見出し画像

マイ・フェイバリット・ソングス 第23回~ORIGINAL LOVE

(2022年11月改訂版)

画像1

『LOVE! LOVE! & LOVE!』(1991年)

メジャー・デビューアルバム(2枚組)。デビュー前からメンバーは様々な入れ替わりを経ていたようで、このアルバムも多くのサポートメンバーが存在していますが、クレジット上正式メンバーは田島貴男・村山孝志・木原龍太郎・森宣之・宮田繁男の5人になっています。ロック・ジャズ・ソウル・レゲエなど様々な要素が盛り込まれていて、ファーストから音楽性の幅広さが炸裂してますね。僕は昔から「夜をぶっとばせ」「I WANT YOU」「DARLIN’」「JUMPIN’ JACK JIVE」「LOVE SONG」が好きです。「JUMPIN’ JACK JIVE」の詞はつくづく面白いですよね。ずっと何やってんの? タイマンジャンプ対決? みたいな。デビュー作で2枚組ってすごいですよね。僕がよく聴いているアーティストでは他に例がありません。


画像2

『結晶-SOUL LIBERATION-』(1992年)

2nd. 比較的シンプルなアレンジで、ベースとドラムが目立つ曲が多いですね。ジャズやボサノヴァの色が濃いですが、ファーストよりも一層日本人の耳に馴染みやすい曲が多くなっている気がします。多ジャンルにわたる音楽的教養を持った田島貴男さんの作る楽曲を絶妙なニュアンスでJ-POPに仕上げている。このアルバムでは僕はなんといっても「スキャンダル」が大好きですね。「月の裏で会いましょう」と「スクランブル」も好き。(「スクランブル」のキーボードとドラム、カッコいいですよね。)シングルとなった人気曲「ヴィーナス」も収録。正式メンバーはファーストと同じ。作曲は全曲田島貴男さんで、作詞は田島さんと木原さんが半分ずつ手掛けています。


画像3

『EYES』(1993年)

3rd. デビューメンバー5人のアルバムはここまでで、5人全員が曲作りに参加しています。これまで作曲はすべて田島さん(かオリジナル・ラブ名義)でしたが、ここでは「DEEPER」が宮田さん、「妖精愛」が村山さん、「砂の花」が木原さんの単独作曲で、「I WISH」が森さん・宮田さん・田島さんの共作。全体的にラテンっぽい要素が加わってきていますね。僕は「LET’S GO!」と「サンシャイン ロマンス」が特に好き。「Wall Flower」と「いつか見上げた空に」もいいですね。このアルバムは夏にドライブしながら聴きたくなります。


画像4

『風の歌を聴け』(1994年)

4th.  ここから正式メンバーは田島貴男さん・木原龍太郎さん・小松秀行さんの3人に。このアルバムには収録されていませんが、少し前にシングル「接吻 kiss」がヒットしているので、より注目の高まっていた時期ですね。前作以上に南米の要素がけっこう入ってますよね。ラテンとかブラジリアンな雰囲気。充実した楽曲群で、複数メンバー時代では最高傑作と呼べるかもしれません。これは全体を通じて好きだけど、「The Rover」「The Best Day of My Life」「二つの手のように」「フィエスタ」「時差を駆ける想い」が特にお気に入り。シングルリリースされた人気曲「朝日のあたる道 AS TIME GOES BY」も収録。最近は「Two Vibrations」のカッコ良さにもシビレています。アルバムタイトルは1979年発表の村上春樹さんのデビュー小説と同じですね。


画像5

『RAINBOW RACE』(1995年)

バンドとしては最後の作品となる5th.  田島貴男さんは前作で完全燃焼した感じがあったそうで、このアルバムの方向性にはかなり悩まれていたそうでですが、シンプルに自分の好きな音楽を追及すべく臨んだようです。結果としてソウル・サンバ・レゲエなどの要素を含む充実した作品となっています。アコースティックギターやストリングスが印象的で、全体的にシンセを使わず生音を重視したサウンドになっています。このアルバムだと僕は「ブロンコ」「Your Song」「流星都市」が特に好きですね。シングル曲「夢を見る人」も収録。これのジャケ写カッコイイですよねえ。ノーマン・パーキンソンの「Bird Island」という写真を使っているようですが、アルバムの雰囲気にピッタリですね。


画像6

『Desire』(1996年)

