分析するコストが、本当に効果があるかを試算するためのコストが必要になってきます。
はて、さて、つまり、いったい、私たちは何がしたかったのでしょうか?

少し大げさに書きましたが、大なり小なりこのような状況に陥っているのではないでしょうか?
情シスの課題をざっくりとまとめると以下となります。

・ビジネスに直結したシステム企画をしたいが、既存運用に忙殺されている。
・「本来のやるべきこと」をやれと言われるが、「本来のやるべきこと」がぼんやりしている。
・運用者(ベンダー)のやっていることが複雑に絡み合いすぎてブラックボックス化してコストが適正か判断できない。
・とにかく「コストカットしろ!」と言われる。


この状況を打破するには、情シスと運用者はガッチリと共闘関係を結ばなければなりません。
お互いの課題を認識したうえで、お互いにレベルアップしながら対応していかなければ、この無限ループのような状態から脱することは難しいでしょう。

現場レベルの課題は、これでおおむね理解していただけたと思います。
次回は会社、利用者、社会がITシステム運用になにを求めていて、なにを不満と思っているかを調べていきましょう。


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