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私的推薦盤~Steely Dan 『Everything Must Go』

 最近、妙にミュージシャンが亡くなるような気がする。昨年小林信吾というキーボード奏者が亡くなったし、ついこないだは村上ポンタが亡くなった。なんともやるせない気持ち。そういえば今回採り上げるSteely Danもウォルター・ベッカーが2017年に食道がんで亡くなったんだっけ。
 というわけで、今回はドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの二人が中心となって活動を行っていたSteely Danの『Everything Must Go』(2003)を採り上げたい(ベッカーが亡くなったからといってSteely Danが無くなったわけではないけれども)。

 Steely Danと言うと語りたい人はたくさんいるだろうから、私の方ではあんまり言わないでおこう。だってさ、そんなに知らないから。ただ、ひと言言いたい人の気持ちもわからなくもない。と言うのも、息子が好きで読んでいる漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の「スタンド」とやらに「スティーリー・ダン」っていうのが出てきて、息子がわけもわからず興奮しているのを私と妻が「そこへ座れ」と言って、本物のSteely Danのことを語って聞かせたことがあるからだ。その時の息子の顔ったら……。そのときの息子の顔を思い浮かべると、私がその立場になるのは御免こうむりたいわけで、だったらあんまり語らない方がいいというものだ。
 結成の経緯とか活動の詳細は触れないでおこう。それに私だって、妻から教わって初めて知ったわけだから、大したことを知っているわけではない。それに代表作となると『Aja』(1977)とか『Gaucho』(1980 )あたりを出してくるのかな。それなのにあえて最後のスタジオアルバム『Everything Must Go』を出してくるわけだから、生半可なことを言おうものなら炎上必死なのは目に見えているのである。

 とはいえ、私はこのアルバムがとっても好きなわけで、特に「Godwhacker」がたまらなく好きなのだ。何がいいって、とにかくシンプルでタイト。余計な音作りが一切ないのがいい。聞くところによると、今やデジタルマスタリングが当たり前のご時世にあえてアナログでマスタリングしているっていうんだから、とにかく音にうるさい御仁だということがよくわかる。そんな二人が作る音となったら、虚飾は一切排してしまうだろうということは容易に想像できる。逆にシンプルすぎて、ある程度の許容力や音楽経験(この場合は聴いた経験)が無いと理解が難しいかもしれない。かくいう私も「Godwhacker」以外の曲は、何度も聴いているうちにジワジワきたのだから。

 ドナルド・フェイゲン自身はボーカルをやりたがらなかったというのだが、やっぱりSteely Danのボーカルはドナルド・フェイゲンになるだろうと思う。違う人に歌わせたこともあるようだが、フェイゲンじゃないとねぇ、と思ってしまう。
 ウォルター・ベッカーが2017年に亡くなった時、その10年前の来日公演に行っておけばよかったと私も妻も後悔した。とはいえ、一人4万円はねぇ……。外タレはチケットが高いとは言うけれど、そんなに高いのってオペラぐらいしか知らなかったものだからさすがに手が出なかった。だけど、ウォルター・ベッカーがいないSteely Danなんて、と考えるとそれもまた何とも言いようがない気持ち。やっぱり生で見たければチャンスがある時に足を運ばないとだめなのかもしれない。
 なんて書いていたら、ジャンルは全然違うがT-SQUAREのキーボード奏者だった和泉宏隆も亡くなったという知らせが……。う~ん、悲しい知らせはもういらない……。



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