あの日のドキドキを共有したい!日本酒に恋したライター関友美【みんなの日本酒】
ファッション誌にある「かばんの中を見せてください」とか「メイクポーチ公開」という企画が昔から好きでした。芸能人でもモデルでもない、誰かわからない素人が薦める「推し本」「推し映画」のコーナーにかつて夢中になったものです。
最近「日本酒は好きですか?」と聞くと「詳しくはないのですが…」という答えがよく返ってきます。シンプルに「好きです!」と答えられない環境があるのでしょう。ちょっぴり背伸びするべき憧れの領域は残しながらも、余計なハードルを取り除きたい。そんな思いでこの企画をスタートします。
※2020/04/27掲載記事の転載です。
「あの日のドキドキとワクワクを共有したい!」
関 友美(せき ともみ)
職業:日本酒ライター、コラムニスト、フリーランス女将、「播州一献」の中の人
誕生日:1月19日
おうち:東京
出身:北海道札幌市
日本酒のDNA~好きになったきっかけ
北海道で日高昆布をしゃぶって育ち、ススキノがわたしを大人に導きました。当時は日本酒も飲んだけど、テキーラばかり飲んでいました。
札幌の地酒「十一州」「雪ふるる」を「おいしいな」って言ったのを覚えていてくれた母が、上京後お金がなくてはじめて帰省できなかった2009年の年末、アパートに送ってくれた思い出があります。(母は地元で完全予約制の日本食料理店を夫婦で営んでいるので日本酒に詳しいが、わざわざ地酒を選んで送ってくれた)
その後、「十四代」「醸し人九平次」を飲み感動し、「木戸泉AFS」「花陽浴」で多様性を覚え、地酒専門店を教えてもらうとドキドキしすぎて、走って買いに行くほど。少女漫画のあれです。これはもう、恋でした。そして長野県の酒蔵見学にいったことが決定打に。特にたったひとりで酒づくりする「笹の誉」を目の当たりにして覚醒。
ブログに綴りながら酒場や酒屋をめぐり楽しんでいると、居酒屋で若い女性が日本酒を飲むというだけで、いやらしい顔で「ふーん、日本酒飲むんだ。いけるクチだね~」と言いながらマウントをとってくる「日本酒うんちくおじさん」の存在にとても苦しめられました。自由を勝ち取るために、また人に紹介するために「日本酒に関わる仕事でお金をもらいプロにならなくては」と神田の日本酒BARで働きはじめます(もちろん「もっと知りたい」というワクワクした気持ちが先でしたが)。
メーカーのバックオフィス職(経理、総務、人事など)に就いていたわたしは、週3日終電まで働き、残り2日は定時であがりダッシュで神田に向かう生活。その甲斐あって、店のみんなや常連さんたち、酒蔵のかたに酒屋さん…すてきな人たちと出会うことができました。味わい、人情、微生物が生み出す神秘、技術や文化…日本酒の魅力に憑りつかれ、現在にいたります。
おうちの日本酒
「上川大雪」設立時のクラウドファンディングのお酒と「播州一献」が多め。あとは2019年一番衝撃を受けた「自然郷キュベ」、「龍力」の出す別ブランド「美酔香泉」など。かつて専用冷蔵庫を買ってまもなく壊れたのに懲りてからは、家庭用冷蔵庫をつかっています。コレクション趣味はないのですが、飲むのが追いつかずこの状態。
日本酒のおとも
「好きな人」
ひとり酒も好きですが、好きな人の顔を見て安心しながら笑って飲む日本酒が大好きです。だからはじめての店も楽しいですが、友だちや知り合いの店にしょっちゅう一人でいるタイプです(笑)
死ぬ前にのみたいあなたの1本
▲フィレンツェSAKEにて
「播州一献」
2018年11月10日から「播州一献」で蔵人として、酒づくりを通して蔵での暮らしを深く体験させてもらいました。11月8日思いがけず酒蔵が火災に遭い、大変な状況でしたが復旧作業から情報発信、酒づくり…蔵と苦楽を共にしました。その後も「播州一献」の人間としてイベントや営業などに関わらせていただき、ライターの仕事では出会えない、さまざまな人とのご縁をいただきました。
お酒が飲みたくなる一曲
Miles Davisの「It Never Entered My Mind」
歌謡曲が大好きだけど、それ以外でのお気に入りは、以前連載していた日本酒の短編小説「あなたの隣で呑むお酒」のなかでも登場させた、ついつい深酒してしまいそうな一曲です。
あなたの愛用品
「津軽びいどろの酒器」「オリンパスVP-15(ボイスレコーダー)とノート」
以前、お仕事で記事を書かせていただいた「津軽びいどろ」。四季の移ろいを色で表現されています。世界中で「津軽びいどろ」にしか出せない色があると知り、匠の職人魂は「日本酒の世界と通じるところがあるな」と感動しました。
ノートには取材データ以外にも、オンライン飲み会の参加者情報や、YouTubeを観て気になった言葉などなんでも書き留めてあります。昔からメモ魔。
これから欲しいもの・やりたいこと
引きつづき、日本酒の側にいたいです。
「日本酒は楽しい」をたくさんの人に伝えて、年齢、国籍、職業などを超えておいしさを共感し合い、コミュニティを生み、「日本酒」にまつわる文化を(形を変えながらも)大切に遺していきたい、と本気で考えています。
小学校時代の夢は「何者にもなること」でした。「それは無理だ」「向いていない」「そんなものは存在しない」と経験していないのに否定する大人が大嫌いで、自分はへたくそでもいいからせめて経験をして物を言う人になりたいという想いがありました。あの頃の、幼い自分に恥じない人間でありたいと思っています。(END)
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