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50の手習い(EWI奮闘記)~Ⅷ.初めて人前で演奏する(後編)

 さて、職権乱用ってわけじゃないですが、 EWIを初めて人前で演奏するのを勤務校の文化祭と決めて、そこまでの練習にはとにかく熱を入れました。文化祭は10月だったんですが、そこまでは練習時間を特に増やしたわけでもなく、ルーティーンのように毎日淡々と寝る前に練習したわけです。でもやはり目標があると上達が早いのは本番が近づくにつれて実感しました。

 さて、私は勤務校で軽音楽部の顧問をやるようになって4年目なんですが、それまでは好きなことは仕事にしたくないということもあってクラブ顧問は運動部がメインでした。しかしとうとう逃げられなくなって軽音楽部の顧問をやることになったわけですが、軽音楽部の顧問をやりたくなかったのにはもう一つ理由があります。それは「生徒のやる気」です。表現したい、発表したい、上達したいという思いがあるからこそ成立する部活なので、やる気がない生徒にはいてほしくないという思いがあります。こんなこと言うと教員失格と言われそうですが、軽音楽部という部活に関して言えば、「音楽を楽しむためには頑張って練習する」という姿勢なくしてはダメだと思うんです。そういうわけで活動状況が芳しくない生徒とは話し合って退部するか継続するかをはっきりさせ、かなり部員を整理しました。やる気があるならば演奏できる環境を整えてやろうと、それまでの顧問たちは文化祭のたびにお金を出してレンタルしていたPAを、備品として整え、楽器も補充。発表の場も年に一度の文化祭だけではダメと、二か月に一回のペースで「部内発表会」を開催。今の生徒は厳しいことを言うとすぐ凹むので、励ましながら改善点を指摘するなどして全体的なレベルアップをはかってきました。それまでの軽音楽部というと、年に一度の文化祭の発表で演奏するバンドが1つか2つ、レパートリーもそれぞれ1曲か2曲という体たらく。それをなんとか改善し、最低でも1バンドが3曲以上は演奏するというノルマを課しました。結果としてコロナ前の文化祭では5バンドがそれぞれ4曲ずつ演奏するというところまでこぎつけ、顧問としてやれることはそれなりにやってきました。

 ただ一つ、顧問としてやっていないことがありました。それは、「顧問自身が演奏する」ということです。時々生徒たちとセッションする時にベースを弾いて見せることはあったのですが、ライブとなればまた話は別です。適当ではすまされません。日に日にプレッシャーが強くなってきます。しかも初めてやる楽器ですからそのプレッシャーたるやなかなかのものです。ですが、この歳になるとそういうプレッシャーというものともかなりご無沙汰でしたので、悪い気分でもありません。

 そんなわけで、文化祭前日にセッティングをしたわけなんですが、ここで困ったことが発生しました。PAのセッティングはもう問題なく私ができるわけなんですが、そこにEWIをつないだ時に、思った以上にレイテンシー(音の遅延)が発生するわけです。イヤーモニターでモニタリングすればいいのかもしれませんが、それにしてはちょっとひどい……。リニアに音が出ないので、異常に息苦しく感じるわけです。これはまいった、ということで、もうこれはPAには直接つながず、返しに使うことにしていた練習用の簡易PAにつなぐことにしました。一人で演奏しますので、これでもまぁなんとかなるわけです。しかしこのレイテンシーは今後何とかしなくてはならないという課題が一つできました。

 セッティングも終わって、生徒を帰した後に同僚3人にお願いしてゲネプロをやってみました。同僚の一人はチューバやユーフォニウムで市民オーケストラに入っているくらいの人で、吹奏楽部の顧問でもあります。時々卒業式などの吹奏楽部の演奏にベースとして参加することを依頼されてきたこともあってゲネプロに参加してくれることを快諾。もう一人は音楽の教員、最後の一人はクラリネット歴10年、EWI3030も所有しているという教員。ゲネプロに参加してくれる人たちとしてはこれ以上ない感じです。

 とりあえずやってみると、吹奏楽部の顧問からは「ものすごく練習したんだなぁという印象しかありませんね」とお褒めの(?)言葉をいただきました。音楽の教員もクラリネット奏者なわけですが、EWIに興味津々のご様子。EWI3030を持っている教員からは、「1年でそこまでできるようになるもんだっけ?」と、これもまた好印象のご様子。ゲネプロはまずまずでした。

 本当ならここに演奏の映像を載せたいところではあるのですが、私としては「まだネットに公開できるほどではない」という思いがあるので載せることは控えます。しかしこの感じで当日もやれるか、と思いきや……そうはいかないんですねぇ。

 と言うのも、軽音部の演奏が終わってから私のステージになるわけなんですが、満員だった観客は潮が引くように出て行ってしまい、残るのは5~7人程度(笑) まぁ緊張しないからいいかぁ、と気を取り直して演奏するんですが、なんと用意していたアンコールをやる必要がないという惨憺たる状況でした(苦笑)

iPadでMP3のカラオケを流し、向かって左のオーディオインターフェースをミキサー代わりに使用しています。

 2日間で合計3ステージやったわけですが、そのいずれでもアンコールは無し(笑) まぁこんなもんでしょう。ただ私はアンコールを求めるために物欲しそうな顔で立っているのもイヤなので、一度退場したのがよくなかったんだろうなとは思います。でもまぁ、「1年(正しくは10か月)でそこまでできるようになるもんなんですか?」という言葉をいくつかいただきました。

これは2日目

 うれしかったのは、2枚目の画像で私の真ん前に座っていた小さい子から「すごい!」と言う言葉をいただいたことです。このお子さんは、元同僚のお子さんなんですけど、元同僚(右隣)からも「ホントに10か月なんですか?」と言われました。ちなみにこの元同僚、女性ですがドラマーでして、かつてちょっとだけバンド演奏を一緒にやったことがあります。今はすっかり肝っ玉母ちゃん(失礼!)ですが、見に来てくれたことが本当にうれしかったですね。

 と言うわけで、私のEWIを使った初めての人前での演奏は終わったわけなんですが、もうちょっと観客がいたらどうだったんだろうと思うのと同時に、無事に終わってホッとしたという思いもあります。演奏が途中で止まってしまうこともなく、致命的なミスをしたわけでもなく、ただクオリティーは思ったほどではなかったものの、聴けないほどでもないというものは保てたかなぁと自負しています。つくづく「練習以上のことを本番で出せることはない」というのを痛感します。

 さて次の目標は……となるわけなんですが、お披露目ライブ(?)から2カ月強経った今もまだ明確な目標はできていません。ストリートライブというのも考えてはみたんですが、さすがにストリートライブをやるには力量がまだまだだなぁという感じなので、のんびり次の目標を考えていくことにします。ただ、来年度以降はちょっと忙しくなりそうなので、来年の文化祭でやれる可能性はちょっと低いのです。まぁそれもあって今年頑張ってやってみたというのが本当のところなんですが、続けていればまた新しい目標もできるでしょうから、毎晩の練習は欠かさないことにしています。

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