友のリハビリ旅行
友人はもう長く鬱の薬を飲んでいる。
原因は、友人夫の不倫をきっかけとした様々な事が積み重なって、だ。
刃物沙汰一歩手前の不倫騒動がやっと終わったと思ったら、旦那氏は仕事のストレスでアルコール中毒になった。彼女は日々アル中の相手を。
その間に義父母との同居と介護要請があったりして、苦労の波が次々と彼女を襲う。
当時、友人達はみな別れろと言った。
私もそう言った。彼女がドンドン壊れていっているのがわかったから。
でも友人は、別れない。
「もう夫のことが好きかどうかわからない。でも私はなんだか変な、上手く社会に溶け込めない自分を拾ってくれた、唯一のあの人がいなくなったら一人ぼっちになってしまう気がする。親もいずれ死ぬ。それが怖い。」
当時まだ若かった私はこの言葉を聞いて、何も言葉を返せなかった。
・・・
それから数十年経過した。
結構な年の差婚だったので友人旦那氏は、もはやおじいちゃん。最近は少しだけ立場が逆転しつつあるようだ。
元気が出てきたのは良いけれど、先ずはなんとか我慢できるギリギリ最悪な環境に身を置いて、自分を人に慣らすという、分かったような分からないような理由で、修行僧のような一人旅を始めた様子。泊まる宿はワザとの追い剥ぎクラス。
・・・
あのね、一人ぼっちじゃないよ。あなたのその変な所が、私はずっと好きだった。
一緒にいる時に、もしかしたら刺されるかもしれないなあと思ったヤバイ時期もあったけど、それでもイイやと思っていたよ。友達だしさ。
私も変だよ。また、行こうよ旅行に。
泊まりはそれぞれ好きなホテルでね。