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私的推薦盤~King Crimson 『The Power to Believe』

 キング・クリムゾンと言えば、だいたいが『In the Court Of the Crimson King』(1968)が代表作として紹介されることが多い。それなのに「なんで最後のスタジオ録音アルバムをだすか?」というブーイングが聞こえてきそう。加えて、今回採り上げる『The Power to Believe』は、ファンの間ではあまり評判がよろしくない……。う~ん、だんだん自分でもこれでいいのか少し自信がなくなってきた。

 まぁ、この際「私的推薦盤」ということだから許してもらおう。なんといっても、私はここからキング・クリムゾンに入ったのだから。「えっ? マジで?」というファンの驚きの声が聞こえてきそう。知らんがな。そういう人だっているんだから。だって私は根がフォークなもので、ジャケットで『In the Court Of the Crimson King』のことは知っていたが、フォーク好きの中学生からすればまずそこへは行かない。加えて、ジェネシスだとかイエスだとかを聴いていたこともあるのだが、プログレッシブ・ロックの代表格の一つだということも知ってはいたものの、なぜか縁がなかったのだから仕方がない。だいたい若いころは赤貧の日々。買えるCDにも限りがある。ようやくCDを1枚買うのにそれほど勇気が必要なくなったころに店頭に並んでいたのが『The Power to Believe』だったというわけだ。
 まぁとにかくジャケットにびっくりして、おまけに試聴ができるという時代になっていたこともあって私はキング・クリムゾンの扉を開けることになったわけだ。そこで「Level Five」という2曲目を聴いて度肝を抜かれたのである。まぁかっちょいいのなんのって。なんか暗ぁ~い感じもいい。ギターの音もヘビーだ。当時私は33歳。オッさんになってきたころだ。だんだん音楽も静かな方へとシフトしようかと言うときに、「歳でサウンドを決めるなんざぁ、軟弱だ!」と怒鳴りつけられているような気がしたのだ。だから買った。ホント、衝動買いに近い。なぁんもキング・クリムゾンのことなんて知らなかった。知っていたのは名前と『クリムゾン・キングの宮殿』のジャケットだけ。いやはや無知って怖い。
 だがここからドはまり。次から次へとキング・クリムゾンのアルバムを買っていって、気がつけばスタジオ録音アルバムは全部手に入れていた。何かを語れるほどのものがあるわけじゃないけど、とにかくすごい人たちというのはよぉくわかったのである。
 なにせ自称ベーシストなもんで、本来ならキング・クリムゾンとなればロバート・フリップのギターがメインなのだろうが、私はやっぱりベースに耳がいってしまう。そうすると、トレイ・ガンなる人物の「Warr Guitar」というのが気になって仕方がない。調べてみれば「タッチ・ギター」なるもののようで、最初はChapman StickだったものがWarr Guitarにかわったらしい。Stickの存在は知っていたものの実際は初めて聴くようなもので、これまた新鮮だった。
 とにかく全体を通して重厚。変化、変容を求めるファンからすれば前作の『The ConstruKction of Light』(2000)から何にも変わってねぇだろ、という感じのようだが、私にとってはこれが初めてなので、ほんとビックリしたし、衝撃的だった。加えてワールドツアーの日本公演にまで足を運んでしまったりして、ホント一時期はキング・クリムゾンにドはまりしたわけである。加えて、ボーカルは必要な曲だけ入れる、というのも私好みである。エイドリアン・ブリューが歌っていることを知るのは、ちょっと後のことだったけれども(最初はフリップが歌っているもんだと思っていた)。

 ちなみに、『Discipline』や『In the Court Of the Crimson King』も後から買って聴いてみて、すごい良かったし、今でもファンを続けている。とはいえ、さすがに最近はみんな年を取ってきて、もう厳しいのかなぁ、と思っていたら、ロバート・フリップのYouTubeの動画「Sunday Lunch」での姿を見て、ちょっと安心している私もいる。この動画には一時期「夫婦漫才」という邦題がつけられていたわけだが(今はあるんだかどうなんだか……)、それにしても「夫婦漫才」なんて、すごい邦題をつけたもんだ(笑)奥さんの服装に目が行ってしまって仕方がないのは、私がオッさんである紛れもない証拠である。


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