関沢の目12

増やしたい「達成の仕事」

4月から「働き方改革関連法」が順次施行されている。その影響もあるのか、今年のテレビドラマは、仕事をテーマにしたものが多かった。ドラマに登場する職業は、総合商社部長補佐、大手ゼネコン社員、事故調査委員会の工学部教授、陶芸家、法医学者、刑事、経理担当、シェフ、外科医、副操縦士、アニメ制作者、企業ラグビー部ゼネラルマネージャー、救急救命士など多彩。多くのドラマにおいて女性が主人公であることも注目される。

9月に発表された労働経済白書は、人手不足の下での「働きやすさ」と「働きがい」を取り上げた。「働きやすさ」は、客観的な労働環境で決まる部分が大きい。「働きがい」は、主観的な達成感と関わる。仕事の対価である収入は、両者の根底を支える。「働きやすさ」と「働きがい」の程度によって仕事の様相は変わる(図参照)。働きやすくもなく、働きがいも見いだせない場合は「我慢の仕事」。労働問題の多くは、この象限で発生する。労働環境が厳しくても、働く意味を感じられる場合は、「責務の仕事」。働く条件は悪くないが働きがいを見出しにくい場合もある。家事や定型化された「日常の仕事」が該当する。働きやすく、働きがいもある「達成の仕事」は、恵まれた労働と言える。

ちなみに「今、自分の望む仕事についていると思う」人の率は、女性の場合、33・5%(1998年)から37・6%(2018年)に上昇。だが、同じ20年間で男性は、43・5%から38・1%へと低下した。(博報堂生活総研「生活定点調査」20歳〜69歳)。「我慢の仕事」を「自分の望む仕事」とする人はいないはずだ。一方、つらくても「責務の仕事」を望む人は存在する。また「日常の仕事」で満足する人もいる。しかしながら、今後、この国が永続的にイノベーションを生み出していくには「達成の仕事」と呼べる職域を拡大していくことが重要だ。テレビドラマでも、創造的な「達成の仕事」を描く作品がもっと増えて欲しい。


日経産業コラム(2019.12.20)

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