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意地悪なちよちゃん

実家のあるエリアは、町内と校区(学区ともいうのかな)が、入り混じっており、かつ、町内のハズレにあった為か、同年代の子供が少ない場所だった。

そんな町内で初めて、るみちゃんという友達が出来た。とても嬉しかった。
ある日、るみちゃんからちよちゃんを紹介された。その日は3人で遊び、ちよちゃんと一緒に帰った。るみちゃんとちよちゃん。2人も友達が出来て嬉しかった。

でも、ちよちゃんは私に意地悪だった。
るみちゃんとちよちゃん、そして私の3人で遊んでいてもすぐに2対1で仲間ハズレにされてしまう。

るみちゃんは私と2人の時は普通なのだけれど、ちよちゃんが加わると、ふっと空気のような態度になって、ちよちゃん側に立つのだ。

・・・

実家はちよちゃんの家を見下ろせる高台にあったので、ちよちゃんの家の庭で、ちよちゃんとるみちゃんが一緒に遊んでいるのがよく見えた。
卑屈さを覚えた。

ごくたまに、私の家に遊びに来る為、坂を上がってくる2人の姿が見えた時は、嬉しくて自室のカーテンの陰に隠れて素知らぬ顔をしつつ、本当に家に来てくれるのかドキドキしていた。

呼び鈴が鳴ると、友達が遊びに来てくれたという喜びが先に立って、意地悪をされている事は忘れた。

私の部屋で、一言も喋らず漫画を読むだけでも。
お菓子を食べて片付けずに、そのまま帰ったとしても。

・・・

町内のお祭りには、私だけ校区違いなので参加出来なかった。すぐ近くの公園でのお祭りなのに。
陽気な盆踊りの音が聞こえて、提灯の灯りが自分の部屋から見えた。まぶしくて羨ましかった。
るみちゃんもちよちゃんも、いたのだろう。

その後もよくわからない意地悪が続いた。
仲間ハズレは辛いものだ。

・・・

そのうち私は中学生なった。
新しい環境の中で、ちよちゃんの存在はどんどん薄くなり、早々にほぼ関わらなくなった。

中学三年の頃、学校帰りにいきなりちよちゃんに呼び止められ、
「私、引越しするの。るみちゃんをあげる。欲しかったんでしょ」
と言われた。本当に驚いた。
久しぶりに見たちよちゃんは、凄く悔しそうな顔をしていた。

私は絶句しつつ呆れて「別に要らないよ」と言ったと思う。るみちゃんはモノじゃないし、悔しそうなちよちゃんと話すのも、関わるのももう嫌だったから。くるりと背を向けて帰った。

引っ越した日は知らないが、るみちゃんの目が腫れていたので、察した。
るみちゃんとちよちゃんは友達。
私は、友達じゃなかった。わかっていたけど。