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私的推薦盤~伊豆田洋之『Dreams』

 最近歳をとったことを実感する。昨日めでたくなく53歳になり、自分の歳をまた思い知らされた。歳をとるとどうしても懐古趣味が出てくるというものだ。学生時代の恩師が、「学べば学ぶほどどんどん古い方へと向かっていく」とおっしゃっていたが、私の場合は不真面目なせいか古いものを追求していくようにはあまりならないようだ。いかん、もっと探求心を持たなければならない。

 とはいえ、今回も懐古趣味から一発いってみたい。それもマイナーなやつを、である。今回は伊豆田洋之の『Dreams』(1992)である。「えっ? 誰、それ?」という人もいるだろう。そりゃそうだ。実力派だったと私は思っていたけれど、知名度の点では残念ながらちょっと芳しくなかったからだ。それからずいぶんと経っているんで、今ではどれだけの人が知っていることやら……と思うわけだが、堅実にライブ活動を続けておられるようでうれしい限りである。

 出会いのきっかけは、稲垣潤一のアルバムで「風になりたい夜」という曲を聴いたことにある。この曲の作曲が伊豆田洋之で、なんかすごく印象深かったのである。「いい曲だなぁ~」って思っていたら、そのすぐ後、当時ミュージック・ビデオを流す番組で彼のバージョンである「迷路」が流れたのだ(タイトルと歌詞の一部が異なっているだけ)。「こっちの方が自分の好みかも」と思ったのが出会いのきっかけなのである。

 とはいえ、アルバムを買うお金がない若いころ、彼の音源を手に入れる機会はホントに訪れなかった。だからずっと気にはなっていたものの聴けないままだったのである。カラオケとかには「迷路」は入っていなくて、「笑顔ひとつぶん」という曲が入っていることが多いわけだけれども、こっちの方はよく知らなかったので残念な思いだった。

 ある時中古CD売り場で『Dreams』を見つけて買ったところ、「迷路」が入っていた。これが良かった。なんて言ってもアレンジがいい。セミアコースティックのギターだろうか、それだけで歌い上げ、後半になるとソプラノサックスが入ってくるだけというシンプルなもの。だがこっちの方がすごくいい。試しに最初に出た方のアルバムも(中古で)買ってみた。やっぱり『Dreams』に収録されているバージョンの方が私好みである。積年の思いというとちょっと大げさだけれども、気になっていた曲が聴けたというのはとても幸せなんだと実感した。動画サイトにはオリジナルバージョンの方があったので、ぜひお聴きいただきたい。

 ちなみにこのアルバムは「バラードセレクション」となっていて、全編しっとりとした曲だけで構成されている。休日出勤した時に職場でこっそりかけていたら、たまたま居合わせた同僚が「なんかいい曲だねぇ」と言ってくれて私はほくそ笑んだ。そう、いいものはいいのだ。その後に、「これ、誰?」と続き、名前を言うと「知らねぇなぁ~」と続くのが残念でならないのだけれども……。

 今はビートルズやビリー・ジョエルのカバーなどでライブもやられているし、ゆったりとしたペースでアルバムも出されているようだ。おそらく実力が認められているからなのか、共演歴も豊富なようだし、作曲能力も認められているようなので、着実に活動できるのだろう。還暦を過ぎてもしっかりと活動されていることがわかり、インターネットがあってホントよかったと実感する。ただもうちょっと知られてほしいなぁ~と思わずにはいられない。

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