見出し画像

通り過ぎていったもの

「しゅごいねえ、パパ」
「あれは、なあに?」
「おおきいねえ」

幼くたどたどしい言葉が、背後から聞こえる。
自然に微笑みがこぼれる。

「おおきいねえ、すごいねえ」と、我が子の言葉に返事をする若い父親の手を、小さな男の子が当たり前のようにつかむ。
父親も握りかえす。

きゅっと胸の奥が痛くなる。
柔らかな幼子。

日常の幸せ。