ここから田島貴男さんのソロユニット。これはリリース当時かなりヘビロテしていて、今でもよく聴き返します。オリジナル・ラブの最高傑作と言ってもいいかもしれないですね。世界の民族音楽や沖縄音楽などを取り入れた革新的なアルバムで、名曲揃いです。ソウルとかファンクとかラテンとか民族音楽とかってどうしてもマニアックになりがちだと思うんだけど、それをポピュラー・ミュージックに仕立て上げるところが田島さんの凄いところだと思うんですよね。ちゃんと日本人の心にも届きやすい音楽になっているというか。全曲いいけど、やはり究極のラブソングとも言うべき「プライマル」は何度聴いても素晴らしいですね。「Hum a Tune」「Words of Love」「黒猫」も好き。そしてラストに「少年とスプーン」という凄い曲があるんですよ。こんな旋律を紡ぎ出し歌いこなすって尋常じゃない才能ですよね。


画像7

『ELEVEN GRAFFITI』(1997年)

初めて打ち込みを取り入れたアルバム。僕はこれが一番好きです。前作までは「〇〇音楽との融合」って感じがあって、そのミクスチャーな感じがオリジナルラブの魅力なんだけど、このアルバムにはあまりそれを感じないんですよね。もうミクスチャーではなく、様々なジャンルを丸ごと飲みこんだ田島貴男が「ORIGINAL LOVE」としか言いようのない新たなジャンルを確立してるような感じがあって。そういう意味でのひとつの到達点がこのアルバムにはある気がするんです。まず一曲目の「ティラノサウルス」から打ちのめされます。これ何度聴いてもカッコイイんですよねえ。一番と二番の繋ぎ目が「ダッ ダッ」というたった二音なんだけど、この二音がめちゃくちゃカッコイイ。しかもこの一箇所にしか出て来ないんですよ。マニアックな感想ですが・・・。そして「アイリス」はオリジナル・ラブで僕がいちばん好きな曲です。メロディも美しいけど、特に歌詞が素晴らしい。J-POPの歌詞の中でも最高峰と呼べるのではないかと思うほど個人的には気に入ってます。聴くたびにこの詞の世界に引き込まれて、そのたび涙がこぼれてしまいます。他に「ビター・スウィート」「アンブレラズ」のメロディも非常に美しいですし、「ローラー・ブレイド・レース」もカッコいい。キャッチーなシングル「GOOD MORNING GOOD MORNING」も収録。全体を通じて聴いたときに流れも素晴らしいです。


画像8

『L』(1998年)

打ち込み全開でこれまで以上に実験色の強いアルバムですね。ほとんどの音を田島さんが一人で手掛けています。この後にもこういう作り方をしているアルバムがいくつかありますが、それはここで試みたことがきっかけとなっていると思われます。初期の頃とはまるで異なったサウンドなので、従来のファンは戸惑った人もいると思いますが、常に過去の殻を脱いでいくのが田島さんの素晴らしいところではないでしょうか。斬新な音を取り込んでいるのでとっつきにくさもあるけど、一旦ハマると中毒になるというか。僕は「羽毛とピストル」中毒ですね。なんでしょうかつて経験したことのないようなこの気持ちいい音は。「大車輪」でイグニッションキーを回す音を取りこんだのも面白いですよね。隅々まで音の楽しさを味わえるアルバムです。


画像9

『ビッグクランチ』(2000年)

サウンド的には前作の延長線上にあるけど、こっちの方がより音に厚みがあってより尖がってますね。すごくカッコイイけどややハードルが高めなところもあります。これはCDでも一応A面、B面という構成になっているんですよね。「地球独楽」「地球独楽リプライズ」でサンドイッチにしているのはビートルズのコンセプトアルバム『Sgt. Pepper's Lonely  Hearts Club Band』を意識しているのかもしれません。楽曲では「愛の薬」と「液状チョコレート」が特に好き。やはり中毒性が高いです。(そういえば薬もチョコレートも中毒性があるよな・・・)冒頭の「女を捜せ」はホラー映画のBGMっぽいストリングスが使われている斬新な一曲。


画像10

『ムーンストーン』(2002年)

オリジナル・ラブの歴史の中では比較的地味な印象ですが、僕はこのアルバム大好きです。『L』『ビッグクランチ』の路線からは大きく変わってジャズ・バンド風のサウンドになっています。ウッド・ベースやクラシック・ギターなども多用され、あたたかみのある音。個人的には生楽器の音が好きなので、このアルバムを聴いたときは少しほっとしました。楽曲は全編通して好きですが、特にお気に入りは「アダルト・オンリー」と「月に静かの海」。全編ファルセットで歌う「GLASS」もカッコイイし、アコースティックな「ムーンストーン」もこの大人アルバムの最高の締めになっています。「夜行性」と「守護天使」の歌詞は松本隆さんですね。


画像11

『踊る太陽』(2003年)

