「負けヒロインが多すぎる!」6話 きっとそれは青い春なんて清々しいものじゃなくて
「負けヒロインが多すぎる!」1話の感想で、「たまにはちゃんとした愛の話を見たいし、それが期待できるな、と思った」と書いた私でございます。
6話を見て確信しました。
これは愛の話だな、と。
6話で完全な負けヒロインになった焼塩さんは強い子です。最後まで泣きませんでした。声優の若山詩音さんの泣くのを我慢しているような演技が胸に刺さりました。
でも、恋愛で勝つのは、焼塩さんのように、強くて、まっすぐで、優しい人ではないと思うのです。
勝つのはエゴを貫き通せる人。ずるいくらいに。そう、焼塩さんのライバル、朝雲さんのように。
きっと恋愛に限らず、幸せを掴むにはずるくて自分勝手なのが正しいのです。
そして、この作品では、勝った側が、敗北者を気遣うほど敗北者が惨めになる残酷さも描きます。
そんな現実の悲しみを、キャラに叫んだりさせないで描くのがうまいと思います。
そして、主人公の温水君は、傷つき逃げ出すしかない焼塩さんを追いかけます。
温水君は優しいです。彼は自分を背景キャラだと言う回避性パーソナリティだけれど、いざという時に優しさで動ける人間です。
小鞠さんが負けて一人で線香花火をしているとき、寄り添ってあげたり、八奈見さんを選ばなかった袴田君の言い分に対して、咳き込むほど必死に八奈見さんの想いを守ろうとしました。
これは友情でもなく恋愛でもなく、隣人愛なのでしょうか。
なんにせよ、性愛よりも尊いものに思うのです。
だから、状況としてはハーレム状態なのでしょうが、それは彼がモテるからではなく、いつだって安心を提供しようとしてくれる良い隣人だからです。
負けヒロインが敗北を噛み締める時、夏雲が背景にあったりします。
そんな敗北者を見守り、寄り添うのは温水君です。
自らは友人と呼ぶほどに近しい人とは思っていないのに。
人生には勝ち負けがある
エゴイストでなければ勝利者になれない
勝利者が敗北者を気遣うほどに敗北者は惨めになる
こんな現実を大笑いしながら見せてくれるスタッフの手腕と努力に感謝です。
散々笑わせていながら、この作品が描いているものは、青い春なんて清々しいものじゃなくて、もっと熱くて激しくて悲しい、幸せになれない優しい人たちの現実への憤りなのだと思います。
以上、「負けヒロインが多すぎる!」6話までの感想でした。