見出し画像

夜に。

人を呼ぶ時に下の名前、例えば「えり」とか「なつみ」とか気軽に呼ばれるタイプの子がいるとする。
私は、そういうタイプではない。
人好きのする顔ではないからか、取っ付きにくい印象があるからか。昔からそうだ。

・・・

長い付き合いのある男友達だけは、私の事を名前で呼ぶ。両親しか言わない下の名で普通に話しかけてくる。私にしたら不思議に思えるのだが、そういう人なのだ。

父がいなくなって、私の事を下の名前で呼ぶ人が減った。減ったも何も2人だけだが。
母とその友人だけ。

LINEでその事を、友人に何気なく語った。
じゃあ男でそういう呼び方をするのは、俺だけってこと?
まあね、今更だけど。
呼び方なんて、全く意識していなかったよ。

・・・

そうそう、そんなもんだ。
ただ、何となく何かが遠くなり、考えた。


私の名を呼んでくれる人が、1人いなくなった。
そうか。私を「私として」呼んでくれる人は、もう母だけなのだ。じわりと涙が出た。

父がいなくなって初めて泣いた。