これまでのオシャレな音楽性から大胆に舵を切ってますね。よりロックだし、ブギー・スカ・昭和歌謡などの要素も入って詞もすごくシンプルに。和の要素が強めなのもこのアルバムの特徴です。ゲストとして松本隆さん・矢野顕子さん・町田康さん・松井五郎さん・東京スカパラダイスオーケストラなども参加されていてカラフルな楽曲群。僕はこのアルバムだとなんといっても「ふられた気持ち」が大好きです。曲調は力強いのに詞に男の情けなさが滲んでいて、その融合がなんとも切ないんですよね。町田康さん作詞のロックンロールナンバー「こいよ」もいいですね。キャッチーなシングル曲「恋の彗星」「美貌の罠」「Tender Love」も収録。マーヴィン・ゲイの「I Want You」に友部正人さんが日本語詞をつけた「欲しいのは君」は初のカバー曲です。


画像12

『街男 街女』(2004年)

これも前作に近い雰囲気のアルバムですね。ブギウギや昭和歌謡などを取り入れ、和のムードが漂っています。冒頭の強烈な「築地オーライ」が象徴していますね。デビュー当時のオシャレな感じとはまるで異なる「ダサカッコイイ」と呼びたくなるような曲もちらほら。でも僕は初期を匂わせる「沈黙の薔薇」が一番好きですね。ラストで急にワルツになる展開もシビレます。ジャジーな「或る逃避行」もカッコいい。僕はこのアルバムの頃に一度ライブに行ったことがあるんですが、田島さんすごくカッコよかったですね。


画像13

『キングスロード』(2006年)

60年代洋楽中心のカバーアルバム。ニール・セダカ、ドアーズ、ローリング・ストーンズ、ザ・ロネッツ、ピンクフロイドetc. 特徴的なのは田島さん自身が訳した日本語詞で歌われている点ですね。珍しい試みだと思います。邦楽からも一曲フォーク・クルセダーズ「青年は荒野をめざす」がチョイスされています。


画像14


『東京 飛行』(2006年)

「骸骨」「夜とアドリブ」といったジャズ風の作品もあるけど、全体的にはロック色が強めで、力強いバンドサウンドが特徴的なアルバムですね。海外文学からとった「カフカの城」という曲や、岡本太郎と敏子をモチーフとした「明日の神話」という曲も収録されています。渋さ全開のオヤジロックといった趣の楽曲群。


画像15


『白熱』(2011年)

田島さんがコンピューターと全楽器を駆使し、ミックスからマスタリングまで一人で手掛けたアルバム。(「カミングスーン」のみスチャダラパーが参加) 前作に比べるとかなり明るくポップで、ダンサブルな曲まであります。僕は「春のラブバラッド」「ふたりのギター」「海が見える丘」「好運なツアー」が特に好きですね。ボーナストラックに「なごり雪」のカバーも収録されています。意外な選曲。


画像16

『エレクトリックセクシー』(2013年)

シンセサイザーを多用したエレポップ全開のアルバムですね。かなり癖のあるアレンジが施されているのに、決してマニアックにならずキャッチ―に仕上げるところが田島さんのすごいところ。ノリノリの曲を聴きたいときはこの一枚です。僕は「スーパースター」「線と線」「一撃アタック」「帰りのバス」が好きです。


画像17

『ラヴァーマン』(2015年)

『風の歌を聴け』のリズム隊だった佐野康夫さん(ドラム)と小松秀行さん(ベース)が参加しています。そのためか特に表題曲の「ラヴァーマン」は初期の雰囲気を感じさせますね。僕はこの曲大好きです。Negiccoというアイドルに提供した「サンシャイン日本海」もキャッチーで楽しいですね。ボーナストラックとしてCM曲「ウィスキーが、お好きでしょ」も収録されています。


画像18

『bless You!』(2019年)

一発録りなどライブ感を重視してレコーディングされたのが特徴的なアルバム。長岡亮介(浮雲)・渡辺香津美・PUNPEEなど多数の豪華ミュージシャンが参加しています。これまでのロック・ジャズ・ソウルなどの要素に加え、ヒップホップやゴスペルまで取り入れた幅広い楽曲群。僕は「ゼロセット」と「ハッピーバースデーソング」が好きですね。「空気―抵抗」の渡辺香津美さんのギターも凄くカッコイイです。母親に捧げた「いつも手をふり」は涙なしには聴けません。


『MUSIC,DANCE & LOVE』(2022年)

20枚目となる最新作。冒頭を飾る「侵略」とラストの「ソウルがある」の歌詞はウクライナ侵攻に対する批判がストレートに表れているように感じます。表題曲の<音楽を止めることはできない どんな圧力がかかっても>という歌詞も含め、メッセージ色が強く出ていますね。6曲目は名曲「接吻」のM.D.L Version。オリジナル・アルバムに「接吻」が収録されるのは実はこれが初めてなんですよね。「月と太陽」はBREIMENの高木祥太さんが韻を意識した歌詞をつけています。先行シングル「優しい手~Gentle Hands」「Dreams」を含む充実した楽曲群。


マイ・フェイバリット・ソングス一覧へ