蛇足について10『時間の蛇足』
メロスはいつ激怒したのか?
蛇足がその時間を特定、あるいは変えることが可能である。
蛇足によってタイムトラベルできるというわけだ。
今日メロスは激怒した
昨日メロスは激怒した
「今日」を蛇足すれば文字通り今日激怒したことになる。また「昨日」と蛇足すれば昨日激怒したことになり、過去の出来事となる。
このように現在と過去はすぐに時間をずらすことができるのだが、未来となると少々難しい。
明日メロスは激怒した
これだと文章的におかしくなってしまう。そこで少々間接的な表現の蛇足を使うことで未来にすることができる。
メロスの子孫は激怒した
これはかなり未来の話である。何代後なのか、何百年後の子孫なのかはわからないが一気に時が進んだことが理解できる。
メロスの血を引く者は激怒した
こちらは先ほどの蛇足とほぼ変わらないものの、よりファンタジー色が強めになっている。
もちろんこれらは物語中のメロスを現在としての未来である。ただしこれらの蛇足によるメロスは現在のメロス自身ではない。別の人間なのである。
平成のメロスは激怒した
令和のメロスは激怒した
ゆとり世代のメロスは激怒した
Z世代のメロスは激怒した
ロボメロスは激怒した
これらも未来のメロスと考えられるが、同じく現在のメロスとは別人である。さらにこれらは異名の可能性もある。
読み手である私たちをタイムトラベルさせてくれていると考えても良い。
ではメロス自身を未来にする蛇足を考えてみよう。
ミョウガが好きになったメロスは激怒した
先生が昔言っていたことが今になってわかるようになったメロスは激怒した
基礎代謝の低下してきたメロスは激怒した
集中してゲームできなくなったメロスは激怒した
これらはメロス自身である。どれも成長した(あるいは加齢した)メロスとも言えよう。つまりメロスをミョウガが好きになるくらい成長させることでメロスを未来にしているのである。
脳だけのメロスは激怒した
培養槽に浮かぶメロスの脳が激怒している。私たちの脳に直接怒りを伝えるタイプのメロスである。
これも(SF的な)未来であり、メロス本人であるのだ。
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